メルセデス・ベンツC350e アバンギャルドに試乗して真っ先に感じたのはメルセデスらしい重厚感としっとり感があり、高級車に乗った満足感だった。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
メルセデス・ベンツCクラスのラインアップにプラグイン・ハイブリッドが加わったのは2016年1月。その半年前にCクラスはフルモデルチェンジを受け、これまでに4気筒・直噴ターボガソリンモデル、ディーゼルモデル、AMGのV6型ツインターボ、そして最もハイパフォーマンスなV8型・4.0L・直噴ツインターボのAMG C63などがラインアップしている。
このプラグイン・ハイブリッドは文字どおりプラグを差し込んで充電できるハイブリッド車で、C250 Sportsに搭載する4気筒直噴ターボ(最高出力211ps/最大トルク350Nm)のガソリンエンジンに、モーターが組み合わされたモデルだ。モーター出力は82ps/340Nmで、システム全体の出力は279ps(205kw)/600Nm。トランスミッションには7速ATが組み合わされている。搭載する電池容量は6.2kWhのリチウムイオンバッテリーだ。ちなみにプリウスPHVは4.4kWh、アウトランダーPHEVが12kWh、リーフが24kWhといったところで、C350eの電池容量はPHEVとしては標準的な容量だ。
■ハイブリッドとプラグインとの違いは何か?
それはコンセントから充電できるかできないかということだが、持っている意味合いはだいぶ違うのだ。ハイブリッドはもともとガソリンエンジンが主役で、そのパワーアシストを電気モーターが担い燃費をよくする役目をしている。したがってEV走行ができるものの2~3kmがせいぜいで、なかにはEV走行機能がないハイブリッドもある。
一方、プラグインはEV車であると考えると違いが明確だ。できる限りEV走行のレンジを広げたいが、そのためには大量のバッテリーを搭載する必要があり、重量やコストなどに跳ね返る。そこでエンジンでも充電できる機能を持たせてEVの走行距離、コスト、車重などのバランスの取れたポイントで製品化しているのがプラグイン・ハイブリッドだと思っていい。
このC350eはEVの航続距離は約30km。メルセデス・ベンツの調査では通勤などを含め一般的に1日に乗る距離は30km未満だそうで、そうなるとガソリンを一滴も使わず完全な電気自動車として利用できるわけだ。また、長距離移動がある場合はコンセントからの充電をしなくとも、ガソリンエンジンで充電ができるので、これまでのガソリン車のようにガソリンスタンドで給油すればEV走行ができるということになる。
スペックを確認すると、充電に関しては急速充電には対応していない。急速充電のできるアウトランダーは例外で、搭載する電池容量もこのC350eのほぼ2倍の容量があるため、よりEV車の要素が強いためだ。一般的にPHEVは急速充電機能を持っていないということになる。充電は200Vでフル充電まで約4時間。これをエンジンで賄う場合は約40分で充電できる。つまりエンジンが急速充電の役目をしているというわけだ。ちなみに「PHV」と「PHEV」の違いはなく、イメージ的な意味合いを持たせて各メーカーが名付けている。
■インプレッション
実際に試乗してみるとフル充電の状態から走り出すと、当然EV走行からスタートしおよそ18km程度走った時点でエンジンがかかり、充電を始めていた。市街地でゴー&ストップが多かったり上り坂が多かったりするとバッテリーを消費しやすく、航続距離は道路事情によって変化することになる。
エンジンが始動すると4気筒の直噴ターボの音はそれなりに聞こえてくる。EV走行時はロードノイズだけがわずかに聞こえるという、とても静かな室内環境だったが、エンジンがかかると雰囲気は普通のガソリン車と同じになる。しかし、他のCクラスモデルよりは静かに感じる。おそらく遮音や吸音などの対策がしっかりされている結果だろう。
考えてみればC350eはCクラスの中でAMGを除けばトップグレードに位置する。価格もセダンで707万円、ステーションワゴンで782万円という価格。これにエコカー減税の恩恵を受け自動車取得税、重量税は免税。それにクリーンエネルギー自動車等導入促進対策補助金がセダンで17万円、ステーションワゴンで最大13万円受けることができるが、それでもオプション装備などを入れると800万円台にはなるので、Eクラスのエントリーから中間グレードまでと同等ということになる。そうなると、車両価格というより環境車を所有しているという文化的意識というか、環境意識の高さやインテリジェンスなどのイメージからの所有欲とも言えなくもない。
さて、C350eにはEVモードやハイブリッドモードなどの切り替えがある。EVモードは前述のように最大約30km走行でき、トップスピードは130km/hまでEVで賄える。E-SAVEモードは、その時点でのバッテリー残量をキープするモードで、エンジン走行をしたくない場面のために電力を取っておくといった使い方だ。それとCHARGEモードがあり、これは強制的にエンジンから充電を任意にできるモードになる。
C350eにはほかにインテリジェントアクセルペダルという機能があり、ドライバーにEVモードとエンジンがかかってハイブリッド走行に移行するタイミングを、アクセルペダルを重くすることで教えてくれる。また、ダブルパルス機能は先行車をレーダーセンサーが捉え、接近するにつれアクセルをオフするタイミングを2回のノックで知らせてくれる機能だ。そうすることで燃費がより良く効率的になるというものだ。なんだかおせっかいな機能にも感じるが、実際はそれほど邪魔な機能ではなく、うっかりすると気づかないということもある程度なので、うっとうしい類のものではない。
また、プラグイン・ハイブリッドに限らず他のメルセデス・ベンツにも搭載されているドライブモードの切り替え、ダイナミックセレクトもある。こちらはエンジン、サスペンション、ステアリング、アクセルレスポンスなどが変化するものでSプラス、スポーツ、コンフォート、エコのモードがある。
■高級でしっとりした乗り心地の由来
C350eはバッテリーの搭載や補器類などにより同じエンジンを搭載するC250 Sportsより車両重量が130kgほど重くなっている。冒頭で触れたメルセデスらしい重厚感としっとり感があるという印象は、この重量増が高級感といったフィーリングにプラスに働くという結果を導いている。新型車へのタスクとして軽量化は必須であり、そこから省燃費へとつなげていく手段の一つであるのだが、反面重厚感が薄れてしまっているのも事実。重量増となったC350eには皮肉にも高級感が増し、結果トップグレードにポジションしている。
ライバルとなるBMW3シリーズのPHEVは、ディーゼルモデルやダウンサイジングターボモデルとの価格差が小さい設定で、このあたりもメルセデス・ベンツ日本とBMWジャパンのマーケティングによる価格設定の違いは興味深い。また2016年秋導入と噂されているアウディA4のPHEVだが、アウディ・ジャパンとしては双方の販売状況を見極めてからの値付けができるわけで、そこも注目してみたい。
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