2021年1月21日(木曜日)、FIA世界ラリー選手権(WRC)第1戦ラリー・モンテカルロが開幕する。ラリーは雪と氷を含むフランスアルプスの山岳地帯を舞台に行われ、24日(日曜日)にモナコ・モンテカルロでフィニッシュを迎える。ここでは開幕を控えたトヨタの最新情報をお送りしよう。
雪と氷のトリッキーなターマックが舞台
ラリー・モンテカルロは、1911年初開催というWRCで最も長い歴史を誇るイベント。フランス・ギャップとモナコ・モンテカルロを基点に、フランスアルプスの山岳地帯を舞台としたステージで競技が行われる。
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ラリー前半はサービスパークがフランス南部のギャップに置かれ、21日午後2時過ぎ(現地時間)からギャップの北側で2本のステージを走行。22日金曜日は西に向かい、サービスを間に挟んで5本のステージを走る。3日目の23日土曜日の午前中は東に向かい、2本のステージを走行した後、サービスを経て1本のステージを走り、その後200km以上離れたモナコに向かう。そして、最終日の24日日曜日は、モンテカルロを基点に北西に広がるフレンチアルプスで2本のステージを各2回走行。最終ステージのブリアンソネ−アントルヴォー2は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーにボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。
2021年のラリー・モンテカルロは新型コロナウイルスの影響により無観客大会となり、ステージの走行距離は例年よりも大幅に短くなったが、それでもステージは全部で14本(計257.64km)、リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1392.88kmが予定されている。
また、夜間の外出制限が続くことから名物であるナイトステージは休止となり、さらに本番前のシェイクダウンが今回は設定されないことから、ドライバーはいきなり最初のステージに挑むことになる。
ステージは基本的に全てターマック(舗装路)だが、山岳地帯のステージが大部分を占めるため、例年降雪路も多く含まれ、ドライ、ウエット、スノー、アイスとコンディションが刻々と変化する難しい状況となる。
路面コンディションが変わりやすいラリー・モンテカルロでは、4種類のタイヤ(ドライ用、ウエット用、雪道用スタッドレス、スタッドタイヤ)が用意されるが、それぞれ使用できる本数が限られている上、1本のステージ中でコンディションが激変することも多いため、タイヤ選択は至難を極め、タイヤ戦略が勝敗を大きく左右する。さらに、今シーズンからWRCの上位カテゴリーについてはピレリが単独サプライヤーとなったことで、昨シーズンとは違うメーカーのタイヤを装着して戦うチームは、4種類のタイヤを深く理解する必要がある。
3冠完全制覇を狙うトヨタの最新情報をレポート
2021年シーズンもトヨタとヒュンダイ、Mスポーツフォードの間で激しい戦いが繰り広げられることが予想されるが、ここではドライバー、コ・ドライバー、マニュファクチャラーの3部門完全制覇を狙うトヨタの最新情報をレポートしよう。
トヨタは新たにチーム代表にヤリ−マティ・ラトバラを迎え、セバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシア組(1号車)、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)の3台のヤリスWRCで参戦。
とくに開幕戦ラリー・モンテカルロでは、過去7回優勝するなどこのラリーを得意とするオジェに期待がかかるが、昨年の大会ではエバンスも最後まで優勝争いに加わっており、ロバンペラもWRカーで初めての出場だったにもかかわらず総合5位でフィニッシュしている。
ラリー・モンテカルロ開幕を前に、ヤリ−マティ・ラトバラ代表は、「今年のラリー・モンテカルロに向けての準備作業は、新たな役割を担う私にとって、これまでとは全く違う感覚です。チームはとても良い雰囲気です。昨年のモンテカルロにはドライバー全員が初めてヤリスWRCでラリーに臨みましたが、それでもセブとエルフィンが優勝争いに加わりました。今年、彼らはクルマにかなり慣れているので、昨年よりもいい状態にあると思います。モンテカルロはく1年で最も難しいラリーで、常にサプライズがあり、天候が戦いを大きく左右することもあります。しかし、我々は十分な準備ができています。タイヤのサプライヤーが変わるのは大きな変化ですので、事前のテストでは、新しいピレリタイヤに慣れることと、クルマのセットアップを正しく行うことに重点を置きました。テストを実施したエリアはとても雪が多かったのですが、様々なコンディションであらゆるタイヤのオプションを試すことができたので、ラリーに向けて貴重な情報を得ることができました」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
セバスチャン・オジェ(ヤリスWRC 1号車)
「私が1番勝ちたいラリーであることは、誰もが知っていると思います。しかし、ステージのコンディションは常に難易度が高く、勝つためには賢くなければならないため、謙虚な気持ちで臨む必要があります。今年に関しては、例年とは少し違う戦いになるでしょう。私は、毎年ラリーの現場でファンの皆さんの大きなサポートを受けてきました。今年、皆さんの姿が道端になかったとしても、テレビの前で応援してくれると信じていますし、皆さんを喜ばせたいと思っています。今シーズンに向けての準備はできていますし、それが自信になっています。ただし、今年は新しいタイヤに適応しなければなりません。特にモンテカルロでは、他のイベントよりも多くの種類のタイヤを選ぶことができるのでなおさらです。ベストなタイヤ戦略を立て、それを最大限に活用するのもまたラリーの面白い部分なので、楽しみにしています」
エルフィン・エバンス (ヤリスWRC 33号車)
「2020年はとても大きな手応えを感じた1年でしたが、チーム加入初年度だったので未知なる部分が少し残っていたのも事実です。今は自分を取り巻く環境にも慣れてきたので、よりリラックスして1年をスタートすることができます。とはいえ、競争は常に激しく、改善を続けてさらに上を目指していかなければなりません。今年のカレンダーには注目の歴史的ベントが何戦かありますが、ラリー・モンテカルロもそのひとつです。通常、ステージはとても良く、いつも運転を楽しんでいますが、コンディション次第ではかなり難しくなることもあります。特に、暗闇の中雪や氷に覆われた道を走る時に、どれくらいグリップを得られるかを判断するのは本当に困難です。新しいピレリタイヤを履いてのテストでは、全く違うコンディションで2日間走りましたが、ラリーで使えそうな様々なオプションを試すことができたので、良かったと思います」
カッレ・ロバンペラ (ヤリスWRC 69号車)
「今年はシーズンオフがとても短かったため、新しいシーズンが始まる感じがしません。昨年はあまりにもシーズンが短く、このクルマで多くの距離を走ることができませんでした。今年はより長い距離を走り、フィーリングがさらに良くなっていくことを期待しています。ラリー・モンテカルロは、カレンダーの中で最も難しいラリーです。昨年よりも上を目指し、もう少しだけ攻めたいと思っていますが、とてもミスをしやすいイベントなので、クリーンにラリーを戦って良い結果が得られることを願っています。ピレリタイヤを履いてのテストは、典型的なモンテカルロのコンディションだったので、とても興味深いものでした。ドライだけでなく雪や氷の路面も走ることができて、非常に良いフィーリングでした」
ラリー・モンテカルロは1月21日14時(日本時間21日22時)、ステージ1がスタートする。
【参考】2020WRC開幕戦ラリー・モンテカルロ 結果
1位 11 T.ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)3h10m57.6s
2位 17 S.オジェ(トヨタ・ヤリスWRC)+12.6s
3位 33 E.エバンス(トヨタ・ヤリスWRC)+14.3s
4位 4 E.ラッピ(フォード・フィエスタWRC)+3m09.0s
5位 69 K.ロバンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)+4m17.2s
6位 9 S.ローブ(ヒュンダイi20クーペWRC)+5m04.7s
7位 18 勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)+11m27.9s
8位 3 T.スニネン フォード・フィエスタWRC)+13m30.4s
9位 27 E.カミリ(シトロエンC3 R5)+13m42.2s
10位 20 M.オストベルグ(シトロエンC3 R5)+14m21.8s
リタイア 8 O.タナック(ヒュンダイi20クーペWRC)
[ アルバム : ラリー・モンテカルロ プレビュー はオリジナルサイトでご覧ください ]
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