モーターマガジン社が2024年5月30日に発行したムック、GT memories12「A183Aスタリオン」が好評を得ている。ここでは、そのダイジェスト版をお届けしよう。スタリオンは1982年5月に登場し1990年まで生産された日本を代表するハイパフォーマンスカーだ。第4回目は、前期型に搭載されたG63Bターボ、およびマイナーチェンジ時に搭載されたG63Bインタークーラーターボエンジンだ。
2L直4SOHCターボで発進
まずはスペシャリティカーとして及第点
1982年のスタリオンが登場時、搭載されたエンジンはG63B型2L直4SOHC。愛称をシリウス80と名付けられた。グレードとしては、これに2バレルのダウンドラフト式キャブレターを付けて搭載した廉価版のGXもあったが、主力はもちろんGSR系で、電子式燃料噴射装置「ECI」とターボを装着したハイパワーバージョンになっていた。詳しく解説していこう。
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ECIとは、カルマン渦式エアフロメーターを持つ電子式燃料噴射システムだ。一般的なフラップ式のエアフロメーターよりも反応が良いのが特徴。またスパイラルインジェクション(旋回式噴射)や加速増量機構、バックアップ回路なども採用した当時の先進システムとなっていた。
パワーの要となるターボは純国産(三菱重工製)のTC-05型の小型高性能ターボを採用した。これによりターボラグが少なく、それでいて過給による性能アップ率も高いものとなっている。
G63B型ECIターボのパフォーマンスは最高出力145ps/5500rpm、最大トルク22.0kgm/3000rpm。ライバル車と比較しても圧倒的動力性能とは言えないが、スペシャリティカーとして及第点の性能となった。
1983年のマイナーチェンジでインタークーラーターボに進化!
175psで真のハイパフォーマンスカーになる
ただモアパワーの声があったのも事実で、1983年6月末の一部変更時に空冷式インタークーラー付ECIターボ車が設定される。これはGSR-II、IIIの5速MT車のみで他グレードは従来のインタークーラレスだった。現在は当たり前になっている空冷式インタークーラーの装着は、スタリオンが乗用車としては日本初となった。水冷式に比べて構造が簡単でありメンテナンスフリーなどのメリットがある。
このインタークーラーはアルミニウム製で東洋ラジエータで作られたもの。車両のフロントエンドに下向きに取り付けられていた。機能面でインタークーラーを見ると、ターボでは排出ガスの圧力によりタービンが回ると、同軸上にある吸気側タービンも回る。吸気は加圧されると高温になるため空気の密度が下がってしまう。このまま熱を持った空気をシリンダー内に取り込むとノッキングの原因ともなり、必然的に過給圧も下げなければならない。これをインタークーラーで冷却しシリンダーに送り込む。
吸気温度はインタークーラーレスの場合は最高出力点で120度になるが、インタークーラーによって60度まで低下する。これによって過給圧の増大を25%(0.53kg/cm→0.66kg/cm)果たした。さらに圧縮比を8.0から7.5に下げ、点火時期の進角特性の変更、燃料噴射ノズルの噴口径の拡大、コンピューターユニットの変更などを図った。
結果として得られたパフォーマンスは最高出力175ps/5500rpm(従来より21%向上)、最大トルク25.0kgm/3000rpm(従来より14%向上:当時のクラス最大値)で大幅な性能向上となった。
当時ライバルと目されたソアラ2800GTが5M-GEU型直6DOHCエンジンで175ps/24.5kgmを謳っていたから、スタリオンは直4SOHCとローテクではあったがインタークーラーターボという武器を用いてそれに並び、名実ともにハイパフォーマンスカーとなった。
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