限られた予算と体制ながら、それでも夢に挑む
アメリカ・コロラド州、パイクスピーク・ハイウェイを舞台に、現地時間の6月24日に決勝を迎える「第96回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(パイクスピーク)」。昨年佐藤琢磨選手が優勝したことでおなじみのインディアナポリス500マイルレース(1914年から続く歴史あるレース)に次ぐ、2番目に古いレースである。このパイクスピークには、今回4名の日本人ドライバー&ライダーが参戦する。
「日本一速い男」に「モンスター」異名で知られる偉大なレーシングドライバーたち
ここでは、この4名を紹介していこうと思う。その第一回目となるのが、4輪で今回初参戦となるのが、小林昭雄選手だ。
小林選手は、クローバーターボというIHI系グループ会社に勤めている。レース活動を続けながら働くサラリーマン。学生時代からダートトライアル(ダートラ)などに参戦している。少しマイナーなレースイベントのため、あまりメジャーなイメージはない。しかし、戦績を見てみるとこれがなかなか。モンタジことモンスター田嶋(田嶋伸博)選手も参戦したことのある、ニュージーランドで開催されていた「レース・トゥ・ザ・スカイ」では、上位入賞を何度も果たしているし、全日本ダートラでも成績を残している。
近年は、長野県内で開催されるBRIGヒルクライムチャレンジシリーズに参戦中。これは、木曽御岳周辺で行われている、まさにヒルクライムイベントで、スノー(雪道)やターマック(舗装路)でのイベントとなっているが、これのオープンCクラスに、ランエボやポルシェで参戦をしている。
もちろん、モンスター田嶋選手も参戦するパイクスピークには、学生時代から興味を持っていた。ニュージーランドでの「レース・トゥ・ザ・スカイ」への参戦も果たし、この御岳などのヒルクライムイベントの関係者とも、「いつかは本家パイクスピークに行ってみたいよね」という、ヒルクライムというつながりから参戦を検討していたという。
ゼッケンの意味は、2人の49歳
「一度視察に行こう」というところから、話はスタートしたようだ。どうせならエントリーもしてみよう、ということで2017年11月、エントリーを申し込んだ。結果は補欠。しかし、年が明けて2018年1月末、補欠から正式リストに格上げとなった。
参戦車両は、ポルシェ996 GT3、参戦クラスはタイムアタック1となる。ゼッケンは249である。
様子見のつもりが、まさかの本参戦となり、慌てて準備をすることとなった。まったく準備を進めていなかったわけではないが、いざ参戦となるとそうそう簡単に物事が進むわけもない。2012年から全面ターマックとなったパイクスピークを実際に走るとなれば、当初参戦予定で考えていたランエボよりもポルシェのほうが良いのではという判断で車両変更、そしてパイクスピーク・オープンからタイムアタック1へとクラス変更も行うなど、バタバタが続く。
さらに、安全面を考慮したロールケージはパイクスピーク独特のレギュレーションが存在しており、通常のレース車両とは異なる車両づくりが要求されている。そのため、このタイミングで新しくロールケージを作ることとなった。その突貫工事で進められている参戦車両のシェイクダウンが4月中旬。そしてすぐにアメリカに向けてクルマを送り出さなければならない。
その参戦マシンをメインで手掛けるのが、長野県伊那にあるK’s FACTORY。このBRIGヒルクライムチャレンジシリーズを仕掛け、また、競技車両の製作やメンテナンスも行うショップである。ちなみにゼッケンは、このK’s FACTORYの鈴木一也代表と小林選手がともに1969年生まれの今年49歳になるペアであることから、つけられたゼッケンである。
突然「長年の夢が突然叶ってしまった」という小林選手。エンジンはほぼノーマルのままのポルシェで出走となりそうだ。今回まず様子を見て、作戦を練り、今後のさらなる挑戦となるか? とりあえずは今年の活躍に期待したいところだ。
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