初夏の軽井沢の風物詩ともいえる「軽井沢ミーティング」が、例年同様に軽井沢プリンスホテルおよび同スキー場の駐車場を舞台に開催された。
このイベントは、25回目を迎えた世界最大規模のロードスター・ファンミーティングだが、年々参加台数が増加。嬉しい悲鳴ではあるが、キャパシティの関係から同会場での開催を続けるために、昨年より愛車での参加を事前抽選式とし駐車台数が限定された。それでも1062台のロードスターが全国より集結。色とりどりのロードスターに埋め尽くされた会場の光景は、例年通り実に華やかであった。
今年の参加台数の内訳をみると、
NA型:387台
NB型:242台
NC型:176台
最新のND型:259台
となっており、初代NA型が最も多いのはこれまで同様だが、新型のNDユーザーも増えて初代に次ぐ参加台数となり、人気ぶりを伺わせた。
今年も広島本社から、ロードスター開発部隊を始めとした多くのマツダ関係者が会場に駆け付け、ファンとの交流を楽しんだ。このうちND開発主査を務めた山本修弘さんを始めとする4名は、なんと愛車のロードスターで広島より来場。ファン同様にイベント参加を満喫していた。またND型のチーフデザイナー兼ロードスター主査である中山雅さんや山口宗則さんは、トークショーを行うだけでなく、会場スタッフとして来場車両の誘導も手伝い、ファンを驚かせた。トークショーで中山主査は、「念願の駐車場誘導係ができた」と嬉しそうに語り、会場の笑いを誘った。
「ユーノス・ロードスター」レストアプログラム 2パーツを初披露
毎年、ロードスターファンへの感謝の気持ちを込めて発表されるロードスターにまつわるトピックだが、昨年8月のオートモビル・カウンシルの会場で明らかにされた初代ユーノス・ロードスター(NA型)のレストアプロジェクトと、安定した部品供給体制の構築についての続報が報告された。NA型ロードスターのレストア事業開発チームの調査によると、現在でも54%のパーツが供給可能であるとか。これは同年式のマツダ車と比較すると、圧倒的に高い数字であるという。やはり、長年愛用しているユーザーにより一定のニーズが確保されていることが理由だ。しかしながら、内装パーツなど、クルマのライフサイクルで交換する必要が少ないものについては、欠品しているものが多いという。それらの部品も現在、復刻が可能か、サプライヤーとの交渉を続けているそうだ。
その取り組みの成果として、当日、復刻が決定した2つのパーツを初披露。ひとつは、ファンから「NA開け」と呼ばれるビニール・スクリーンのみを開けることができるNA型用のソフトトップ。オープンカーにとって交換が必要となる重要備品であるが、使われているドイツのメーカーが、環境問題から素材の製造を中止したため欠品となっていた。これを世界各地のメーカーから素材を集めて検討した結果、アメリカのメーカーから新素材の入手をすることになったという。既に耐久テストや実車装着による走行確認なども終えており、信頼性の高いものに仕上がっているそうだ。
ブリヂストンSF32 当時のタイヤを復刻!?
もうひとつは、なんとタイヤ。当時純正装着されていたタイヤのひとつ、ブリヂストン製「SF32」だ。これはレストア事業の立ち上げを決めた際、サプライヤーに声をかけたところ、ブリヂストンが真っ先に手を上げてくれたことで実現したという。ただ当時の金型もなく、タイヤのコンパウドも今のものとは異なるため、初代ロードスターの操縦安定性を担当していた技術者とブリヂストンの当時の開発担当エンジニアが協力し、見た目だけでなく、乗り味まで再現した拘りの逸品。現在、ロードスターアンバサダーとして活動する山本修弘さんも「このタイヤを付ければ、NA新車当時の走りの感触が味わえるので、おススメ」と太鼓判を押す。これらのパーツの価格や発売時期は未定だそうだが、年内には続報があるとのこと。
また、新車同様に仕上げられたレストア事業の開発車両を展示。ごく初期型といえる1990年式のスペシャル・パッケージがベースで、18.6万kmを走破したどこにでもある中古車を手に入れ、組み上げている。まだ完成形ではないそうだが、その見た目の美しさは、多くのファンがレストア事業へ期待を膨らませる仕上がりであった。現在、様々なレストアメニューを検討しており、大掛かりなものだけでなく、より多くの人が活用できるようなものも用意したいという。会場内でも、オーナーが必要としている欠品部品や今後の要望などへのアンケートが行われた。
会場全体を見回すと、NDの参加台数増加と共に、男女共に若いユーザーが増えてきていることに気付いた。その多くは、まだ20代前半のように見受けられる。今年は、2000年に行われた同イベントの「ペダルカーレース」で優勝した男の子が、ついに愛車のNA型と共に参加した。このエピソードが物語るように、理由は人それぞれだが、若い世代のロードスターファンも着実に増えてきている。ロードスターを愛する気持ちに世代差などはなく、楽しそうに人生の先輩たちと談笑する光景に、このクルマを愛する心が次の世代にも受け継がれていると実感した。マツダがレストアの事業化を実現させ、いつまでも歴代モデルを楽しめる環境が整うことに期待したい。
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