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スカイライン「R33 GT−R」で筑波1分切り! 二度手間のないユーザーフレンドリーなチューニングが「スリーエイチ」のモットーです

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スカイライン「R33 GT−R」で筑波1分切り! 二度手間のないユーザーフレンドリーなチューニングが「スリーエイチ」のモットーです

チューナーの心に残る厳選の1台を語る【スリーエイチ 廣瀬育弘代表】

さまざまなユーザーの要望を少しでも多く実現させるため、どのようなパーツなのか情報は重要だ。基本的な特性を把握した上でメリット、デメリットを徹底的に追求する。こうしたノウハウを余すことなく活用することで、メンテナンスの延長のチューニングが俄然威力を増していくのだ。こだわりのチューニングを展開する、スリーエイチ廣瀬代表のインタビューをお届けしよう。

17歳で日産「R33GT-R」オーナーになった女子高生の「いま」とは? D1ドライバーを目指してただいま修行中!

(初出:GT-R Magazine164号)

ボーナス代わりに譲られたR32でサーキットの虜に!

クルマに憧れを抱いていた少年時代。本物のクルマを運転することを夢見てプラモデルを作ったり、電動ラジコンカーを走らせたりしていた。多くのクルマ好きと同じようにBNR32の鮮烈なデビューに衝撃を受けて熱烈なファンとなり、グループAに夢中になる。それが『スリーエイチ』の廣瀬育弘代表が高校生だったころの出来事だ。

高校卒業後は少しでも早くR32に触れたくて日産ディーラーのメカニック採用試験を受ける。しかしあっけなく落ちてしまった。それで仕方なく第2志望だったトヨタのメカニックになった。もちろんGT-R以外のクルマも好きなのでやり甲斐はあるが、それでもやはりGT-Rに携わりたい。その思いが日を追うごとに強まり、5年半でトヨタを退社した。

今度は確実にGT-Rと接するために、Rが得意なチューニングショップに在籍する。しかしそこでも希望は叶わない。すでにメカニックが5名もいて作業が効率よくこなされていた。廣瀬代表にあてがわれた仕事は通信販売の対応や商品の発送準備といったもの。それはディーラー時代の仕事よりも希望とかけ離れてしまい、半年で見切りをつけた。

その後に転職したチューニングショップでやっと念願のGT-Rと共に仕事ができるようになる。見た目は純正然としていながらハードな仕様が多い店だった。Z32用のエアフロや、N1用のピストンにエンジンブロック、それにオイルポンプなどを流用する手法が目立っていた。

そのショップの看板チューナーを慕うようになった廣瀬代表は実走セッティングにも同行。助手席で瞬時に変化する空燃比計の数値を大声で伝えるのが役割だった。目まぐるしく条件が変わるストリートで真価を発揮する底力のあるGT-Rの製作に数多く携わった。

師匠言葉でR32を手直しして走り始める

独立する看板チューナーを追って、入店3年目にショップを辞職。師匠と仰ぐそのチューナーのお店に転職したが、そこではサーキット仕様を中心に手がけていた。そこで廣瀬代表は初めてのボーナスの代わりにボロボロのR32を与えられた。

「これが自分のものになった初めてのGT-Rです。それまではAE86やA31セフィーロでドリフトを楽しんでいました。師匠に『R32を直してお前もサーキットを走れ』と言われたんです。自分で走ることでクルマ作りにプラスになることを察しろということです。たしか28歳ぐらいのときでした」

師匠のアドバイスは的確だった。サーキットの楽しさを実感したばかりでなく、速く走るための奥深さも理解できるようになった。答えはまだわからないことが多いが、パワーだけではどうにもならないということは学んだ。速さに結びつくパワーやトルクの特性、そしてサスペンション、最終的にはドラテクとトータルでバランスさせないと結果にはつながらないことを思い知らされる。

師匠の店には約3年在籍し、そろそろ自分の力を試したくなり独立を決断。2年間はメーカー系の仕事に携わり準備をしつつ、34歳のときに中古車ショップの店舗を間借りしてスリーエイチを立ち上げた。その2年後に現在の店舗にやってきた。

「ハードなチューニングが減ってきた時代だったので、GT-Rの専門店ではありますがチューニングだけに特化することなくメンテナンスや車検などにも力を入れたオールマイティなプロショップを目指しました」

チューニングはメンテナンスの延長という感覚で取り入れる。R32の登場から30年以上。R34が生産終了してからも20年近くが経っている。機能部品の劣化は当然で交換は必然だ。そんなときに必要以上に純正に拘ることなく、チューニングパーツをうまく活用する。こうすればパワーやフィーリングばかりでなく強度が上がって耐久性の向上だって期待できる。高騰化が進む純正品に比べれば、費用対効果が高いケースは少なくない。

チューニングのカテゴリーは普段使いでの扱いやすさを重視した500psから600ps仕様。それにサーキットのタイムアップを楽しむユーザーに向けたパターンが多い。ユーザーのオーダーを受け止めて、タイムアップのために共に戦う。こういったケースは廣瀬代表にとってはチューナー冥利に尽きるのだ。

「オーナーがドライブして初めて筑波で1分を切ったR33には感慨深いものがあります。試行錯誤を繰り返し、諦めずに粘り強く取り組むことの大切さ。想像以上に多くのことを学ばさせてもらいました」

先まわりしたモディファイで効率よく高い効果を発揮

主な仕様はN1ブロックにHKSの2.8Lキットを組み込む。カムシャフトはIN/EX共にHKSの264度。ターボはGT2530の2機掛けでマフラーはオリジナルだ。制御はZ32エアフロを使ったコンピュータの書き換えである。インジェクターはサードの700ccでフューエルポンプはHKS製。冷却系はトラストのインタークーラーとHKSのオイルクーラーを活用していた。

サスペンションはオーリンズでブレーキはフロントがブレンボF50に350φローター。リアは純正キャリパーにV36スカイライン純正の350φローターを組み合わせていた。エアロはオートセレクトのフロントカナードとボルテックスのGTウイング。ホイールはTE37の10.5J×18でタイヤはヨコハマ アドバンA050の265/35R18だ。これで59秒3を叩き出した。パワーはブースト1.5kg/cm2で約600psとそれほど大きくはない。

このR33挑戦は苦労の連続だった。お店のオープン当初から挑戦を始め、1分3秒までは1年ほどで短縮していった。オーナーはごく普通のサラリーマンなのでお金も時間もそれほど掛けられない。そんな条件の中、小さなことも見逃さずに対処していった。

しかし、その先に進めない。それまで2.6Lだったエンジンを2.8Lにしてもタイムはいまひとつ。1分1秒ぐらいまでには詰め寄ったが、そこからは一向に縮まらない。

藁にもすがる気持ちでOS技研の3速クロスミッションを導入。わずかながらタイムの変化を確認した。確かにそれまでギア比はノーマークだった。さらにファイナルを4.1から、よりローギアードの4.3に変えてみる。するとさらに手応えを実感。その勢いを萎えさせないように今度はアライメントを煮詰める。最終的にはフロントキャンバーを4度ぐらい寝かせた状態で、念願の1分切りが達成できたのだ。

振り返れば1分1秒から59秒3をマークするまでに5年近くも費やしていた。考える時間をたっぷりと与えてくれたと同時に、ずっと信頼して任せてくれたオーナーには感謝しきれないと廣瀬代表。

この体験からトータルバランスの重要性を再認識。メンテナンスの延長のチューニングに、より積極的となったのもこのクルマを経験してからだ。

長く乗れることを意識したメニューを提案

チューニングに興味のあるユーザーにはエンジンオーバーホール時にはブロックの交換を推奨している。この先リフレッシュして楽しもうというときにせっかく組んだエンジンのブロック内部にクラックが入って水とオイルが混ざってしまったら、再度オーバーホールをしなければならない。クラック発生の予測は不可能なので、最初からニスモのヘリテージパーツである標準ブロックを使うべきだ。それで800psくらいまでなら対応可能。1000psオーバーにも耐えるN1用もあるが値段が倍以上するので標準で十分だ。

ピストンは1mmオーバーサイズの鍛造品がいい。これで排気量は2.7Lになる。それにH断面コンロッドを組み合わせる。ターボは500psまでならニスモR3が最強だ。以前のR1ターボから進化してピークパワーは変わらないものの、ブーストの立ち上がりがよくなって低速域から威力を発揮する。

600psまで欲しいユーザーにはやや下がないが、パンチがあるトラストのT517Zを推奨。ブーストが掛かった時の暴力的な加速力は圧巻だ。バランス重視のユーザーには、パンチはT517Zに劣るものの下があって上質に高回転までパワーを絞り出すGCGのGT2860Rを勧めている。

大前提としてユーザーが主役であり、その主役の希望に寄り添うことに注力する。ネックとなるのは費用だ。ユーザーには予算があり、その条件下で対応しなければならない。そこが廣瀬代表の腕の見せどころだ。

極力無駄をなくすこと。その要が二度手間にならないように先まわりしたモディファイだ。エンジンブロックの交換しかり、廣瀬代表が積極的に使う鍛造ピストンも、その時には必要なくてもリセス入りにこだわる。今後、激しいハイリフトのカムを使いたくなった場合にヘッドを開ける必要がないからだ。

1歩先を見据えた対応こそがスリーエイチの人気の秘密である。ユーザーのあらゆる負担を軽減させる気配りはR33が教えてくれた。

(この記事は2022年4月1日発売のGT-R Magazine 164号に掲載した記事を元に再編集しています)

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