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日産がプラグインハイブリッド車「自社開発」に踏み切ったワケ e-POWERとの親和性に勝機はあるのか?

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日産がプラグインハイブリッド車「自社開発」に踏み切ったワケ e-POWERとの親和性に勝機はあるのか?

自社開発で挑むPHV

 日本経済新聞は9月23日、日産自動車がプラグインハイブリッド車(PHV)を自社開発する方針を報じた。

「EV」が日本で普及しない超シンプルな理由 航続距離? 充電インフラ? いやいや違います

 早ければ2020年代後半までに技術を確立する見通しで、需要の動向を見ながら準備を進めていく。具体的には、日産のハイブリッド技術に充電器を取り付けるなどの改良を行ってPHVを開発するという。

 日産は長期ビジョン「日産アンビション2030」(2021年11月発表)に基づき、電動化を推進している。2023年2月末に発表されたアップデート版では、2030年までに投入する電動車モデル数を

「27車種(そのうち電気自動車〈EV〉は約70%の19車種)」

世界の電動車モデルのミックスを55%以上、欧州におけるアライアンス強化などを掲げている。

 日産のPHV自社開発が「日産アンビション2030」にどのような影響を与えるのかは興味深い点だ。本稿では、日産がPHVを自社開発する決断の背景や、ターゲット市場について考える。

e-POWERとPHVの親和性

 日産がPHVの自社開発を選んだ背景には、ハイブリッド技術「e-POWER」とPHVの親和性がある。e-POWERは、エンジンを発電専用とし、電気モーターによる駆動力のみで車両を走行させるのが特長だ。これに対して、トヨタなどのハイブリッド車はエンジンと電気モーターのいずれか、または両方を作動させて走行するため、両者には大きな違いがある。

 e-POWERは、バッテリーが減るとエンジンが自動的に作動して発電するため、外部充電は不要だ。蓄電された電力でモーターが作動し、モーターのみで走行するので、EVに近い走行感覚が得られる。

 一方PHVはエンジンと電動モーターの組み合わせとなるが、バッテリーを外部電源から充電する必要がある。PHVにはふたつの走行モードがあり、バッテリーのみで走行する電動モードでは、充電が減るとエンジンが自動的に作動して蓄電する。ハイブリッドモードでは、ガソリンやディーゼルのエンジンで走行しながら、バッテリーにも充電が可能だ。

 以上から、PHVとe-POWER EVの共通点として、いずれもエンジンをバッテリー充電に使用していることが挙げられる。ほかにも、エンジン車よりも燃費効率に優れており、EVよりも航続距離が長くなるといったメリットも共通している。

自社開発PHVの展望

 日経新聞が報道した自社開発PHVは「ハイブリッド車に充電器を取り付ける」という点について、日産はe-POWERシステムのバッテリーを外部電源から充電できるように応用し、PHVに改良するものと考えられる。

 改良にはバッテリーを大容量にする必要があるが、技術的なハードルはそれほど高くないと考えられ、これが日産がPHVの自社開発に踏み切った背景のひとつだ。

 日産とアライアンス関係にある三菱自動車は、アウトランダーとエクリプスクロスの2車種にPHVをラインアップしている。2026年度から北米で販売されるモデルに搭載予定のPHV技術は三菱自から供与される見通しだが、将来的には自社開発に一本化されるだろう。

 また、日産と東風汽車公司(中国)による合弁会社「東風汽車有限公司」は、日産から電動車の技術開発を移管し、EVとPHVの迅速な開発・生産を目指している。

 このPHV技術を活用する選択肢もあるが、日産があえて自社開発を選んだのは、e-POWERをベースとする自社開発に勝機を見いだしたからだろう。

PHVで狙う市場

 日産が新たに投入するPHVは、どの市場を狙っているのだろうか。PHVは、

・EV充電インフラが十分に整っていない国や地域
・長距離移動のニーズ

に対して魅力的な選択肢になる。

 日産の地域別売上比率(2024年3月期)は、

・欧州:18%
・アジア:9%

とそれほど高くないが、これらの地域では排ガス規制が厳しく、燃費性能を重視した技術開発が求められている。そのため、PHVが魅力的な選択肢となる可能性がある。

 日産は2023年9月に、欧州市場に投入するすべての新型車を2030年までにEVにすると発表したが、これを撤回してPHVを投入する可能性も考えられる。新たに投入するPHVの車種には、エクストレイルやキックス、ローグなどのスポーツタイプ多目的車(SUV)や、新型セレナといったミニバンのラインアップが含まれるだろう。

 世界的にPHVの需要が高まるなか、各社から新モデルや新たなPHVシステムが投入される可能性が高い。特に注目すべきは、中国の比亜迪(BYD)である。2024年4月に開催された北京モーターショーでは、第5世代PHVシステム「DM-i」が発表され、46%という世界最高水準の熱効率を達成し、航続距離は2100kmを超えている。

 中国のスタートアップやテクノロジー市場について報じる36Kr Japanによると、BYDの2024年8月の乗用車販売台数は前年同月比35%増の37万854台に達した。このうちPHVの販売比率は60%となり、BEVの40%を上回った。2024年6月から販売を開始したミッドサイズセダン「秦(Qin) L DM-i」と「Seal 06 DM-i」が、PHVの販売増を牽引している。

 日産は今後、競争が激しくなるPHV市場で他社との差別化を図る必要がある。特に、航続距離や燃費性能などで技術的な優位性をアピールすることが、自社開発において重要なポイントとなる。

「中継役」としてのPHV

 英調査会社「RHO MOTION」は2024年7月、2024年上半期(1~6月)の世界EV販売台数を発表した。データによると、バッテリー電気自動車とPHVの比率は、2023年の72%/28%から2024年は

「65%/35%」

に変化し、PHVの比率が7ポイント上昇した。

 世界的にEVの普及が減速しているなかで、ガソリン車からEVへの

「中継役」

としてPHVへの関心が高まっている。各国のカーボンニュートラル政策の変化や消費者のニーズに応じて、PHVの需要は今後も増加すると予想される。PHVはその柔軟性により、持続可能な選択肢として残る可能性がある。

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みんなのコメント

23件
  • わじ
    それぞれの得意を活かして上手くやってくださいね。でないとアライアンスの意味がありません。日産、三菱両社の株主より。
  • キュウちゃん
    日産が、三菱のPHEV技術を自社のクルマに応用せず、自社開発を決意したのはエンジンとモーター、それに決定的に重いバッテリーを積むことで重量増がネックになることで、事実、アウトランダーは2トンを優に上回る。同じエンジンを積むエクリプスクロスも1.9トン越え。それぞれ100Kg以上の軽量化が望まれる。
     小排気量のエンジンとE-POWERの技術で、その課題を解決できればグッドな話。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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