3月17日、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで2023年WEC世界耐久選手権第1戦セブリング1000マイルレースの決勝が行われ、トヨタGAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス)が優勝を飾った。
チームメイトの8号車GR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)が2位に続き、トヨタはワン・ツー・フィニッシュを達成。フェラーリ・AFコルセの50号車フェラーリ499P(アントニオ・フォコ/ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセン)が3位となった。
【順位結果】2023年WEC第1戦セブリング1000マイルレース 決勝
最高峰ハイパーカークラスにキャデラック、フェラーリ、ポルシェら新たなマニュファクチャラーを迎えた“耐久レース新時代”の開幕戦では、予選こそフェラーリ499Pが速さを発揮したものの、決勝のロングディスタンスではディフェンディング・チャンピオンのトヨタがその力を見せつけた形となった。
また、LMGTEアマクラスではケッセル・レーシングの57号車フェラーリ488 GTE Evoが3位に入り、木村武史がWECでは自身初となる表彰台に登壇している。
■苦戦するライバルたちを尻目に、トヨタが強さを発揮
現地時間12時01分にスタートした決勝では、ポールポジションからスタートしたフェラーリAFコルセの50号車フェラーリ499Pが隊列をリードし、予選順どおりにトヨタの2台、そしてフェラーリの51号車と続いた。
開始10分を前に導入されたセーフティカー(SC)のタイミングで、フェラーリの2台は給油のためピットへと向かい、トヨタがトップへと浮上。以降は他のハイパーカー陣営にメカニカルトラブルやペナルティが頻発するなか、トヨタの2台は快調に走り、リードを築いていった。
決勝レース前半は8号車トヨタがリードし続けていたが、ハーフウェイを前にペースで勝る7号車可夢偉がコース上で先行し、トップで後半戦へと突入した。
4時間10分が経過したところで7号車はピットへ向かい、可夢偉からロペスへとバトンタッチ。続いて8号車も平川へとドライバー交代を行う。3番手は依然キャデラック・フェラーリ・ポルシェの間で争われる状況が続いた。
5時間10分が過ぎる頃、トヨタは7号車、8号車の順でルーティンピットを行う。ピットアウト後も2台のギャップは5~6秒となるが、平川は徐々にロペスとの間合いを詰めていく。
6時間経過直前、6番手を走行していた51号車フェラーリ499Pのアレッサンドロ・ピエール・グイディが高速のターン14でアウトから54号車フェラーリ488 GTE Evoをパスする際に接触。スピン状態に陥ったピエール・グイディは前方を走っていた56号車ポルシェ911 RSR-19に接触し、左リヤタイヤとその周辺のカウルを破損してしまう。
ピエール・グイディはすでにピット入口を過ぎていたため、3輪状態でコースをまるまる1周走行して、ピットへと戻ることに。また、51号車からのデブリが散乱した影響か、これでフルコースイエロー(FCY)が導入されることとなった。51号車はガレージでの修復後にレースに復帰するが、接触に関して10秒ストップのペナルティを受け、上位争いから脱落した。
このFCYでトップのトヨタ2台はテール・トゥ・ノーズの状態に。FCYが解けると、ターン7へのブレーキングでロペスはブレーキをロックさせるが、平川との間には周回おくれのキャデラックを挟んでおり、ポジションは変わらない。
そしてこの周の終わり、トヨタはそれまでと順番を入れ替え、8号車を先にピットに呼び戻し、平川からブエミへとドライバー交代を行った。次の周に7号車ロペスもピットへと向かい、再び可夢偉へとバトンタッチした。この時点で残りレース時間は1時間40分ほどとなる。
ピットアウト後も7号車が先頭を守り、8号車ブエミがコンマ差に迫る展開となるが、やがて2台は数秒の差へと戻る。さらに残り1時間の時点では、ギャップは10秒強へと拡大した。
残り49分、2番手8号車がピットに入り、ブエミからハートレーへと交代。次の周にはトップ7号車もピットに戻り、コンウェイへとドライバーチェンジするが、その後も順位は変わらず。終盤には若干ギャップは縮まったものの、7号車コンウェイがトップのままフィニッシュラインへと逃げ切り、2023年の開幕戦を制した。
終盤、3番手をいく50号車フェラーリと、約20秒後方の2号車キャデラックとの位置関係に注目が集まったが、順位は変わらず。現地時間19時58分にチェッカーを迎えた。
5~6位にはポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのポルシェ963が5号車、6号車の順で続き、総合7位はLMP2ウイナーのハーツ・チーム・JOTA48号車オレカとなった。修復により順位を下げた51号車フェラーリは11周おくれの総合15位となっている。
プジョー9X8の2台はトラブルに見舞われたほか、ノンハイブリッドの2台、708号車グリッケンハウス007と4号車ヴァンウォール・バンダーベル680もリタイアに終わった。93号車プジョーとヴァンウォールは、FCY導入時に接触する場面もあった。
■終盤まで続いたLMP2の大混戦をハーツ・チーム・JOTAが制す
クラス6番手スタートだったチームWRT41号車のロバート・クビサが開始10分で導入されたSCまでに2番手へとジャンプアップ。3番手の僚友31号車とともに、首位ユナイテッド・オートスポーツの23号車を追う展開となった。
中盤にかけてはハーツ・チーム・JOTAの48号車、プレマ・レーシングの63号車と9号車ら、有力どころが上位へ進出してくる。
トップを快走していた23号車だったが、3時間10分が過ぎたところで、トラブル発生か突如スローダウン。ジョシュ・ピアソンはコース脇にマシンを止め、無念のリタイアとなった。
このあと各車のピット回数がそろうと、プレマ・レーシング63号車の女性ドライバー、ドリアーヌ・ピンが首位に浮上。ハーツ・チーム・JOTA48号車とトップを入れ替えながらレースが進んでいった。
残り1時間24分というところでトップを走る48号車が10回目のピットに飛び込むと、その5分後に63号車もピットイン。ダニール・クビアトからミルコ・ボルトロッティにドライバー交代する。
終盤になってもイエロー等が出ないなか、残り45分で48号車、残り40分で63号車、残り38分でユナイテッドの22号車と、首位に立った車両が相次いでルーティンピットへ。1スティント40分弱のLMP2にとっては、フィニッシュまで燃料がもつかどうかという、瀬戸際での勝負となった。
JOTA48号車のウィル・スティーブンスが再びトップに立ち、日没を迎えるなか争いは最終局面へ。2番手に上がったチームWRT41号車は残り34分でピット作業を行い、7番手まで順位を下げた。
残り12分のところで48号車がスプラッシュ。首位に立った63号車が持ち堪えられるかに注目が集まったが、残り4分を切ってピットへステアリングを切ると、3番手へと後退した。
この結果、ハーツ・チーム・JOTAの48号車が優勝。2位にユナイテッド22号車、3位にプレマ63号車となった。LMP2では7位までが、トップと同一ラップでレースを終える接戦となった。
■LMGTEアマでは木村武史が3位表彰台を獲得
日本勢ではケッセル・レーシング57号車フェラーリ488 GTE Evoで木村武史、Dステーション・レーシング777号車アストンマーティン・バンテージAMRで藤井誠暢がスタート担当したLMGTEアマクラス。
序盤、予選で激しい争いを見せたコルベット・レーシング33号車シボレー・コルベットC8.Rのベン・キーティングが、クラスポールのアイアン・デイムス85号車ポルシェ911 RSR-19のサラ・ボビーをパスするが、ボビーがこれを抜き返す展開に。
するとその背後を走っていた83号車フェラーリのルイス・ペレス・コンパンクがクラッシュしSCが導入。藤井はこの時点で6番手までポジションを上げてきていたが、SC中にステイアウトする作戦を採り、暫定首位に立った。
再開後も2台の実質トップ争いは続き、2時間経過時点では85号車が先行する。一方のキーティングは2時間40分のロングドライブを終えると、2番手でニコラス・バローネへバトンタッチした。
その直後、トップをいく85号車ポルシェのラヘル・フレイがターン1立ち上がりでアウトにはらみ、グリーン上で大きく跳ねてマシンを打ち付け、リヤバンパーが外れるアクシデントが発生。これにより85号車はピットでの修復を余儀なくされ、ポジションを大きく落としてしまった。
その後、LMGTEアマクラスは33号車コルベットがリ大きくードする展開となった。これにデンプシー・プロトン・レーシングの77号車ポルシェ、AFコルセの54号車フェラーリらが続く展開となるなか、ケッセルの57号車フェラーリも表彰台圏内へとポジションを上げてくる。
ケッセルはレース後半も安定した走行を続け、2番手走行中の残り6分で最後の燃料スプラッシュへ。これでひとつポジションを下げるも3位をキープし、木村にとってはWECでは初となる表彰台獲得で2023年開幕戦を終えた。
開幕戦のクラス優勝は終始強さを見せたコルベット・レーシングの33号車コルベット(キーティング/ニコラス・バローネ/ニッキー・キャツバーグ)。2位はデンプシー・プロトンの77号車ポルシェが獲得。Dステーション・レーシングの777号車はクラス10位でフィニッシュしている。
WECの次戦第2戦はポルトガルのポルティマオで行われる6時間レース。4月14~16日に開催される。
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