前戦で2024年のタイトル争いが終焉を迎えたアルゼンチン最高峰のFFツーリングカー選手権TC2000の第11戦が、コルドバのオスカー・カバレン・アウトドローモで開催され、公式練習ではふたたびTOYOTA GAZOO Racing YPFインフィニアのマティアス・ロッシとマルセロ・チャロッキ(トヨタ・カローラTC2000)が先行したものの、予選と決勝両ヒートではルノー陣営のアクシオン・エナジー・スポーツが勝負を支配することに。
すでに2019年と、2022年、2023年に続く3連覇で自身4度目のシリーズチャンピオンを決めている王者リオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)が今季8度目のポールポジションを獲得すると、シーズン終盤で覚醒状態に入っている僚友ファクンド・アルドリゲッティ(ルノー・フルーエンスGT)の83号車が連勝を飾る結果となっている。
予選最速のトヨタ、マティアス・ロッシは届かず。王者リオネル・ペーニャが3連覇達成/TC2000第10戦
隣国ブラジルの最高峰ストックカーと同様に、南米が誇るハイテクFFツーリングカー選手権を標榜する同シリーズも、従前より段階的な次世代モデルへの移行を表明しており、すでに新型SUVモデルの開発テストが進行している。
その最新セッションが第11戦のレースウイークを前に実施され、小型クーペSUV『VW Nivus SUV(フォルクスワーゲン・ニーヴァス)』をベースとした先行開発車両“プロトタイプ001”に続き、シボレー陣営のYPFエライオン・オーロ・プロ・レーシングが走らせる『シボレー・トラッカー』も初めて合同テストに姿を見せた。
エースを務めるダミアン・フィネンチ(シボレーYPFクルーズ)に加え、ルノーからは王者ペーニャとアルドリゲッティ、トヨタからはチャロッキ(初期段階からVWの開発テスターを担当)ら多くのレギュラードライバーが参加した走行枠では、世代交代を果たす新規定車両の詳細として、改めて「5気筒」の「5000PS級エンジン」が搭載されていることが明かされた。
今回のテストでは、開発担当エンジニアが「より多くの可能性を秘めたエンジンで、進化し続けるよう取り組んでいる」と説明するように、その5気筒エンジンと空力負荷の両方の挙動と進化に関するデータを取得。公式タイヤサプライヤーであるピレリは、パフォーマンスを大幅に向上させる2種類の新しいコンパウンドを導入した。
「我々はトルコから輸入したソフトとミディアムのコンパウンドを持ち込んだ。それらはヨーロッパのGT4で使用されているものだ。テストではこのスタイルの車両がトラック上でどのように動作し、タイヤがどのような影響を受けるかを分析するのに役立ち、結果は肯定的だったね」と語るのは、ピレリ・アルゼンチンのマネージャーを務めるカルロス・リークマン。
昨季2023年11月のロールアウト以降、ここまで都合7回の開発テストでニーヴァスSUVをドライブしてきたチャロッキも「シボレー・トラッカーは僕がここ数年で運転したなかでもっとも速いクルマだ」と、その感触に太鼓判を押した。
「加速した際に、この体感で前輪が引っ張っていくのはスゴいことだ。5気筒エンジンのパワーと進化は非常に顕著かつ印象的だね。新しいタイヤコンパウンドも、このSUVに非常によく合っていたよ」
■アクシデント発生もアルドリゲッティが両決勝を制覇
同じく自身の持つ史上最年長王者記録を更新したばかりのペーニャも、公式テスターの意見に同調するコメントを残した。
「新型SUVをスタートさせると、現在のTC2000とは異なるアドレナリンを感じ始めた。オスカー・カバレンのストレートで加速したときのエンジンのパワーと音には驚いたね。過去数シーズンに限らず、このSUVは僕がレースキャリアで運転したなかでもっとも速いクルマだと言えるよ」
こうして迎えた週末は、FP1では117号車のカローラを操るロッシが、僚友の25号車チャロッキを従えTGR陣営のワン・ツーで走り出しを決めると、続くFP2では前後を入れ替えての連続トップタイムと好調さを披露する。
しかし予選もQ2に入るとやはりルノー陣営が眼前に立ちはだかり、そこまでトップタイムを記録していたチャロッキに対し、最終ラップでペーニャの1号車フルーエンスGTが華麗なフライングラップを決め、2台のカローラを退けるキャリア通算37回目の最前列グリッド獲得となった。
現地18時15分開始の20分+1周で争われるレース1は、インバーテッドグリッド規則によりアルドリゲッティが僚友フィゴ・ベッソーネを従えホールショット。背後ではYPFホンダRVレーシングのフランコ・ヴィヴィアン(ホンダ・シビックTC2000)や、カローラ25号車のチャロッキらが接触バトルを繰り広げる一方、最終的にこのバトルに乗じたアルドリゲッティが、シボレーのフィネンチとホンダのヴィヴィアンを従えトップチェッカーを受ける。
しかし決勝終了後、スポーツコミッショナーは各車に搭載された複数のインカー映像を解析し、アクシデントの当事者となったフィネンチとヴィヴィアンにペナルティ裁定を課し、表彰台の最終結果が変更に。改めて2位にベルナルド・ラヴァー(ホンダ・シビックTC2000)、3位には中南米ルーキーカップ登録で戦うディレクTV OCASAレーシングの85号車、ティアゴ・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)が続くリザルトへと変わる。
明けた日曜も首位アルドリゲッティの優位は揺らがず。オープニング早々にクラッシュに見舞われたフィネンチがトップ10圏内から離脱し、エンジン温度問題でペースダウンを強いられた王者ペーニャを横目に、ホンダのラヴァーを攻略した“チャンピオンの息子”ティアゴが2番手に浮上し、やはりルノー陣営がワン・ツーの体制を固めていく。
終盤はTGRのエースを務めるロッシが、僚友チャロッキとホンダの1台を仕留めて最後の表彰台スポットを奪取したものの、前方のフルーエンスGT艦隊を捉えるまでには至らず。アルドリゲッティが両日の決勝を制覇して週末を締め括った。
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