地図の端から端まで走りたくなるGT
「GT」とは、いったい何を意味する言葉なのだろうか。ある自動車メーカーのグレードまたは車名として聞き覚えがあるかもしれない。しかし、歴史的には「グランドツアラー(Grand Tourer)」、おしゃれに言えば「グランツーリスモ(Gran Turismo)」の略として使われてきた言葉である。
【画像】長距離が苦にならない最上のグランドツアラー【ポルシェ・パナメーラなど5車種を写真で見る】 全80枚
グランドツアラーとは、長距離ドライブを楽しむためのクルマだ。つまり、快適な乗り心地やサポート性のあるシートが求められる。ただ、現代では、それだけでは十分とは言えない。移動中も、目的地に停車しているときも、特別な気分でいられることが必要だ。
かつてグランドツアラーといえば、大きなエンジンを積んだボンネットの長いクーペが定番であった。しかし現在では、エレガントな4ドア車やEVなど、GTの枠は大きく広がっている。GTは、特に走行距離の多い欧米で歴史的に愛用され、また羨望の的となってきたクルマである。
そこで今回は、欧州で販売されている10万ポンド(約1700万円)以下の四輪車の中から、スタイリッシュに、マイペースに、ラグジュアリーに、そして満面の笑みを浮かべながら、何千マイルも走り続けることができる最高のGTを紹介したい。
1. ポルシェ・パナメーラ
2009年に初代パナメーラが発売された際には、4ドア・セダンのポルシェというコンセプトが物議を醸した。その見慣れないスタイリングは批判の的となったが、見事なまでによくできた真のドライバーズカーであり、楽々と大陸を横断できるクルーザーでもあった。
当時の論争から解放され、デザインも大きく改善された2代目パナメーラは、ポルシェのラインナップの中で良い居場所を見つけたように思える。AUTOCAR英国編集部が2017年に試乗した、最高出力422ps、最大トルク86.7kg-mを発生する驚異的なV8ディーゼルターボ搭載車は、多くの点でライバルより優れていた。
ポルシェは2018年にこのV8ディーゼルを廃止したが、依然としてパワートレインには多くの選択肢が残されている。そして2021年、パワートレインにまたもや手が加えられた。最高出力550psのターボモデルは、4.0L V8ツインターボで630psを発生するターボSに切り替えられた。480psのGTSも設定され、ターボSとのギャップを埋めている。
その他、最上位のターボS Eハイブリッドは、エンジンと電気モーターの合計出力が700psとなった。PHEVはこのモデルだけではなく、560psの4S Eハイブリッドに、462psの4 Eハイブリッドもラインナップされている。その他のモデルにはV6ツインターボエンジンが与えられている。
パナメーラは、素晴らしいドライビング・ダイナミクスと、他のどのクルマよりも優れたツーリング性能を見事に融合させている。安心感を与えてくれる重厚なステアリング、正確なハンドリング、確実なグリップ、そして加速力。PHEVのバッテリーの重さにもそれほど悩まされることはない。
4ドア4シーターの標準モデルは、495Lのトランクを備え、リアシートを倒せば1263Lに拡大できるし、車載システムも充実している。しかし、英国編集部がおすすめしたいのは5ドアのスポーツツーリスモだ。5人目の席と広いトランクルームが追加され、エクステリアデザインには、現行ポルシェ911に少し似た新鮮な風が取り込まれているように見える。
2. アルピナB3
アルピナB3を見ると、単なるBMW 3シリーズと見間違えるかもしれない。オーナーによっては、それこそがアルピナのポイントになるのだろう。B3は、ドライバーがパーソナルに楽しむ移動空間であり、BMW M3よりも派手さを抑えたパフォーマンスカーなのだ。
アルピナは、四輪駆動システムを搭載したBMW M340i(セダンまたはツーリング)をベースに、M3のS58型3.0L直6ターボエンジンと独自のサスペンションを搭載する、アルピナ専用仕様を開発した。ワイドトレッド、多数の専用コンポーネント、独自のジオメトリー設定、特注のアイバッハ製スプリングが与えられる。ダンパーとステアリングはM340iと同じものだが、アルピナ独自のセッティングが施されている。
その結果、M3よりもわずかにソフトで即応性に欠けるものの、GTとしてはM3を凌駕するものとなった。明けても暮れても、どんな天候でも、このクルマは熱狂的で納得のいく答えを返してくれる。期待を外れることはほとんどない。
英国編集部は2020年のロードテストで現行型B3に最高評価をつけたが、これは快適性、パフォーマンス、実用性、エンゲージメント、そして競合車と比較した場合のバリュー・フォー・マネー(金額に見合った価値)といった点で、これほどまでにうまくまとめ上げたクルマは、間違いなく他にないからだ。アルピナは、非常に完成度の高いモデルだ。アルピナは、顧客がクルマに何を求めているかをはっきり認識しているようだ。
標準のBMW 3シリーズと同様に、アルピナB3も2023年にフェイスリフトを行ったが、ありがたいことに、走りの本質は変わらなかった。変更点は、ルックスの刷新と、BMWのインフォテインメント・システム「iDrive 8」の大きな曲面ディスプレイが追加された程度だ。
3. メルセデスAMG SL
メルセデスのGTカーを名前だけで選ぶとしたら、AMG GTをチョイスするのが自然だろう。でも、それは間違い。なぜなら、AMG GTは長距離の快適性よりもドライビングの楽しさを優先するスポーツカーという位置づけが強いからだ。
1960年代半ば以降、メルセデスのGTカーはSクラス・クーペと並んでSLが担ってきた。SLは最近、7代目としてリニューアルされた。AMGが全面的に開発し、ファブリックルーフを復活させ、よりスポーツカー的な要素を強めている。
それでも、GTとして最高峰の存在であることに変わりはない。SLの性格の多くを物語るのが4.0L V8で、おおらかでスレッジハンマーのようなパワーがあり、決して飽きることはない。ラグもほとんどなく、その味付けはSLのシャシーに見事にマッチしている。SLは全般的に優れているが、路面が悪いと乗り心地にわずかな脆さを感じることがあるのだ。
快適で、ゴージャスで、心地よいキャビンと、自由自在な縦方向のボディコントロールがあれば、ほとんどの場合、何も考えずに長大な距離を走りきることができる。
AMGが開発した新型SLは、当然ながらすべてがAMGだ。ラインナップは4気筒のSL 43から始まる。本稿執筆時点ではまだこのモデルに試乗できていないので、SLのキャラクターがどの程度残っているかは未知数である。SL 55は最高出力475psのV8、SL 63は585psのV8を積み、油圧式アンチロールバーが追加されているが、乗り心地を変えるには程遠いようだ。
4. BMW 8シリーズ・グランクーペ
E31世代の初代BMW 8シリーズが姿を消してから最新バージョンが登場するまでには20年近くの空白期間があり、この間に大型GTの市場は大きく変化した。しかし、最新の8シリーズは、前身である6シリーズ・クーペのような先駆的なオーラはないものの、BMWのトレードマークである走る喜びとトップレベルの長距離快適性、贅沢なインテリアを併せ持ち、ステータスと存在感もある。
さらに、アウディA7やメルセデス・ベンツCLSに対抗するため、気品ある4ドア・グランクーペの設定もある。以前は、優れた直6ディーゼルツインターボを搭載した840dグランクーペが最高峰だった。しかし、直近のアップデートでは、直6ガソリンの840i、V8のM850i、M8コンペティション・グランクーペのみが残された。
いずれも四輪駆動だが、全車スチール製サスペンション(メルセデスやアウディのエアサスとは異なる)を採用しており、コストを抑えつつも、うまく調整された運転体験を提供する。さらにM850iでは、四輪操舵とアクティブ・アンチロール・コントロール・サスペンションを装備している。
5. ジャガーFタイプ
デビューから10年近くが経過したジャガーFタイプは、「お別れツアー」を始めている。ジャガーは2023年末にFタイプの生産を終了すると発表しており、直接的な後継車は用意されていない。
その生涯において、Fタイプの役割は微妙に変化してきた。2013年の発売当初は、クールで信頼性の高い「現代版TVR」のようなクルマとして消費者に評価されるだろうと想像していたが、年を経るにつれてV6の人気が高まり、その後ジャガーは4気筒エンジンを搭載して、再び関心を呼び起こそうとした。
2020年初頭に行われたフェイスリフト以降、Fタイプは以前よりもさらに多くの市場に展開している。ミドルレンジのP450は間違いなく最も素晴らしいもので、最高出力450psと十分なパワーを持ち、ライバルと比較してお買い得である。また、V8エンジンは、他では味わえないようなサウンドと力強さを併せ持っている。後輪駆動と四輪駆動が選択可能だ。
他のバージョンよりもスポーツ志向が控えめで、最高のGTでもある。20インチのホイールを履くが、乗り心地はとても落ち着いており、アダプティブダンパーをノーマルモードに設定すれば、しなやかで分別のあるドライビングも実現する。また、シャシーチューンがソフトな分、パワートレインがもたらす豊かさな燃焼を存分に味わうことができる。
6. BMW M550i xドライブ
他車に比べてドラマチックなルーフラインなどを持たず、やや古風なセダンスタイルを貫いているものの、BMW M550i xドライブはここで紹介するにふさわしい存在である。
筋金入りのドライバーのためのマシンと言えばM5だが、日常のドライブにはアグレッシブ過ぎて、タッチもやや固め。その鋭さは年々増しており、気軽に使えるとは言いにくくなってきた。英国では、もっとスパイシーなM5コンペティションのみが販売されているため、その傾向は顕著なのだ。
こうしたM5の変化により、5シリーズのラインナップには、もう1つのV8モデルのためのスペースが生まれた。M550i xドライブは、速さはそのままに、M5よりも快適性と洗練度に重点を置いている。そして英国では、M5よりもおよそ3万ポンド(約500万円)安い金額で購入することができる。
4.4L V8ツインターボエンジンは最高出力537psと最大トルク76.5kg-mを発生し、静止状態から4.0秒未満で100km/hに達する。簡単に言えば、とても速い。また、BMWならではの魅力的なハンドリングも実現している。そして、その一方で、レザーをふんだんに使用した豪華なインテリアやエアサスペンション(オプション)により、Mモデルにない快適性も備わっているのだ。
M550i xドライブは、圧倒的に速くて楽しいBMWであることに変わりはないが、国境の端から端まで優雅にドライブしたいと思うようなクルマでもある。
7. メルセデス・ベンツCLS
4ドア・セダンにクーペのようなルーフを組み合わせた「クーペスタイル」「クーペルック」のボディスタイルを考案したのはメルセデス・ベンツなのか、それともマセラティの第5世代クアトロポルテなのかは、議論の余地があるところだ。いずれにせよ、2004年に登場した初代CLSは先駆者の1つであり、メルセデスがそれ以来、どの自動車メーカーよりもこのデザインの普及に努力を重ねてきたことは間違いない。
そのようなクルマが偉大なGTとなる理由は簡単だ。1つは、大人が座れるシートを4つ装備し、4枚のドアから簡単に乗り降りできること。特に3代目となる現行型CLSは、実用性の面で他の2+2よりもはるかに優れており、シューティングブレークは言わずもがなである。だが、惜しくも、メルセデスは現行世代でCLSの生産終了を決定している。
エクステリアデザインは、トレンドをリードした初代が一番鮮烈で印象的だった。2代目は少しぎこちないルックスだが、3代目のテクノロジーが詰まった革張りのキャビンは歴代最高に魅力的だ。
エンジンは4気筒または6気筒ガソリンターボと6気筒ディーゼルターボの2種類が用意されており、4輪駆動のCLS 53は、火を噴くようなV8エンジンを搭載した旧型CLS 63に代わって、AMGに異色のフレーバーをもたらしている。シャシーもうまく調整されているが、ランフラットタイヤを履いた大径ホイール装着モデルは、ボディロールに悩まされることがあるため、購入前には試乗をおすすめする。
8. テスラ・モデルS
最高の長距離ツアラーを表彰するリストに含めるに値するEVがあるとすれば、それは間違いなくテスラ・モデルSである。最新のロングレンジモデルでは、1回の充電で640km以上走行できると言われ、最長800kmのプレイド+仕様も計画されている。スーパーチャージャー・ネットワークにより、高速かつ信頼性の高い充電が可能なので、航続距離に対する不安も和らぐだろう。
もちろん、モデルSは直線でも速い。上位のプレイドは、3基の電気モーターから1000ps以上の出力を発生させ、静止状態から2.0秒未満で100km/hに達するという。それは実際に試乗したときにぜひ確認したいところだが、低出力バージョンでさえ加速力は折り紙付きだ。
モデルSの走りには、大きさや重さが感じられる。グリップの限界を試すようなハードプッシュはせず、落ち着いて走れば、速くて快適な長距離ツアラーになる。風の中を流れるような柔らかい乗り心地から、高速道路では優秀なクルーザーを演じてくれるが、起伏のある道では浮きすぎているように感じることもある。
インテリアデザインは、ミニマリズムの代名詞となっている。物理的な操作系はまばらで、車載機能の大部分はステアリングホイール上の小さなボタンか巨大なタッチスクリーンから操作する。
一方、使われる素材の質感や製造品質は改善されつつあるが、そこはまだ欧州高級車ブランドは敵わない。
9. メルセデス・ベンツEクラス・クーペ/カブリオレ
Eクラスの2ドアモデルは、独特の雰囲気を漂わせている。ドライバーや乗員をワクワクさせるような凝ったギミックよりも、喧騒から離れた穏やかな快適空間の中を漂うことに価値を見出す大人向けの、洗練されたハンサムな2ドアである。
改良によって内外装ともに以前よりもさらに見栄えが良くなっている。風通しの良いキャビンには、メルセデス最新の車載インフォテインメント・システムとスマートに調和する高級素材を使用し、レザー張りの大型シートは優れた快適性を提供してくれる。
パワートレインは、4気筒ガソリンまたはディーゼルがエントリーモデルとして用意されているが、Eクラス・クーペに最も適しているのは6気筒のガソリンエンジンだ。四輪駆動のE 450は、直進安定性に優れ、快適な乗り心地とスムーズなコントロール性を備えたモデルである。
もう少しダイナミックな走りを楽しみたいなら、メルセデスAMG E 53クーペがいいだろう。E 450よりも魅力的なドライブができるのは確かだが、AMGの最高傑作と比較すると、時折、平凡さを感じることもある。ワインディングロードで白熱したドライブをするよりも、高速で長距離を移動するのに適したクルマであることは間違いない。
ただ、残念なことに、最近発表された6代目Eクラスには2ドアモデルの計画がない。後継車の情報もあるが、ラインナップ見直しにより名称が変わるようだ。
10. レクサスLC
走りに熱心なドライバーであれば、LCを推したくなるだろう。LC 500にはカリスマ的なV8エンジンが搭載されており、バランスのとれた軽快なハンドリングは、ジャガーFタイプやポルシェ911がライバルなのだと感じさせる。
しかし、その一方で、LCは大きくて重く、鈍重に感じられる。少し扱いづらいところもあり、愛憎入り交じるアンビバレントな感覚から逃れることはできない。GTとしても、荷室スペースの少なさ、後部座席の使いづらさ、ランフラットタイヤによる木訥(ぼくとつ)な乗り心地は、いずれも特筆すべきウィークポイントだ。
クーペでは、前述のV8エンジンとV6ハイブリッドのLC 500hの2種類から選ぶことができる。LC 500コンバーチブルもあるが、ハイブリッド用バッテリーの設置場所にルーフが収納されるため、V8のみの設定となる。とはいえ、そこは悲しむところではない。ハイブリッドはあまりスポーツカーには向かないし、ルーフを下ろせば素晴らしい自然吸気V8をより一層楽しむことができるからである。
結局のところ、長所に感動するか、短所に不満を抱くかで評価が二極化するだろう。ダイヤモンドの原石と見るか、単なる石ころと見るかはその人次第である。しかし、もしドライバーズカーが好きで、ハイブリッド車を避けているのなら、不変の価値を見出すことができるだろう。
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