フォードで最も売れているSUV
text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
成長を続けるSUVカテゴリーに投入される、新しいフォード・クーガ。2008年以来、高い完成度を備えたフォードの定番モデルとなっている。エコスポーツとエスケープは、ちょっと元気がない。
初代クーガは見た目も良く、操縦性にも優れていたが、販売台数はさほど伸びなかった。要因の1つは、SUVブームが本格的に始まる前だったからだろう。
2013年に登場した2代目は、世界的な「ワン・フォード」戦略のもとで生まれた。ニューヨークでも、ロンドンと同じように優れた使い勝手を提供する必要があった。サイズは大きくなっていたが、ドライバーを楽しませてくれる性格も受け継いでいた。
スロースタートを切ったカタチだったが、モデル末期の2・3年で売上は上昇。ヒットモデルとなり、フォードで最も数を多く売るSUVにまで成長している。最新版のフォード・クーガが背負っている期待はかなり大きい。
野心的に先代の成功を再び勝ち取るべく、土台から新しく生まれ変わった3代目クーガ。幅広く設定されたパワートレインも特徴の1つ。ガソリンとディーゼルエンジンに加えて、ディーゼル・マイルドHVと、ガソリン・プラグインHVが含まれる。
ボディサイズは先代から拡大。ショールームでのアピール力を高めるべく、装備も充実した。アダプティブ・クルーズコントロールとステアリング・アシストによる、半自律運転システムも搭載する。
ネットワーク接続のコネクティビティをサポートする。扱いやすいタッチモニターには、フォード・パス・コネクトと呼ばれるソフトウエアを実装。スマートフォンからクーガを遠隔的にモニタリングすることも可能だ。
装備を充実させつつ80kgの軽量化
先進技術をふんだんに投入しながら、車重を80kgも削っていることも見逃せない。今回試乗したプラグイン・ハイブリッドの場合、先代には該当モデルがないものの、車重は1844kgとなる。
参考までに、三菱アウトランダーPHEVと比べると50kgほど軽い。絶対的には軽量とはいえないが、装備を考えれば悪くない数字だと思う。
このプラグイン・ハイブリッドは、フォード・エスケープに採用されるシステムの派生版。アトキンソン・サイクルの2.5L 4気筒エンジンを搭載し、CVTと組み合わされる。14.4kWhのリチウムイオン・バッテリーが、電気モーターを動かす。
システム総合での最高出力は225psで、充分にたくましい。電気モーターの動力だけで、136km/hまでの速度をカバーし、最大56kmの距離を走行できる。一般的な充電器では、6時間でフル充電できる。
ボディの見た目は大幅に変わった。エッジの立ったシャープなラインは姿を消し、ソフトで抑揚のあるデザインに一新。一回り小さい新型プーマと共通するテーマであることは瞭然だ。
ズングリとしたフォルムは、人によっては先代ほどカッコ良く感じられないかもしれない。特にSTラインの場合、ホイールアーチ・エクステンションに18インチのガンメタル・ホイールを履き、個性的な雰囲気がある。
インテリアは先代と同様、大きなフォード・フォーカスのよう。実際、ダッシュボードはほぼそのままクーガにも組み付けられている。
プーマと同様に、ドライバーの正面にあるのは液晶モニターによるメーターパネル。ドライビングモードに合わせて、メーターのグラフィックテーマが変化する。
インテリアのプレミアム感は不足気味
ドライビングモードは、コンフォート、スポーツ、エコに加えて、砂利道などにも対応するスリッパリー(滑りやすい)を設定。ただし、4輪駆動が選べるのは189psの2.0Lターボディーゼルのみとなる。
視覚的にはスマートにまとまったインテリアだが、フォードが目指すプレミアム感は不足気味。多くの素材は触感も悪くないものの、下の方には傷の付きやすい硬質なプラスティックが目立つ。
高めの運転席からの前方視界は良好。後方は分厚いCピラーが斜め方向の視界を遮り、良いとはいえない。
リアシートは最大で150mmのスライド量を持つ、分割可倒式のベンチシート。荷室容量を増やすか、リアシートの足元空間を広げるか、状況に応じて選べる。
リアシートを後ろにスライドさせた状態でも、荷室容量はPHEV版で411Lを確保。それ以外のクーガなら475Lの広さがある。前方にずらせば、PHEV版なら581L、通常のエンジン版は645Lにまで拡大できる。
価格設定は競争力が高く、チタン・グレードで3万3095ポンド(446万円)から。勉強はこれくらいにして、走り出してみよう。
スタートすると、プラグイン・ハイブリッドの効果を実感する。モーターとエンジンとのバトンタッチもスムーズで、ほとんど音振では知覚できない。EVモードかハイブリッド・モードで走り出せば、コンピューターが最善を尽くしてくれる。
スポーツ・モードを選ぶと、最大の動力性能を引き出すべく、ガソリンエンジンと電気モーターを積極的に組み合わせて走る。だが、俊敏というよりは、活発といった程度。
落ち着きを備えた機敏な身のこなし
先日発表されたオペル・グランドXハイブリッドには敵わない。0-100km/h加速は9.2秒で、リニアなCVTの特性上、それほど反応に優れるようにも感じられない。
実際に活発さを感じられるのは、追い越し時などの中間加速。電気モーターが有効なトルクを加算してくれる。
電気モーターだけで走行するEVモードの洗練性は高い。力不足をエンジンが支える場面でも、回転数が高まらない限り、始動に気付くことはないだろう。
フロントガラスには特別な防音処理が施され、風切り音も小さく、車内の平穏な雰囲気を引き立てている。大きな衝撃がタイヤに伝わっても、こもった音がサスペンションから聞こえてくるくらいだ。
新しいクーガが採用するのは、フォーカスと同じC2プラットフォーム。フロント・サスペンションはストラット式で、リアはマルチリンク式。STラインには、若干引き締められたスプリングとダンパーが組み合わされる。
フォーカスよりクーガの方が車高は高いが、先代と比べれば20mm低い。トレッドは44mm広げられ、バッテリーの搭載位置も可能な限り低められている。その結果、印象的なほど落ち着きのある、機敏な身のこなしのSUVに仕上がっている。
走行ペースを速めていくと、背の高く重たいフォーカスのようにも感じる。フォード車らしく、最も印象的なのは減衰力の効き方。路面と息を合わせるように快適性を保ちつつ、連続するコーナーでは優れた操縦性を楽しめる。
鋭い隆起や大きなくぼみ以外、ほとんどの場面でプーマの乗り心地はしなやか。ライバルよりも流暢に距離を重ねていく。
ドライバーが得られる楽しさはライバル以上
電動パワーステアリングは感じ取れる情報量が少ないが、軽快で正確。コーナーの頂点めがけて、思い切り飛び込める。一回り小さなプーマほどの俊敏性や調整幅はないにしろ、明確な差とまではいえないだろう。
クーガは安定したまま、高速にコーナリングしていく。間違いなく、オペルや三菱のPHEV版SUVより楽しめる選択肢だ。
さすがにタイトなコーナーで攻め込むと、クルマの重さを感じ始める。だがトルクベクタリング機能が、ラインを保持しようと努めてくれる。
ブレーキには少しの改善を求めたい。回生ブレーキと摩擦ブレーキとの移行が完全にはスムーズではない。減速の不自然さを抑えるには、細かなペダルワークが必要となる。CVTの状態によっては、意図した以上に強くブレーキが掛かるところもあるようだ。
クーガは先代までのダイナミクス性能を失うことなく、洗練性と快適性、環境性能を高めてきた。指摘するのなら、フォードの狙っているプレミアム感が、インテリアでうまく表現できていないところ。
英国の場合、価格の安いガソリンエンジン・モデルの方が、強い支持を得るかもしれない。しかしPHEVのライバルSUVで比べれば、ドライバーが得られる楽しさは、明確にフォード・クーガの方が一枚上手だ。
フォード・クーガ2.5PHEV STラインのスペック
価格:3万5195ポンド(475万円)
全長:4614mm
全幅:1883mm
全高:1661mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:9.2秒
燃費:71.4km/L
CO2排出量:32g/km
乾燥重量:1844kg
パワートレイン:直列4気筒2488cc+電気モーター
使用燃料:ガソリン
バッテリー:14.4kWh
最高出力:225ps(システム総合)
最大トルク:ー
ギアボックス:CVT
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