運営元:旧車王
著者 :鈴木 修一郎
旧車の顔つきを決定づけるうえで要の存在「規格型ヘッドライト」とは?
近年、新たなるヴィンテージカー、クラシックカーのカテゴリとしてネオクラシックカー、ヤングタイマー(以下ネオクラ車)と呼ばれる1980~90年代のクルマが注目されています。
中古車市場でも1980~90年代のクルマの販売価格は高騰気味、極端な例ではR32~34型のスカイラインGT-Rは状態が良ければ1000万円以上、新車当時価格の3倍ほどの値を付けることも珍しくありません。
しかし、これらの「ネオクラシックカー」も、製造から30年が過ぎ、本格的なフルレストアを要している個体も珍しくありません。
実際に筆者が某旧車専門店の現役従業員として感じるのは、ネオクラシックカーのレストアは想像以上の「試練」が待ち受けている印象すらあります。
その結果、時間的ば猶予もなく、解体処分という最悪の結果を招いてしまうこともあるのです。
■実はオールドタイマーよりも維持やレストアが難しいネオクラシックカー時に神格化され、まるで工芸品のような扱いを受ける1970年以前のクラシックカーより、1980~90年代のネオクラ車のほうが実は維持や修理が難しいというのをご存じでしょうか?
筆者が、現在所有するスバル360やトヨタ セリカリフトバックに乗りはじめた頃、「昔のクルマに乗りたいけど、1960~70年代のクルマは大変そうだから80年代のクルマに乗る」という話をしばしば耳にしたものです。
そんなときは「『簡単そうだから』という理由だけで手を出すと、アセンブリ交換でしか対応できないケースがある。また、樹脂部品や電子制御部品が入手困難になったときに、思わぬ苦労をするかもしれないから注意した方がいいかも」とやんわりと伝えていました。
一般的にオールドタイマー世代の車両は、維持やレストアが難しいと思われがちですが、自動車は古くなればなるほど機構がシンプルになります。
そのため、故障の個所も要因も特定しやすいことが多いのです。
よって、修理する作業事自体はそれほど難しくないとさえいわれることもあります。
シンプルな機械式のデバイスは分解修理が可能なうえ、他車種および汎用の工業機械の部品や消耗品を流用できることもあります。
また、材料から切り出して部品を作ったりすることも可能です。
時には磨り減ったり割れた部品を、アーク溶接で接合したうえで「肉盛りして」再生するケースもあります。
「持続可能」という点において、クラシックカーのレストアは意外と「サスティナブルな行為」といえる・・・かもしれません。
しかし1970年代後半から、自動車は快適性の向上や運転の省力化に加え、安全性、排ガス対策、製造工程の効率化等も求められるようになっていきます。
その後、電子制御デバイスが普及するようになると、軽量化する目的で樹脂部品が多用されるようになります。
結果として次第に故障要因も複雑になっていきます。
モジュール型の精密機械や、コンピューター等の分解修理が困難なデバイスが多くなり、樹脂製の部品は一度外せば再使用不可のものもあります。
また、それらの部品は専用設計となっていることが多く、他車の部品や汎用品では代用することはできません。
市場に流通している部品がなくなれば、もう直す術はなくなるのです。
この数年で、ボディ・エンジン本体は何ともないが、機能部品・保安部品が1個入手出来なかったがために、車検をどうしても通せないという個体が増えてきました。
ギリギリの「延命処置」として、部品が見つかるまで保管。
それでもだめな場合は、継続車検を断念し、そのまま解体処分・・・なのです。
■そもそもクルマは何十年も使用されることは想定していない?国産車は古くから10年10万kmが耐用の基準となっています。
近年は使用年数が延びたとはいえ、20年、20~30万km以上乗る人はごく少数でしょう。
近代化された結果、故障率が下がり、1980~90年代のクルマはメンテナンスフリー化が進んだ印象があります。
とはいえ、油脂類の交換のみで乗りつづけて「ノーメンンテで」乗れるは最初の10年・10万km程度でしょう。
それ以降は、部品の摩耗や経年変化から逃れることはほぼできないと考えるのが自然です。
実は、2022年7月現在、筆者の愛車である1973年式トヨタ セリカリフトバックは、ヘッドガスケットが吹き抜けてしまいエンジンオーバーホールに出している最中です。
整備工場の社長の話によると、特に筆者のセリカに搭載されている2T-Gエンジン、さらに18R-Gエンジンは、シリンダーブロックやシリンダーヘッドが、今まで見たことがないような歪み方をするケースが増えたそうです。
それだけは済まされず、クラックが入った状態でオーバーホールする事例が急に増えたというのです。
前述の社長曰く、どうやら「元々、高回転型で燃焼温度高めの高負荷のエンジンに、近年の夏場の猛暑が関係しているのではないか。当時の開発設計担当者でさえ、想定できなかった負荷がかかっているのではないか」という話でした。
製造から30年どころか、50年、あるいは60年経ったクルマに「高回転型のエンジンに対して高負荷を掛ける行為」が「当時のメーカーの想定をはるかに超えた使い方」ということが想像できます。
結果として「20年・30年無交換だった部品が寿命を迎えた頃には、既に補修部品は入手不可になっていた」という事態が起こるのです。
大半の車両が部品が寿命を迎える前に解体処分されてしまうのであれば、メーカーとしては「この部品が寿命を迎える前に、車両自体が廃車になってしまう。それならば、長期間に渡って補修部品を供給する必要があるのか否か」という判断基準を持つこともやむを得ないでしょう。
「280馬力モデル」も登場から早や30年。いまや3オーナー、4オーナー車も少なくありません。もちろんなかにはワンオーナー車も含まれますが、「経過した時間」はどれも同じ。
あとはどの程度の負荷やダメージを負っているかによって、機関部はオーバーホール、ボディはレストア・・・という選択肢が視野に入ってもおかしくない時期にきているのです。
■旧車・ネオクラシックカーを後世に残せるかどうかは「現オーナー次第」最近ではユーノスロードスターや第二世代GT-RといわれるR32~R34スカイラインGT-R、ハチロク、スープラなどの部品再販やレストアサービスを自動車メーカー主導で行うようになってきました。
とはいえ、それはごく一部のモデルや、さまざまな条件が課せられることもあります。
個人では限界がありますが、同じクルマを持つ仲間や専門店などと協力して「後世に残せるかどうかは現オーナー次第」という気概を持つ必要があるのかもしれません。
[ライター・撮影/鈴木修一郎]
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みんなのコメント
CPU書き換え・給排気系・ブーストアップ程度のライトチューン車です。
31年目ですがエアコン以外は消耗品の部品交換のみで今のところは何とか大丈夫ですよ。
なぜ解体する必要がある?
この記事に出てくる車ならば、売りに出せば買ってくれる人がいるでしょう。その部品1個なら別の部品取り車から移植して復活させることもできるわけで。