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天にも昇る運転体験 ポルシェ718スパイダー RSへ試乗 ヴァイザッハ仕様なら車重は1.4t切り

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天にも昇る運転体験 ポルシェ718スパイダー RSへ試乗 ヴァイザッハ仕様なら車重は1.4t切り

911 GT3譲りのNA 4.0L水平対向6気筒

今から20年前、ポルシェはミドシップ・スーパーカーのカレラGTを発売した。レーシングカー譲りの崇高なV型10気筒エンジンは、一生に一度といえる音響体験を味わわせてくれた。それを操るドライバーには、少々ボリュームが大きすぎたとはいえ。

【画像】天にも登る運転体験 ポルシェ718スパイダー RS ケイマンとボクスター カレラGTも 全120枚

同社のミドシップ・プラットフォームを土台にした最後の内燃エンジンモデル、718スパイダー RSも素晴らしいサウンドを奏でる。得られる体験は、それ以上かもしれない。

サーキットをキリキリに攻め込むことが追求されていない、現時点で唯一の、RSを掲げるポルシェでもある。純粋主義的なオープン・モデルでありながら、ヘルメットを携行する必要はない。

718スパイダー RSの英国価格は12万5499ポンド(約2271万円)だが、この価格帯では最も走りがダイナミック。ドライバーの直後にエアスクープが設けられ、表現し難いハードな吸気ノイズを鑑賞できる。同時に、普段使いにも問題なく対応する。

718ケイマン GT4 RSのオープントップ仕様といえるが、クーペとは異なり、公道を前提としたチューニングが施されている。それでも、エンジンは911 GT3譲りの自然吸気4.0L水平対向6気筒で、同じもの。500psという最高出力も変わらない。

トランスミッションは、ショートレシオのデュアルクラッチ・オートマティック、7速PDKが組まれる。一般道で能力を引き出せる、純粋なドライバーズカーを目指したとされているが、マニュアルは選べない。

しなやかな乗り心地 見事な操縦性のバランス

ポルシェのGT部門を率いるアンドレアス・プロイニンガー氏は、いくつかその理由を教えてくれた。718スパイダーに搭載される6速MTは、9000rpmまで回る4.0Lエンジンにはギア比がロング過ぎる、というのが1つ。

また911 GT3の6速MTは、物理的に大き過ぎるそうだ。リアエンジンの場合、トランスミッションは車両中央の前方側へ伸ばせる。反面、後方へ伸びるミッドシップの場合は、充分な余地がない。

MTの欠如は、718スパイダー RSに多少の影響を与えている。完璧な仕上がりに対し、欠けている最後の1ピースがあるとするなら、シフトレバーとクラッチペダルだろう。それでも、7速PDKは例によって電光石火の変速を決めてくれる。

また、それを補う魅力も備わっている。しなやかな乗り心地と、見事な操縦性のバランスだ。オープンエアを謳歌できる以上の訴求力を生んでいる。

ボディキットは、718ケイマン GT4 RSと大きく違う部分の1つ。高くそびえるリアウイングは与えられず、ダックテール・スポイラーがテールを飾る。控えめな分、ダウンフォースもそこまで強くはない。

フロントスプリッターやアンダーボディの構造も、それに合わせて適切に形状が改められた。高い速度域では、特に影響が大きいはず。

歴代最高の「RS」だと表現できるかも

サスペンションも、明らかに設定は異なる。充分なストロークがないと安定性が低下し、荒れた路面ではフロントの反応に影響も出る。そこでポルシェは、スプリングレートをソフト側に振った。

フロントでは1mm当たり110Nmから45Nmへ、リアでは140Nmから80Nmへ、かなり落とされている。それでも、ボールジョイント式で車高は調整可能だ。

ステアリングも調整を受け、切り始めの反応が若干マイルドになっているが、迅速性と興奮度を追求したポルシェの「GT」として内容に不足はない。朗らかなオープン2シーターとは一線を画す。

今回試乗したのは、ドイツ南部、アルプス山脈が迫るシュヴァーベンのワインディング。かくして、天にも昇る体験だった。驚愕なほど反応は正確で、シャシーバランスは研ぎ澄まされ、路面が変化しても一貫性は揺るがない。山肌へ美声がこだまする。

ソフトなバネレートの恩恵で、乗り心地は快適。水平対向6気筒エンジンの能力を、従来以上に自信を持って開放することも許している。718スパイダー RSは、断固としてアスファルトを掴み続ける。

路面が湿っていたりタイヤが冷えていたりという、現実的な環境でのコーナリングでは、718ケイマン GT4 RS以上の食らいつきも披露する。コーナーの出口では、アクセルペダルの加減によるライン調整も一層しやすい。

英国の一般道でどのように振る舞うのか、高まる気持ちを抑えきれない。歴代最高の「RS」だと表現できるかもしれない。718ボクスターがこれほどの進化を遂げるとは、想像していなかった。

ヴァイザッハ・パッケージなら1.4t切り

スパイダーを名乗るだけあって、ボクスターと同じルーフは備わらない。手で組み立てるソフトトップが用意され、カーボン製のフレームをフロントガラスとリアデッキの間へ固定することになる。

質感は低くないし、悪天候にもしっかり対応してくれる。短時間で終わる作業ではないものの、力仕事ではない。突然のゲリラ豪雨に見舞われるような昨今は、ありがたみを感じるはず。

天候が回復したら、折り畳んでバルクヘッド後方へ収納できる。重量は8.5kgと軽く、おかげで718ケイマン GT4 RSより718スパイダー RSの方が車重も軽い。

オプションとしては、9300ポンド(約168万円)のヴァイザッハ・パッケージが用意されている。チタン製エグゾーストシステムに、マグネシウム製の軽量ホイールを得られる。これを装備すれば、車重は1400kgを切るという。

生産数に上限は設けられていないが、潤沢に提供されるとは考えない方がいい。ポルシェのGT部門は、大量生産が得意とはいえない。品質や内容を考えれば、12万5499ポンド(約2271万円)はお買い得といえ、少なくないオーダーが寄せられるはず。

カレラGTはこれまで過小評価されてきたポルシェといえたが、近年はその特別さに多くの人が気付き始めている。精神的な後継モデルといえる718スパイダー RSも、将来的な価値は約束されているといっていい。

ポルシェ718スパイダー RS(欧州仕様)のスペック

英国価格:12万5499ポンド(約2271万円)
全長:4417mm
全幅:1994mm
全高:1252mm
最高速度:307km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:7.7km/L
CO2排出量:294g/km
車両重量:1410kg
パワートレイン:水平対向6気筒3996cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:500ps/9000rpm
最大トルク:45.8kg-m/6750rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)

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