フランスのラグジュアリーブランド「DS」のSUV「DS 7クロスバック」にPHV(プラグ・イン・ハイブリッド)モデルが追加された。「E-TENSE 4X4」という呼称のそれに田中誠司が試乗した。フランス発の電動SUVの魅力は?
100万円以上高いPHV
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フランスのクルマには、走らせるほど奥行きの深さに唸るものが少なくない。「DS 9」が上陸するまでの期限付きとはいえ、現在のグループPSAの最高級モデルである「DS7クロスバックE-TENSE」には、フランスの威信の片鱗を見た。
価格は732万円。225psのガソリンエンジン搭載車にくらべ143万円、177psのディーゼルエンジン搭載車にくらべ123万円も高額であるものの、前輪を駆動するガソリンエンジンと、前後それぞれのタイヤを駆動するふたつのモーターを組み合わせたプラグ・イン・ハイブリッド(PHV)のシステム総合出力は300psまで上昇し、4WDにもなるほか、パノラミックサンルーフをはじめいくつかの装備が標準搭載される。環境省事業対象補助金交付(39万2000円)の対象にもなる。
筆者は数カ月前の試乗会でディーゼルエンジン搭載車を走らせる機会を得て、そのゆったりした乗り心地や安定した直進性に心惹かれていた。必要にして十分なアウトプットと燃費性能を備えるディーゼルモデルに対し、PHVなら動力性能の向上は間違いないとはいうものの、車重増などによるデメリットもあるのでは、と、踏んでいたが、それも杞憂に終わった。
素晴らしいステアリングフィール
PHVパワーユニットは、市街地においては電気モーターによるほとんど無音の加減速をもたらすし、開けた道ではドライバーの要求に応じて強烈な加速を生み出すこともできる。
1.6リッターの排気量から200psを絞り出すガソリンエンジン自体は、高回転域で力強さを増す特性ながら、ふわりとしたトルクの厚みにより電気モーターが常時サポートしてくれて心地よい。全体として高い静粛性を保ったままスピードが乗ってくるので、速度の出しすぎには注意が必要だ。
そんなパワーソースにもまして、それを支えるシャシーとパッケージングに感心した。操るひとをまずおどろかせるのは、とても正確で路面状況や車体の動きをよく伝えてくるステアリングである。
一般的には縦置きエンジンで後輪駆動を主体とするもののほうがステアリングフィールはよいとされていて、筆者も普段はそちらのほうが好みであるものの、これまでに前輪駆動またはそれをベースとする4WD車で満足できるステアリングフィールのクルマに乗ったことがないというひとは、ぜひDS 7クロスバックでディーラーの近所を1周だけでもしてみてほしい。繊細ながら過敏ではなく、直進性とのバランスにとても優れていて、操ることを楽しめる。
俊敏さにフォーカスが当たるコンパクトなスポーティーカーならいざしらず、大柄なSUVでステアリングフィールなんてどうでもいいでしょ、と、思うかもしれない。しかし大きくて重心が高いクルマだからこそ、不意に障害物に遭遇したときなど、いざというとき正しいレスポンスを示さなければ上手に操れぬリスクもあるから、頼れる応答性のステアリングを備えていてほしいのである。
このステアリングシステムは、おなじ「EMP2」プラットフォームを採用するプジョー「308」など、PSAグループのよりコンパクトなモデルから引用したもので、最小回転半径5.4mと、小回まわり性能にも優れているのが特徴だ。
「DSアクティブスキャンサスペンション」の威力
DSの源流であるシトロエンのトレードマークであった“ハイドロニューマティック”、つまり特殊な油圧・ガス圧回路で4輪を結び、車高調整式スプリングとして機能させるシステムは過去のものとなったが、「DS」を名乗る以上は徹底したフラットライドを示してほしい。
そんな要求に、「DSアクティブスキャンサスペンション」は、応えてくれる。
一瞬先の路面状況をカメラで捉えてショックアブソーバーの減衰力を調整してくれるこのシステムを通じ、日常的な市街地走行から高速巡航まで、タイヤだけが上下してクルマの姿勢、ドライバーの目線が常にフラットに保たれる。
普段づかいの領域からちょっと踏み出したペースでは、コンフォートモードのままでは絶対的な姿勢変化の大きさを意識させられるかもしれない。ドライブモードをスポーツに変えると、DSアクティブスキャンサスペンションがオフになり、減衰力の高い状態がキープされる。乗り心地自体は悪化するものの、300psをフルに活かした走りを楽しむことが可能になる。
快適な乗り心地には仕立てのよいシートも貢献している。荷重が一点に集中することがなく、サイドサポートがしっかりしていて座面の長さも調整可能だ。さらにE-TENSEの前席にはヒーターに加えてベンチレーション機能も搭載されていて、炎天下での駐車後にも素早く快適さを取り戻してくれる。
フランス車流の合理性
こうしてひととおり走らせて、幅も高さもゆったりした空間を備える運転席の背後に、ひざ前に拳ふたつが収まる後席と555リッターの容積を持つラゲッジスペースがあることを確かめたうえで、DS7はかなり大柄なクルマなのだろうと認識していた。
しかし実際の全長は、わずか4590mmにとどまることが最大のおどろきであった。
その秘密は、前述したとおりコンパクトカーと同じプラットフォームを用いたため、Aピラーからフロントホイールまでの距離がかなり短いことだ。サイドビューを見ると、フロントのホイールアーチがドアのカットラインに食い込んでいることからも理解できるだろう。
普通はこれほどホイールベースを短くすると、乗り心地もせわしないものになりがちだし、外観上もバランスを保ちにくい。そこを長年、アドバンテージを築いてきたグループPSAのサスペンション技術や、巧妙なスタイリングにより克服し、簡単には真似できないパッケージングを実現したところに価値がある。
合理性や実用性で選べば日本車やドイツ車、と、決め込んでいるひとも多いかもしれないが、フランス車にはフランス車流の合理性が、いまなお活きている。
文・田中誠司 写真・安井宏充(Weekend.)
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