ブランドごとのキャラクター
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
パフォーマンスカーを定義する要素は、なによりもそのクルマがどのような走りをみせるかだ。
ロータスであれば繊細でシンプル、そしてアナログであることがコアになる。ポルシェにも似たところはあるが、一般的によりパワフルで特異なところがみられ、手応えがずっしりしている。
速いジャガーは、道に沿って漂うような乗り心地をみせる。フェラーリはダイレクトそのもの。ドライバーの足元が回るようだ。フォードの速いモデルも同じだが、そのやり方はだいぶ違う。
では、BMW Mはどうか。張り詰めていて、精密であることは、どちらも運動性のキャラクターに必須の要件だ。大きなクルマから小さなクルマまで、Mモデルはパワフルだがレスポンスに優れ、すべてがリニアだ。
もっとも速い部類のモデルならかならずしもそうではないが、一般的にある程度の出力過剰傾向がみられる。後輪駆動が大半を占めるなかで、メカニカルなトラクションのレベルを上回るパワーを求めているからだ。オーバーステアは楽しいのが一因だが、それは役に立つものでもある。いや、それこそがまさに狙いだ。
変わるメカニズムと変わらぬ精神
よくできたMモデルは、この上なくコントロールしやすい。クルマがきちんと走ってくれれば、全幅より30cmほど広いだけの間隔で置かれたパイロン2本の真ん中を、ハイスピードで駆け抜けることさえできそうなくらいだ。カウンターステアが必要になっても、ほんの数度だけ切れば済む。
結果として、最新のパフォーマンスカーとして求められるミッションに対して奇妙なほどシリアスで厳格だと感じられるかもしれない。ただし、うんざりさせられることだけは絶対にない。
時を経るにつれ、Mモデルのサイズやメカニズムは変化し続けてきた。エンジンの排気量は拡大して縮小し、ターボ化の是非が問われたこともある。
4WDを採用したモデルも、それを踏みとどまったモデルもあった。また、コンバーティブルやワゴンが加わったり、逆に消えたりもしたし、SAVやSAC、グランクーペといった新顔も登場した。
それでも際立っているのは、MディビジョンがMモデル全体に通じる運動性の核心とフィールを、いかに保ち、また育んできたかという点だ。細かい部分はあちこち調整しても、それ以外は保たれ、あるいは洗練と改良を受け、テンプレートとリファレンスになってきた。そう考えると、なかなかの偉業だと思う。
大幅に変わったM3のメカニズム
では、もしそうでなかったらどうなのか。第6世代となった新型M3コンペティションが、そうしたよき先例を単になぞっただけのものでないのは確かだ。はじめてこのクルマに乗った際、同僚のマット・プライアーは乗り心地のしなやかさを大幅に増した先代M4 GTSのようだと評している。
新規採用したトルクコンバーター式ATは、先代までのDCTよりよくなった。新型の直6ツインターボであるS58型は、中速域の力強さが増し、それでいてよく回り、音も悪くない。
ステアリングは歯切れよく、正確でフィールも十分。あらゆる手段を講じながら、それでも馴染みのあるM3に仕上がっている。それこそBMWの狙い通りだろう。
しかし、それで十分に、Mモデルの定義を、昔ながらの基本に立ち戻らせることができるのか。現代における世界一線級のスーパーセダンたりえるのだろうか。さもなくば、大きく高価になりすぎて、本分を失ってしまっているのだろうか。
最後の質問への答えを探るのには、比較対象が2台必要だった。
相手はV6のアルファとV8のAMG
今回、M3を迎え撃つクルマの1台はわれわれのフェイバリットである小ぶりなスーパーセダン、アルファ・ロメオ ・ジュリア・クアドリフォリオ。もう1台はより大柄な人気モデル、メルセデスAMG E63 Sのフェイスリフト版だ。このV8を積むアウトバーン・エクスプレスがラインナップ落ちしなかったのは、じつに喜ばしい。
フルモデルチェンジしたCクラスには、まだC63 Sを名乗るであろう最強版が設定されていないが、いずれにせよ、ここに加わっても力不足だろう。新型Cクラスは、もはやV8を用意しないという、残念な決定が下されているのだから。
これはM3にとってプラス材料に思える。だが、それによってクラストップを奪還することができるのだろうか。
個人的には、それも十分ありうると思う。否定的な声もあるだろうが、そこはそれぞれが判断すればいい話だ。ソーシャルメディアを見る限りでは、否定的な意見も多いが、それはそれでしかたない。
M4ほど奇抜でないルックス
だが、二日ほど乗ってみた後では、M4よりM3の方がはるかに見栄えのいいクルマだと思えてくる。リアフェンダーに奇妙な造形はみられないし、より自制のきいたデザインで、M4ほど好き嫌いがはっきりすることはなさそうだ。
4シリーズから持ってきたフロントグリルを、それさえなければ見栄えがいいパフォーマンスセダンの顔に張りつけたのは、もちろん理解しがたい判断だ。BMWにいわせれば、Mモデルに必要な冷却性能を得るためということになるのだが、その理由も後付けの言い訳っぽく聞こえる。
ただ、自分でも以前は理解できなかったが、これがなにを目指したクルマなのかわかりはじめてきたように思う。それによって、キドニーグリル問題に関する憤りは、ほんの少しとはいえ穏やかになった。
自分以上に受け入れているひとびとは、この手のアウディやBMWにみられるデザインの傾向をターミネーター的スタイリングなどと呼んでいる。故意にボリュームを増してアグレッシブにした、衝撃と畏怖とでもいった印象をもたらすアプローチだ。好きになれないかもしれないが、それはそれで考えがあってのことなのだろう。
このM3にも、そういったテーマがみて取れるところはある。だが、個人的にはジェームズ・キャメロンとアーノルド・シュワルツェネッガーが組んだ映画より、マイケル・ベイが描いたトランスフォーマーを思い出した。オプティマス・プライムが変形して、BMWになったらこんな感じではないだろうか。
イタリアンデザインの優秀さ
あのグリルと、それを取り囲む膨れ上がったボディパネルをエクステリアに取り込むのもなかなかチャレンジングだ。脳内スイッチを切り替えられるような年齢であれば、まあこれでもしょうがないと思えるだろう。
M3のルックスによさを見出すならば、E63 Sをかなり控えめに見せてしまうことだ。ほとんど目に入らなくなってしまう、といってもいい。しかし、どちらもアルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオの傑出したヴィジュアルの前では、どちらも霞んでしまう。
このジュリアは、新たなライバルが登場した今となっても、4ドアセダンとしてはやはり世界一のイケメンだ。ポルシェ・タイカンさえ敵わないと思う。
どこに出しても恥ずかしくない見栄えのジュリアだが、それだけに、ほか2台のドイツ車と違って、走り重視でクルマ選びをしたようにみられないことも多いだろう。実際に、そういう話はよく耳にする。
ブライトンパークのパドックに置かれたこの3台を前に、あるテスターはこうのたまった。「ルックスのいいクルマを造るのに必要なのはコストじゃないね。デザインがちゃんとできなきゃダメだよ」。
運転環境の秀逸さはBMWの美点
では、BMWがアルファからポイントを取り返せるチャンスはどこか。
まずは、より大きいということだ。ある意味、これは生まれついてのドライバーズカーだが、前後席とも広いスペースを確保している。上位セグメントのE63 Sでさえ、リアシートの広さはM3を大きく凌ぐわけではない。
ドライビングポジションは、この上なくすばらしい。低く、ストレートで、アジャストがとんでもなく効く。
また、徹底したサポートぶりもみごとだ。これは6750ポンド(約95万円)のパッケージオプションを上乗せしないと手に入らないMカーボンバケットシートだけでなく、膝周りや肘周りのキャビン構造そのものによるところも大きい。
インテリアに用いられるマテリアルの高い質感も、アルファに勝る点に数えられる。主なエルゴノミクスは、ジュリアもE63 Sもよくできている。メルセデスはやや高く座らされるが、それでもドライビングポジションは上々だ。ただ、秀逸なBMWのレベルには及ばない。
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