日産の特装車メーカーとして1986年に創業! 初代社長はスカイラインの父、櫻井眞一郎氏
オーテックジャパン(オーテック・テクノロジィinジャパンの略。以下オーテック)はクルマの多様化と個性化に対応するために、カーアクションTVドラマ「西部警察」に登場する特殊車両の製作を請け負ってきた日産プリンス自動車販売の特販推進室の業務を譲り受け、1986年10月に神奈川県茅ケ崎市に設立された特装車製造会社だ。初代社長はスカイラインの父で職人気質の技術者として日産のみならず、自動車業界に名を轟かせた「櫻井眞一郎」氏であることは周知の事実だ。
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カスタムカーだけれど、製造や保証は通常の市販車と同じな安心感
オーテックは皆さんご存じのカスタマイズカーに加え、福祉車両、商用特装車(保冷車やダンプなど)の車両開発・販売がメイン事業。
その他にあまり知られていないが日産のレース用エンジン(グループCからスーパーGTまで)の開発も手掛けている。創業当初はユーザーからの個別オーダーに応えることも視野にいれていたレストア部門も存在。ボディのリメイクやワンオフ製作の高度な技術を学ぶためにイタリアのカロッツェリアのひとつであるザガートと提携していた(2代目レパードをベースにカスタマイズされた“オーテック・ザガート・ステルビオ”はこのプロジェクトの第1弾)。 簡単に言えば既製服(市販車)をオーダーメイドに近い注文服に仕上げるユーザーファーストなカスタムカーの提供(日本における本格的なカロッツエリア)も計画されていたが、自動車メーカーとしては保証を含めて考えると展開は難しく、1995年6月に桜井眞一郎氏が独立創業したS&Sエンジニアリングに譲渡されている。
オーテックのカスタマイズの基本コンセプトは「誰もが安心して手に入れられ、普段乗れる、ちょっと特別な日産車」。ほとんどの車種が日産の製造ラインからラインオフされ、ディーラーにて購入可能であり、保証もすべて量産車と同じなのが特徴だ。
市販カスタムカーのマーケット投入はNISMOのほうが歴史は古い
今では多くの自動車メーカーや関連企業がワークス系カスタムカーをリリースしているが、オーテック設立当初はカスタマイズカー=改造車。違法なクルマを製造しているというイメージも強かったようだ。
それでもスカイライン、シルビアなどのオーテック仕様やもともとはオーテックの企画だが、日産からのオファーにより正規カタログモデル化したハイウェイスターなどカスタマイズカーを継続して製造してきたこと、さらに1995年に制定された車両法の規制緩和などによって消費者のカスマイズカーに対する認識も変わり、今ではスポーツモデルだけでなく、ミニバンやコンパクトカーまで幅広い車種を手掛けている。
一方のNISMOは1985年に5代目サニーに、1987年には7代目スカイラインにメーカー製造ラインを使ったNISMO仕様が発売されたが、本格的に手が加えられたコンプリートカー製造・販売は1994年の270Rが最初。そして、1996年に400Rを販売するが、これはあくまでも少量生産の後架装車であり、保証もメーカーではなく、NISMO独自のものに変更されるなど、マニア向けの商品。1990年代は同じファクトリーカスタムでもコンセプトや製造方法などはまったく異なっていた。
ピュアスポーツのNISMO、プレミアムスポーツのAUTECH
そして現在、NISMOとオーテック両メーカーのコンプリートカーはオーテックで開発されている。その証にNISMOコンプリートカーにAUTECHのステッカーやプレートを確認することできるはずだ。オーテックがNISMO仕様を手掛け始めたのは2007年のZ33型フェアレディZのバージョンNISMOからで、2013年からは現在のNISMOロードカーの開発も支援。そして、NISMOロードカーのグローバル販売拡大のため、2017年にオーテック内に「NISMOカーズ事業部」が設立されたことで、商品企画から開発までをオーテックが受け持つこととなった。
NISMOカーズ事業部と同時に「ブランドダイレクターオフィス」も新設。この部門の設立によって、スポーティ&パフォーマンスというイメージをもつ2つのブランドはモータースポーツのDNAを継承する「ピュアスポーツ」なNISMOとスポーツなテイストはNISMOと共通だが、特装車作りで蓄積されてきたこだわりのクルマ作りを活かした「上質で快適なスポーツ」を目指すAUTECH(これまでのオーテックバージョンではなく、NISMO同様にブランドを明確に打ち出すネーミングを採用)とカスタムカーの方向性が棲み分けされたことで、ブランドの存在価値が明確となったのは一般ユーザーにとって喜ばしい限りだ。
オーテックらしいマニアを唸らせるマシン製造の継続に期待!
ただ、コンプリートカーの基準が明確化され、AUTECHとひと目でわかる良質かつ、完成度の高いモデルがリリースされるのは好ましいことだが、これまでのオーテックが節目節目に販売してきた技術の集大成といえるコンプリートカーは今後もリリースされるのか、は気になるところ。 古くからオーテックを知るクルマ好きならば、ボレロA30のような見るだけでワクワク、ドキドキできる特別なモデルに期待しているはず!
特にGT-RやフェアレディZといったスポーツカーを、今のオーテックならどのように味付けをするのか、興味津々である。欧州スポーツカーに負けるとも劣らない上質なプレミアムスポーツが登場するとなれば、心が高ぶるのはきっと筆者だけではないはずだ。妥協なき技術者であった櫻井眞一郎氏が設立した特装メーカーの職人魂が永遠であることを切に願う!
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