現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 4ドアハードトップ最後の佳作!? トヨタ スプリンターマリノの無常 【偉大な生産終了車】

ここから本文です

4ドアハードトップ最後の佳作!? トヨタ スプリンターマリノの無常 【偉大な生産終了車】

掲載 更新 14
4ドアハードトップ最後の佳作!? トヨタ スプリンターマリノの無常 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

【クルマの価値観が大きく変わる!?】激増中!! 話題の月額定額サービス 損と得

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ スプリンターマリノ(1992-1998)をご紹介します。

●【画像ギャラリー】遅すぎた!? それとも早すぎた!!? 日欧の4ドアHTブームの狭間に生まれたスプリンターマリノをギャラリーでチェック!!

文:伊達軍曹/写真:TOYOTA

■7代目スプリンターから生まれた4ドア・ハードトップのスポーティセダン


 1985年発売の初代トヨタ カリーナEDをきっかけに生まれた、「背の低い4ドアハードトップ」ブーム。そのブームの比較的終盤に近い1992年に同門のトヨタから登場したものの、時代の移り変わり=RVブームの勃興により販売は低迷。

 そして一度もフルモデルチェンジされることなく消えていった、今にして思うとなかなかスタイリッシュな4ドア車。

 それが、トヨタ スプリンターマリノです。

カリーナED(1985-1998)に続くトヨタの4ドアハードトップ車として、1992年、カローラセレスとともに送り出されたスプリンターマリノ

 ピラーレス4ドアハードトップ車のブームを作り上げたカリーナEDは、セリカの車台を使って作られた派生モデルでした。

 それに対してこちらスプリンターマリノおよびカローラセレスの兄弟車は、それよりひと回り小さなカローラ系の車台が使われています。

 ちなみにスプリンターマリノはトヨタオート店扱いで、カローラセレスはカローラ店扱いのモデル。

 両者の違いはフロントまわりとテールレンズのデザインだけでしたが、「スプリンター」のほうが若々しいブランドイメージがあったからでしょうか、当時の若い世代にはスプリンターマリノのほうが人気だったと記憶しています。

カリーナEDがセリカのシャシーを使用したのに対し、セレス・マリノはカローラのそれを使用。セレスとの違いはフロントとリアの若干のデザインに留まる

 搭載エンジンは1.5Lおよび1.6Lのハイメカツインカムと、スポーティな1.6L 20バルブエンジンである「4A-GE型」の3種類。

 トランスミッションはすべてのグレードに4速ATと5MTが用意され、1997年6月以降の4A-GE搭載グレードのみMTが6速タイプに進化しました。

 スプリンターマリノはスポーティなフォルムの車でしたが、決して「スポーツカー」または「スポーティカー」ではありません。

 そのため、その走行性能やフィールに特筆すべき部分はないのですが、だからと言って「走りがイマイチだった」というわけでもありません。

 当時のスプリンタートレノに近いニュアンスの軽快な走りを普通に堪能できる、普通にまあまあ優秀な4ドアハードトップ車だったのです。

 しかし勃興し始めたRVブームに押されたスプリンターマリノの販売は低迷が続き、1995年に本家のスプリンター/カローラはフルモデルチェンジされたのですが、マリノ/セレスのほうはモデルチェンジをさせてもらえませんでした。

 そのため1995年以降のマリノ/セレスは「エンジンとトランスミッション、サスペンションなどを新型のそれに置き換える」というやり方でお茶を濁しながら販売を続けたのですが、4ドアハードトップというジャンルの凋落は如何ともし難く、1998年10月には販売終了となってしまいました。

■2代目パジェロの出現によって変わった「カッコよさ」の定義

 トヨタ スプリンターマリノが1代限りで生産終了となった理由。

 それは、カリーナEDが絶版となった理由を考察した回でも申し上げましたが、自動車における「カッコいいの基準」が1990年代前半頃、大きく変わったからです。

トヨタにとって初のコンパクトクラスでのハードトップモデルとなったマリノ・セレス。その低い全高を活かし、当時人気だったレース全日本ツーリングカー選手権(JTCC)にも参戦


 初代カリーナEDが登場した1980年代半ばや、カリーナEDの亜流が各社から続々登場した1990年頃(つまりバブル崩壊の頃)までは、一般的な男衆にとってカッコいいと思える車は「背が低くて速そうなやつ」でした。

 流線型の車でビュンビュン走ること。そしてそれを可能にするドラテクを有していることが、「カッコいい男の条件」だったのです。

 しかし1991年に2代目の三菱パジェロが登場したあたりから世の中の風向きは変わりました。

 背が低い車で華麗なドラテクを披露するのはどこかオタクくさくてカッコ悪い。それよりも、日焼けした身体でパジェロとかに乗って、家族や恋人とキャンプ場などまでゆったり走る。

 そして薪で上手に火を起こし、肉をおいしく焼ける男のほうがカッコいいよね――的な変化が生じたのです。

 そして1990年代も半ばになると世の中のRV志向はより強まっていきましたので、そうなると「背が低くて、なおかつカローラ系の車台ゆえ小さいから、多人数は乗りづらい」というスプリンターマリノやカローラセレスの出る幕はありませんでした。

4ドアハードトップがウケた理由が、居住性を犠牲にしてでも全高を抑えたことで得たスタリッシュさであったなら、勃興したRVのウケた理由の一つとして、その居住性の良さが上げられるだろう。ユーザーが「使い勝手」に目を向けた時点で、4ドアハードトップの終焉は必然だったのかもしれない

 このような流れでスプリンターマリノの販売は生産終了となったわけですが、当時ボロクソに言われていたほどには、スプリンターマリノは悪い車ではなかったと考えます。

 前述のとおり、2ドアクーペであった当時のスプリンタートレノに近いニュアンスでまあまあ気持ちよく走れましたし、「それでいてドアはいちおう4枚付いてる」というのは、ある種の人にとってはドンピシャだったでしょう。

 また当時の評論家から居住性の悪さについて酷評されましたが、居住性に関する感じ方なんてのは「人それぞれ」です。

 正統派セダンと比べるなら、確かにマリノ/セレスの背の低さは致命的です。しかし4ドア車を選ぶ人間のすべてが「常に後席に人を乗せている」というわけではありません。

「後席はたまにしか使わない。でもやっぱり2ドアより4ドアを買いたいな」という人だっていたはずです。

 そういった人々にとっては、当時の評論家の意見はひたすらナンセンスに聴こえたことでしょう。

 とはいえ自動車メーカーは趣味ではなくビジネスとして車を作っていますので、売れなかった車=会社に利益をもたらすことができなかった車種について今さら何を言ったところで、寝言か言い訳にしかなりません。

 スプリンターマリノが不人気のため生産終了となってから十数年後、ご承知のとおりヨーロッパでは皮肉にも「背が低めな4ドアクーペ」の大ブームが起こりました。しかし「それはそれ、これはこれ」ということで、スプリンターマリノとはあまり(ほとんど)関係ないのでしょう。

■トヨタ スプリンターマリノ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4385mm×1695mm×1310mm
・ホイールベース:2465mm
・車重:1100kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1587cc 
・最高出力:160ps/7400rpm
・最大トルク:16.5kg-m/5200rpm
・燃費:12.2km/L(10・15 モード)
・価格:176万円(1992年式Gタイプ 5MT)

●【画像ギャラリー】遅すぎた!? それとも早すぎた!!? 日欧の4ドアHTブームの狭間に生まれたスプリンターマリノをギャラリーでチェック!! 

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

外環‐成田の最短路「北千葉道路」の計画が一歩前進! “起点JCT”から伸びる区間に動きアリ 今どうなってる?
外環‐成田の最短路「北千葉道路」の計画が一歩前進! “起点JCT”から伸びる区間に動きアリ 今どうなってる?
乗りものニュース
「120万円」以上安い! トヨタ新「“8人乗り”アルファード」に大反響! 「最上級モデルの“半額以下”はオトク」「カッコイイ」「黒内装ステキ」の声! 最廉価の「Xグレード」に熱視線!
「120万円」以上安い! トヨタ新「“8人乗り”アルファード」に大反響! 「最上級モデルの“半額以下”はオトク」「カッコイイ」「黒内装ステキ」の声! 最廉価の「Xグレード」に熱視線!
くるまのニュース
BMW「アートカー」をペイントした職人が手掛けたスペシャルな「M1」が存在した! オークションで約7700万円で落札された特別な1台を紹介します
BMW「アートカー」をペイントした職人が手掛けたスペシャルな「M1」が存在した! オークションで約7700万円で落札された特別な1台を紹介します
Auto Messe Web
2025年躍進の吉兆か? 鈴鹿テストで好タイム連発のスリーボンド三宅淳詞、かつてない感触に高揚「これぞスーパーフォーミュラだ」
2025年躍進の吉兆か? 鈴鹿テストで好タイム連発のスリーボンド三宅淳詞、かつてない感触に高揚「これぞスーパーフォーミュラだ」
motorsport.com 日本版
【このエリーゼなんぼ?】ロータスらしい軽量+俊敏なサスペンション+ミッドシップの「ロータス エリーゼ クラブレーサー」販売中!
【このエリーゼなんぼ?】ロータスらしい軽量+俊敏なサスペンション+ミッドシップの「ロータス エリーゼ クラブレーサー」販売中!
AutoBild Japan
【5年ぶりの開催】苗場スキー場のゲレンデをスバル車で駆け上がる体験 「スバル・ゲレンデタクシー2025」
【5年ぶりの開催】苗場スキー場のゲレンデをスバル車で駆け上がる体験 「スバル・ゲレンデタクシー2025」
AUTOCAR JAPAN
あの“スズキ”がアフターパーツのイベントへ初出展!「ユーザーの声を直接聞きたい」理由…DAMD PARTY 2024
あの“スズキ”がアフターパーツのイベントへ初出展!「ユーザーの声を直接聞きたい」理由…DAMD PARTY 2024
レスポンス
GM キャデラックリリックの発売に先駆け、先行情報が得られる事前情報希望者登録を募集
GM キャデラックリリックの発売に先駆け、先行情報が得られる事前情報希望者登録を募集
Auto Prove
シボレー コルベット2025モデルはさまざまな選択肢の拡大で特別な一台を作る
シボレー コルベット2025モデルはさまざまな選択肢の拡大で特別な一台を作る
Auto Prove
まだ装着してないの? 「雪降り始めたよ?」 覚えておきたい「冬タイヤ」の違い! イマ「履くべきタイヤ」とは
まだ装着してないの? 「雪降り始めたよ?」 覚えておきたい「冬タイヤ」の違い! イマ「履くべきタイヤ」とは
くるまのニュース
新型バッテリー電気コンパクトSUV! トヨタが新型アーバンクルーザーを世界初公開
新型バッテリー電気コンパクトSUV! トヨタが新型アーバンクルーザーを世界初公開
バイクのニュース
マジで「その要求」は無理っす……レンタカー店スタッフが実際に遭遇した迷惑客3選
マジで「その要求」は無理っす……レンタカー店スタッフが実際に遭遇した迷惑客3選
ベストカーWeb
われわれが楽しくモノづくりをすることで良い製品ができ、使う人の生活に楽しみと豊かさを提供できると思っています【株式会社 昭和トラスト 取締役 副社長 飯岡智恵子氏:TOP interview】
われわれが楽しくモノづくりをすることで良い製品ができ、使う人の生活に楽しみと豊かさを提供できると思っています【株式会社 昭和トラスト 取締役 副社長 飯岡智恵子氏:TOP interview】
Auto Messe Web
2025最新版《アルファード&ヴェルファイア》ズバリ! “買い”のポイント
2025最新版《アルファード&ヴェルファイア》ズバリ! “買い”のポイント
グーネット
ヴィンテージ・デニムの風合いで個性をアピール!日産の人気6モデルに特別仕様「ビームスエディション」が誕生
ヴィンテージ・デニムの風合いで個性をアピール!日産の人気6モデルに特別仕様「ビームスエディション」が誕生
Webモーターマガジン
12/28(土)THE MOTOR WEEKLY 放送予告!
12/28(土)THE MOTOR WEEKLY 放送予告!
Auto Prove
ホンダ『プレリュード』、米国でも25年ぶりに復活へ…次世代ハイブリッド車として2025年投入
ホンダ『プレリュード』、米国でも25年ぶりに復活へ…次世代ハイブリッド車として2025年投入
レスポンス
「えっ…!」この道「ウインカー」出す? 出さない? 真っ直ぐも行ける「道なりカーブ」どうする!? 「正解」の曲がり方とは
「えっ…!」この道「ウインカー」出す? 出さない? 真っ直ぐも行ける「道なりカーブ」どうする!? 「正解」の曲がり方とは
くるまのニュース

みんなのコメント

14件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

129.0185.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

48.0118.0万円

中古車を検索
スプリンターマリノの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

129.0185.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

48.0118.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村