転倒自体は褒められないけれど
連載:世界GP王者・原田哲也のバイクトーク【独占Webコラム】
1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第81回は、MotoGP第7戦フランスGP、そして日々楽しんでいるバイクライフについて。
TEXT:Go TAKAHASHI PHOTO:Red Bull, Tetsuya HARADA
「お前の走りはマシンの限界を超えている」
モトGP第7戦フランスGPは、ドゥカティ・サテライトチームのエネア・バスティアニーニが優勝しました。バスティアニーニと首位争いをしていたドゥカティ・ファクトリーチームのフランチェスコ・バニャイアは転倒してリタイヤ。同じくドゥカティ・ファクトリーのジャック・ミラーが2位となりました。
―― スタートではジャック・ミラーが飛び出し、すぐさまバニャイアがトップへ浮上して一人旅モードへ……と思われたが、バスティアニーニが追い上げて強いプレッシャーを与え、終盤にバニャイアを交わしたところで勝負あり。抜き返そうとしたバニャイアはミスを犯して転倒してしまった。
バスティアニーニは今シーズン最多の3勝目。しかも複数回優勝しているのは今のところ彼だけで、なかなかいい勢いです。ポイント争いではファビオ・クアルタラロ、アプリリアのアレイシ・エスパルガロに次ぐ3番手ですが、まだあと14戦も残っていますから、バスティアニーニにも十分チャンスあり。来シーズンはドゥカティ・ファクトリー入りも有力視されています。
岡田忠之、マッシミリアーノ・ビアッジというライバルがいたからこそ
全日本ロード時代、僕はホンダの岡田忠之さんになかなか勝てませんでした。でも岡田さんにどうにか勝つために自分にできることは何かを徹底的に考え、実践し、いろんな試行錯誤をした結果、ようやくチャンピオンを獲ることができたんです。
世界グランプリ時代のライバルは、何と言ってもマックス・ビアッジですね。なかなか勝てない手強い相手でした。’93年は僕がタイトルを獲りましたが、’94~’97年は彼が4年連続でチャンピオンになっています。僕がヤマハ時代にビアッジはアプリリアに乗っていましたが、とにかくストレートが速かった! ただ、コーナリングでは負けている気がしませんでした。ストレートで抜かれても、絶対にコーナーで抜き返そうと思っていたし、最終的には自分が前に出てチェッカーを受ける気でいました。
正直、心が折れるようなことなんかありませんでした。端から見ると不利だったかもしれませんが、僕自身は「絶対に勝ってやろう」という思いしかなかった。フロントタイヤが滑ってしまい、どうしても限界で徐々に離されてしまうレースはありましたが、気持ちで負けたことは1度もありません。
限界──と言えば、’95年第7戦オランダGPの予選開始前、ウェイン・レイニー監督に「おまえの走りはマシンの限界を超えている。これ以上無理はするな。予選は2番手で十分だから」と言われました。でも、自分としては「まだまだ足りていない」としか思っていない。「行くな」と言われても行ってしまうのがレーシングライダーという生き物(笑)。263km/hから転倒し、300mほど滑ってスポンジバリアにドーン! 背中を骨折してしまったことがあります。
外から冷静に見てくれていたレイニーさんの言う通りだった、というわけです。でも、自分ではまったく分かっていなかった。それぐらい気持ちは強かった。ただ、スポンジバリアから激突し、痛みで動けずにいる僕の映像をピットのモニターで見て、妻の美由希さんは気を失って膝から崩れ落ちたそうです(笑)。
限界を超えてでも、ビアッジの前に出たかった。強力なライバルが、自分を今までとは違う次元に高めてくれるんです。モータースポーツもれっきとしたスポーツですから、これは昔も今も変わりません。だから台頭してくるバスティアニーニの存在感に、バニャイアが焦ったのは、ある意味では正しい。転んでしまってはダメですが(笑)、これを期にバニャイアはさらに高い所に手を掛けていくはずです。
エンジニアが知りたい情報を提供できること
―― しぶとく食らいつき、バニャイアの転倒もあって3位表彰台をゲットしたアレイシ・エスパルガロ。
アプリリアの好調ぶりは、いよいよ本物になってきましたね。フランスGPでもアレイシ・エスパルガロが3位。ポイントランキングでもクアルタラロに次ぐ2番手につけています。ドゥカティの活躍もあり、「日本メーカーどうした」という意見も多々聞かれますが、そもそもイコールコンディションになるようにレギュレーションが定められていることは注意が必要でしょう。
多くのレーシングライダーは、自分に合うか合わないかでシンプルにマシンを評価します。「これはいい、これは悪い、以上!」という感じですね(笑)。でも僕は、いい時には何がどういいのか、悪い時には何がどう悪いのかを説明できた。例えば「エンジンがダメだ」と言うだけではなく、どの回転域でどんな問題が起きているからどうダメなのか、と説明する。エンジニアが知りたい情報を提供できたんです。
当時のアプリリアには、とても優秀な開発ライダー、マルセリーノ・ルッキがいました。彼がいいベースを作ってくれた上で、レースライダーである僕がさらにもう1歩高い速度域での課題を細かく指摘していく。こうしてマシンを仕上げていくわけです。今のアプリリアでも、きっとエスパルガロが開発に貢献しているんでしょうね。
ツーリング用タイヤでもサーキットを走れてしまう時代
―― 評価の高かったロード5の後継モデルとして誕生したロード6。確実に前作を超えてきた。
さて、プライベートでは相変わらず仲間たちとトライアルをしたり、ツーリングに出かけたりと、バイクを楽しんでいます。先日は、ちょっとした房総ツーリングに行ってきました。ミシュランの新しいタイヤ、ロード6の公道初乗りテストを兼ねての半日ツーリングです。
すでにサーキットでは何度か履いていますが、走行会ならグリップレベルも問題ありません。公道寄りのキャラクターで温まりも早く、非常にフレキシブルな特性なのに、サーキット走行にも応えるグリップ力を兼ね備えていることには驚かされます。
ストリートトリプルとのマッチングも良好で、房総ツーリング中、タイヤに関するストレスを感じることはありませんでした。これ、バイクを楽しむ上ではとても重要なことだと僕は思っています。心配なことや気がかりなことがなければ、それだけ気持ちよくバイクに乗れますからね。
―― 気の置けない仲間とのツーリングは本当に楽しい。 [写真タップで拡大]
別の日には、袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われたBMWのイベントに参加しました。僕はミシュランのスペシャルプログラムとして、サーキットでのタンデム走行をやらせてもらったんですが、僕の後ろに乗った皆さんは、「こんなに早いタイミングで、こんなにしっかりと減速しているんですね!」と驚かれていました。
別のバイクからコース上の走りを見ていた人からは、「タンデム走行なのに立ち上がりで後輪がブラックマークを付けてましたよ!」と(笑)。実はタンデム走行では、後輪にしっかりトラクションがかかるので、スロットルを開けやすいんです。ただ、ブレーキングでタンデマーの全体重がかかってくるのは大変ですが(笑)。
ツーリングでもイベントでも、バイク乗りの皆さんと触れ合えるのは、僕にとっての喜びです。いろいろな場面で皆さんとお会いできることを、いつも楽しみにしています!
―― BMWのイベント先導にあはそうそうたる顔ぶれのプロライターたちが。 [写真タップで拡大]
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