TEAM MUGENのワン・ツー、フロントロウ独占という形で予選日を終えた全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦SUGO。ポールポジションの野尻智紀は、3番手に対してコンマ3秒近い差をつけた。接戦のスーパーフォーミュラ、そして1周が3.5kmと短いスポーツランドSUGOにおいては、少なくないギャップとも言える。
予選後の記者会見では、3番手となった坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)も「トップ2にはちょっと遠いのかなという感じはある」と発言しているが、実際にTEAM MUGENを追いかける立場からはどう見えるのか。23日の決勝では追う立場となる坪井、そして予選4番手でセカンドロウに並ぶ牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に話を聞いた。
フロントロウ独占の裏に“共闘”アリ。TEAM MUGEN陣営が振り返るそれぞれのアジャスト/第3戦予選
■「ステップはかなり踏めている」坪井
今季、VANTELIN TEAM TOM’Sに移籍加入した坪井。昨年、宮田莉朋がタイトルを獲得したパッケージとあり期待が高まるなか、「開幕戦は酷すぎた」(坪井)ものの、前戦オートポリスでは表彰台を獲得と、新しい環境で徐々に調子を上げてきている印象だ。
新しいチーム、新しいエンジニアを組むなかで、徐々にコミュニケーションが深まってきた、と坪井は“右肩上がり”の背景を説明する。
「言葉のニュアンスの面など、コミュニケーションがしっかりと煮詰まってきて、僕が欲しいところを理解してくれるようになったというか。そのあたりがうまくできて、しっかりとQ1からQ2にかけていいステップを踏めるようになってきた。それで今回、トヨタ勢最上位という結果をとれたのかなと思います」
「でも上を見るとMUGENがいるので、そこをやっぱり倒さないと。やれることはたくさんあるのかなと思いますけど、ステップはかなり踏めていると思うので、そこを焦って崩さないように、自分たちができることをしっかりやっていければいいかなと思います」
坪井がMUGENの強さのひとつとして指摘するのが、野尻のフリー走行から予選への“上げ幅”だ。朝のフリー走行を15番手で終えていた野尻だったが、予選Q1・Aグループでトップタイムをマークする飛躍ぶりを見せた。
「そこの上げ幅は尋常じゃないので、そういうところの強さを垣間見たかなと感じています」
その背景として、MUGENの2台での共闘体制についても坪井は言及する。「2台そろってデータを共有しながら、いい部分を吸収する」、それが上位進出のカギとなるという。
「もう何年も前から、MUGENの底力みたいなものはすごい感じていましたが、今回はそれがすごい露骨に出たのかなと。会見で野尻選手も言っていましたが、15号車を参考にしてすぐに結果が出るくらいのパフォーマンスを出せる“何か”があるということなので、僕らとしてもそのあたりを見つけられれば、もうちょっと高いパフォーマンスを出せると思います。その何かを、頑張って見つけたいなと思います」
■「良かったときに囚われすぎるのも良くない」と牧野
一方、予選4番手となった牧野も、前戦オートポリスで初優勝。SUGOに入る前の段階ではランキング首位に立っており、初優勝の勢いをシーズン中盤戦につなげたいところだ。
「結果的に4番手でしたが、『ギリギリ間に合ったな』という感じです」と牧野は予選を振り返る。
SUGOでは、朝のフリー走行から想定どおりのフィーリングが得られず、「単純にちょっとグリップしていなかった」という。初優勝を遂げたオートポリスから「正直、そんなにセットアップは大きく変わらないかなと思っていたんですけど、タラレバではありますが、ちょっとそっちに引っ張られすぎてしまったのかもしれない」と牧野は明かす。
また、チームメイトの太田格之進がフリー走行序盤にしてトラブルからクラッシュを喫したことで、「2台で違うこと(を試す)とかができなかったので」と、チームとして“共闘”がかなわなかったことも、ディスアドバンテージとなったようだ。
Q1・Bグループを6番手とギリギリで通過した牧野陣営は、ここでセットアップの方針を転換。それがいい方向に作用し、Q2では1秒近いタイムアップを実現、4番手に滑り込むことに成功した。背景は異なるものの、Q1からの好ステップという意味では、坪井と似た状況にあったと言える。
「良かったときに囚われすぎるのも良くないな、と改めて思いました」と牧野。Q2のセットアップの方向性は「今後に向けても大事な収穫」だといい、初優勝を経て依然上位で戦える姿勢を示した。
今回の予選でのTEAM MUGENのパフォーマンスについて牧野は「もともと速かったですし、とくにこのSUGOは速いイメージはありますが、そのなかでも(野尻から)コンマ4秒は、ちょっと大きい」との認識を語る。「ただ、決勝はまた全然別だと思うので、ドライにせよ、ウエットにせよ、いいレースができるんじゃないかと思います」と自信を見せる。
右肩上がりのパフォーマンスを見せる坪井、そして前戦優勝からの流れをうまくコントロールしつつある牧野。23日の決勝では、このふたりがフロントロウのTEAM MUGEN勢にどう挑むのかも、大きな注目ポイントとなる。
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