この記事をまとめると
■自販連、全軽自協、それぞれの新車販売ランキングを合算するとN-BOXがトップだった
ホンダN-BOXとは? 特徴・性能、新型での変化などを徹底解説!
■販売が伸び悩んでいるように見える一方でホンダの他車種の売り上げが伸びている
■各社も順次出荷が再開しているが2024年の後半はシエンタとフリードで激戦が繰り広げられそうだ
N-BOXは相変わらず不調気味……?
その昔、各家庭で必ずといっていいほど新聞を購読していたころは、週末土曜日になると新車ディーラーの折り込みチラシが多数入っていた。毎週末のように新車ディーラーでは「週末イベント」を全国規模で開催、夏商戦(ボーナス支給のタイミング)、事業年度(4月から翌年3月)締め上半期末(4~9月)、秋商戦(ボーナス支給のタイミング)、年末商戦、事業年度末決算セールといった「増販期」も、今より存在感を見せていた。
毎年6月は暦年締め(1~12月)上半期末であり、四半期決算月、そして夏商戦(6・7月)の前半月として新車販売が活発に行われるのだが、2024年6月単月となる登録車、軽自動車販売台数ともに前年同期マイナスという結果となっている。
自販連(日本自動車販売協会連合会)より登録車、全軽自協(全国軽自動車協会連合会)より軽自動車、それぞれ発表された車名(通称名)別新車販売ランキングを合算してみると、もっとも売れたクルマはホンダN-BOXとなった。新型コロナウイルス感染拡大、そしてその後の半導体不足などによる供給遅延などがあったので、2020年以降は全般的にも新車販売は伸び悩みを見せている。
そこで、コロナ禍前の2017年から2019年それぞれのN-BOXの販売台数を単純に販売台数だけで比較すると、2024年6月の販売台数は2017年6月比で約95%、2018年比で約81%、2019年比で約71%となっている。コロナ禍となった2021年6月比でも約96%だ。
N-BOXは2023年10月より現行モデルが正式発売となっているのだが、2024年に入ってからは販売苦戦傾向とも受け取れる販売台数推移を見せている。2023年10月の正式発売を控え、2023年6月は先代型がモデル末期となっており、先代型の在庫車を売りまくっていた。そのような2023年6月比では100%を超えているのでN-BOXが目立って販売不振になっているともいえない。
また、ホンダ全体の2023年6月単月の新車販売台数を見ても、前年同期比で約136%となっているので、N-BOXは数字上はかつての勢いを失っているようには見えるが、ホンダ全体の新車販売は統計上好調と捉えることができるので、以前よりは「N-BOX一本勝負」でもなくなってきているといったほうが適切ともいえる。つまり、ブランド全体ではバランスが取れてきているようにも見える。
2024年後半はフリードとシエンタの一騎打ちか
ただ、最近のN-BOXの「売れ方」はあまり好ましくない方向にいっているように見える。
なぜなら、中古車専業店における、届け出済み未使用中古車の展示が目立ってきているのである。しかも7月上旬ですでに2024年6月に新規届け出した未使用中古車が展示されている。届け出済み未使用中古車は、ディーラー名義などでナンバープレートだけ取得した(自社届け出)未使用の中古車であり、自社届け出はおもに販売台数の上積みのため月末に「ドーン」と行われているともいわれている。
他メーカー軽自動車でも自社届け出は頻繁に行われているのだが、多少寝かせて販売価格に割安感が出てから展示して販売するのが一般的なのだが、N-BOXは直近に新規届け出した車両が目立っている。
また、ヴェゼルは4月25日にマイナーチェンジを発表しているのだが、この直後に未使用中古車を専門に扱う業者の展示場に、改良前と思われるがヴェゼルの登録済み未使用中古車が多数展示されていた。ホンダ・フリードは6月28日に新型がデビューしている。そのフリードは2024年6月に7424台を販売し、軽自動車との合算統計でも10位に入っている。
もちろん先代型はすでに在庫車のみの販売となっている。新型もこの7424台に多少は含まれているとも考えられるが、新型登場月に7000台強も販売するというのはなかなか珍しい傾向である。「新型は価格アップも注目されましたから、“高いなぁ”と感じた購入検討客向けに『先代の在庫もありますよ』とアプローチできるようにしていたのではないでしょうか」とは事情通だ。
新型フリードの登場を見越してライバルのシエンタは改良を済ませ、テレビコマーシャルも積極的に放映している。本稿執筆時点では納期に関してもガソリン、ハイブリッドともに年内にはほぼ納車が間に合う状況となっているようだ。逆にフリードは発売直後から納期が少なくともシエンタ並にかかるとも報じられており、結果的に納期のハンデはないので、シエンタとの激しい販売競争が今後展開されていきそうである。
登録車トップはトヨタ・ヤリスシリーズ(ヤリスクロス含む)となっているが、ヤリスクロスは本稿執筆段階では7月末までは少なくとも出荷停止となっているとされている。ヤリスも納期が混乱傾向にあるようだ。
一方でカローラシリーズは、アクシオとフィールダーが出荷停止となっているものの、セダンやツーリングは年内納車も十分間に合い、スポーツは年明け早々、カローラクロスも2025年春までには納車になりそうなので、供給体制はそれなりに順調な様子。
ヤリスクロスの出荷再開時期もあるのだが、カローラシリーズもしくは、フリードとの販売競争を展開するシエンタが登録車のみではトップ争いを展開していくかもしれない。
ヤリスクロスは出荷再開後ディーラーからメーカーへの発注が殺到し、納期遅延が深刻になるのではないか(すでに発注はしているものの出荷停止で納車を待っている人もいるので)と販売現場では警戒を見せる声も聴かれている。
トヨタ・ルーミーは出荷再開を受け、出荷を停止していた2023年6月比300%超えと絶好調。2024年10月以降納車も可能なようなので、事業年度締め上半期末決算セールまではねらい目の1台ともいえよう。
今後の新車購入では、年内に納車が間に合うのかがひとつのポイントとなるだろう。売り込む側(セールスマン)も、「ウチなら年内納車に間に合いますよ」と勧めてくることが多くなるはず。
しかしそれでも、納車に時間がかかりがちなトヨタ車を選ぶ人が多い。再販価値が期待できるなど、それなりに「待ってでも欲しい」というメリットを感じる人が多いものと判断している。一方でトヨタより短納期を売りにもするトヨタ以外のメーカー系ディーラーの販売現場では、「うちのほうが納車早いのになぜ?」と不思議がる声も多い。
しかし、トヨタも深刻だったころに比べれば納期は一部の高額人気車を除けばかなり改善傾向にあるので、「この条件なら多少待ってもトヨタさんのクルマにしようかな」と、トヨタ以外のメーカー系ディーラーセールスマンへの揺さぶり効果が今後高まってくるともいえるだろう。
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