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アメリカを代表するハーレー用パフォーマンス・パーツメーカー 「S&Sサイクル」の歴史を改めて振り返る【パート2】

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アメリカを代表するハーレー用パフォーマンス・パーツメーカー 「S&Sサイクル」の歴史を改めて振り返る【パート2】

■レースで得たノウハウを自社製品にフィードバック

 1958年に米国のイリノイ州で創設されたS&Sというメーカーが一貫して“パフォーマンス・パーツ”に拘っていることは以前に当サイト(バイクのニュース)でもお伝えさせて頂きましたが、その技術を証明する場所がレースというフィールドです。

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 S&Sを創業したジョージ・スミスとスタンリー・スタンコスは、1/4マイル(402.33m)の直線での加速を競うドラッグレースや、水が干上がった乾湖や塩湖で行われるスピードトライアル(最高速を競う競技)などに創業以前から挑んできましたが、そのレースでの活動が大ヒット商品である“キャブレター”の開発に繋がります。

前回、お伝えしたとおり“TRAMP”と名付けられたナックルヘッド・ベースのマシンでレースに挑み、それが創業の礎となったS&Sというメーカーですが、1963年にウィスコンシン州へ移転した後、しばらくパーツ生産に専念。

 1968年にレース活動を再開し、翌1969年にはワーナー・ライニーをライダーに擁してユタ州のソルトレイクで開催される“ボンネビル”へ挑むのですが、そこでの経験がオリジナルのキャブレターを開発する呼び水になったとケン・スミス氏(創業者であるジョージ・スミスの次男)は語ります。

■創業者の次男が語るキャブレター開発の経緯

「そもそも父(ジョージ・スミス)がキャブレターの開発にこだわった理由はナイトロメタン(液体二トロ燃料)用としてです。当時のハーレー・チューンの世界ではSUやウェーバーなどクルマ用のキャブを流用することが主流だったのですが、それらはガソリンにしか対応しない上、満足のいくパワーが得られなかったんです。

 そこで1966年からキャブの開発に着手したのですが最初の“アーリータイプ”は構造も複雑で混合気の流量も満足のいくものではありませんでした。それを改良して誕生したキャブレターが“Lシリーズ”です。  この名称は初期型に対する“Late-model”という意味で決定しました。ストリートのガソリンに対応するタイプとナイトロメタン用の2種類、ベンチュリー径(キャブの内径)も大口径とスモーラー(小さい)バージョンの2種類が存在しています」。

※ ※ ※

 こう語るケン・スミス氏の言葉のとおり、S&Sは塩の湖で数々の記録を打ち立てていくのですが、まずは1969年にワーナー・ライニーが202.379 mph(約324km/h)の速度を樹立。ボンネビルでは時速200 mph(マイル)のスピードを打ち破った者のみ“200MPHクラブ”へのエントリーが許されるのですが、バイク部門においてはS&Sが初めてこのを偉業を達成しています。また、この時の燃料はガソリンだったとのことです。

 このガソリンとナイトロメタンの違いの詳細を説明すると、かなりの文字量となってしまうので割愛させて頂きますが、分子内に酸素を含んでいるナイトロメタンはガソリンなどの炭素水素と比較して燃焼時の酸素の消費量が少なく、単純に比較するとガソリン1kgを燃焼させるには14.6kgの空気が必要とのことですが、ナイトロは1.7kgでOK。つまりは同じ排気量でもガソリンの8.7倍のパワーを得ることが出来るということです。

 話が脱線してしまうので、ここで一旦戻しますが、このナイトロ対応の“Lキャブ”を開発したものの構造的にフロート(燃料を一時的に溜める箇所)に問題を抱えていたそうで、それを解消した“スーパーB”を1975年に発表。これが爆発的なヒットを生み、S&Sというメーカーの存在を世に知らしめることになります。

 そのスーパーB用として1975年にティアドロップ型のキャブ用エアクリーナーが登場するのですが、S&Sと聞けばこのパーツを思い浮かべるマニアの方も多いのではないでしょうか?

■約425km/hを記録しナショナル・レコードを獲得

 また、S&Sは、ボンネビルでハーレー・ダビッドソン社のワークス的チームであるWest coast Harley-Davidsonに協力し、S&S製パーツを搭載したデニス・マニングという人物が製作したストリームライナーのチューニングにも貢献。

 ハーレー・ワークスのトップであるディック・オブライアンにも様々な助言を与えたこのマシンは1970年のボンネビルで時速265.492mph(約425km/h)の記録を樹立します。もちろん、このスピードが当時のナショナル・レコード(世界記録)とのことです。  こうしてパフォーマンス・パーツメーカーとして確固たる地位を築いたS&Sですが、1976年にはオリジナルのボアアップシリンダーである“サイドワインダー”を発表し、1979年には同社の黄金期を築くことになるジョージ“J”スミスの息子であるジョージ“バーナード”スミスが入社。80~90年代に更なる栄光を掴んでいくことになるのです。(続く)

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