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濃密なる3日間。富田竜一郎とAudi Team Hitotsuyamaが世界と戦ったWTCR鈴鹿ラウンド

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濃密なる3日間。富田竜一郎とAudi Team Hitotsuyamaが世界と戦ったWTCR鈴鹿ラウンド

 WTCR世界ツーリングカーカップ第8ラウンド『JVCケンウッド・レース・オブ・ジャパン』は10月26日に決勝レース1が、10月27日にレース2が行われた。今回ワイルドカード枠で参戦し、初めてとなるWTCR参戦を果たしたAudi Team Hitotsuyamaの富田竜一郎は、レース2で17位、レース3ではリタイヤという結果となったが、それ以上に参戦を通じて、非常に多くのものを得たようだ。

 今季、スーパーGT GT300クラスを主戦場とする富田は、近年の多くのレーシングドライバーが歩むレーシングカート~ジュニアフォーミュラというステップアップのルートをたどらず、GT-Rプレステージカップを経てGT300までたどり着いた異色の経歴の持ち主。ハコだけで四輪のキャリアを歩んでいるのだ。

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 そんな富田は、2018年に鈴鹿10時間を体験し、“世界”との戦いを意識する。その年のWTCRを見て、Audi Team Hitotsuyamaの一ツ山亮次代表に「これに出たいです」と直訴した。チームにはアウディRS3 LMS TCRがあり、富田の希望に応えるべく、今季のシーズン前から準備を練ってきた。多くのスポンサーの支援を得て、WTCR参戦が実現した。

 ウエットの金曜、そして土曜のレース1での戦いを経て、セットアップを変更した富田は、10月27日にレース2/3を迎えた。レース2は17位でフィニッシュすると、短いリペアタイムを経てレース3に挑む。しかしその週末の最終レースとなるレース3では「ここからがいよいよ『WTCRだな』という感じのレースでした」とスタートした瞬間から激しい戦いを実感したという。

 チームメイトの宮田莉朋がS字でクラッシュするなど荒れた展開のなか、1コーナーではやや位置取りが良くなく接触。ただここはこらえ、中団グループでの激しいバトルをくぐり抜けた。あと少しでフィニッシュ……かと思われたものの、29周目にタイヤが厳しくなっていたゴードン・シェドンのアウディにヒットされ、逆バンクでコースオフ。グラベルに埋まってしまった。これまでのレースキャリアで「コースアウトしてリタイアした経験はないと思う」という富田だが、グラベルでマシンを下りる悔しい経験とともに、WTCR初挑戦の週末を終えることになった。

■接触は当たり前。でも終われば“ノーサイド”
「スタートがやはり厳しかったのですが、他の部分では周囲に引けを取らないレースができていたと思います」と週末を振り返り富田は語った。

「最後のクラッシュについてはゴードン(シェドン)もリヤがスライドしていましたし、途中でラインがキープできなくなって僕のリヤにヒットしたんです。ただある意味、世界が“敵”だと認めてくれたからこその接触の数々だと思っていますし、日本人だからとか、ナメた走り方もされませんでした」

「ひとりのドライバーとして『絶対に負けられない』という意志を感じることができたので、その意味ではめちゃくちゃ楽しかったですし、良い経験になりました。とはいえ、やっぱりもっといい順位が欲しかったのは正直なところ。可能性が見えただけに、短すぎるレースウイークでしたね」

 富田、そしてともに参戦した宮田とも、強力なツーリングカー遣いたちのなかで一歩も引かず、世界に「あいつらは何者だ?」と言わせるほどのインパクトを残したと言える。レースウイーク中、多くのWTCRのレギュラーたちがふたりに声をかけ、2日間とも記者会見に出席し、英語でしっかりと受け答えをした富田には、同席した上位入賞ドライバーたちが笑顔で声をかけていたのが印象的だった。

「最近の日本のレースでは、接触するとすぐペナルティになったりしますが、今回のWTCRだったら全員ペナルティになってしまうと思います(笑)。ある意味で戦争のようでもありながら、レースが終わればノーサイド……という雰囲気があります」と富田。

 記者会見では、レース2ウイナーのノルベルト・ミケリスが富田と握手を交わした。「レース1でぶつかっているんですが、笑顔で声をかけてくれました。こんな雰囲気をもっと日本でも味わえればいいな、と感じました」

■「戦えないカテゴリーじゃない」ぜひ日本の若手は挑戦を
 そして、富田は今回の自らの挑戦を経て、他のドライバーたちにもぜひWTCRに挑戦してほしいと語った。

「僕のようにフォーミュラを経験していない、20歳過ぎからレースを始めたドライバーが、こうしてWTCRに出るチャンスを掴むことができたということを、他の若いドライバーたちにも知ってもらいたいですし、そういう足がかりになればと思っています」と富田は言う。

「いい体制があれば戦えるのは分かってもらえたと思いますしね。僕ももっと海外に出て行けたらと思います。『日本代表として』というとちょっと大げさですが、戦ってみて、全然やれないカテゴリーじゃないと思いました。できればフル参戦してみたいし、レースの楽しさでいえばすごく楽しい」

「もちろん狭き門ですが、ぜひこうしてWTCRのワイルドカードを目指した意欲をもった人たちが出て欲しいと感じました。フォーミュラだけが“上を目指す”ではないと思います。ツーリングカーでも、やっぱりワールドクラスのドライバーたちはワールドクラスなんです」

 たった3日間の走行で、レギュラーたちにスタートで遅れることも多かったりと、経験不足から来るやや苦しい部分はあったが、あくまで慣れの範囲だ。そして、富田が言う挑戦はTCRというレーシングカーだからこそ実現できる。

 また、富田が感じたのは、ヨーロッパでは一般的とも言えるレースの“見せ方”だ。

「テレビ放送やレースフォーマット、メディア対応をはじめ、すべての環境がやはり進んでいる。日本にはすごく良い土壌があるので、それを活かして、いろんなカテゴリーをもっと良くしてくれると、さらに日本のモータースポーツが面白くなると思いますし、日本人ドライバーのレベルアップに繋がるのではないでしょうか」

 富田の次なる挑戦とともに、富田たちに続くドライバーたちが出てくれることも期待したい。そうなれば、WTCRの日本ラウンドはもっともっと盛り上がるはずだ。

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