はじめに ベンツEV第2弾 EQAとは
text:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)
【画像】メルセデス・ベンツEQA 細部まで見る【EQBと比較】 全138枚
4月26日。メルセデス・ベンツ日本は「EQC」に続く、純電気自動車(ピュアEV)第2弾となる「EQA」を発売すると発表した。
世界各国が温室効果ガス削減のために二酸化炭素の排出量削減に取り組んでいる今、自動車メーカーもEVへのシフトが加速している。先日、開催されたばかりの上海モーターショーでは、ワールドプレミアとなるコンセプトカーは、ほとんどがピュアEVだった。
日本においても、日産「リーフ」はグローバル累計で50万台以上を販売し、レクサスはブランド初のピュアEV「UX300e」を発売した。マツダも「MX-30」のピュアEV版を国内でも販売開始したし、ホンダも「ホンダe」に続いて、数年内には軽自動車のピュアEVを発売予定だという。
輸入車も動きが活発だ。
BMWは2014年から「i3」を、メルセデス・ベンツは2019年から前述のEQCを日本に導入しているし、ポルシェ(タイカン)、アウディ(eトロン シリーズ)、PSA(プジョーe208/e2008、DS3クロスバックEテンスなど)といった、ヨーロッパの主要メーカーは続々とピュアEVを日本市場に導入している。ボルボも初のEV専用モデル「C40リチャージ」を今秋から日本で発売する予定だ。
国産&輸入EVがひしめき出した日本の市場に導入されるEQAとは、どんなクルマなのか。その概略を紹介していこう。
メルセデス・ベンツEQA 外観
EQAのボディサイズは、全長4465×全幅1835(AMGラインは1850)×全高1625mm、ホイールベースは2730mm。
最低地上高は210mmを確保した。
ベースとなったGLAとほぼ同じサイズだ。他社のモデルと比較すると、車高は少し高いものの、全長・全幅はスバルXVやBMW X1とだいたい同じくらい。日本の道路環境下では取り回しの良いサイズだ。
EQAのデザインは、メルセデス・ベンツのデザインの基本思想である「センシュアル・ピュリティ(官能的純粋)」をより先進的に表現する「プログレッシブ・ラグジュアリー」というコンセプトのもとにまとめられている。
前後のオーバーハングが短く、パワフルだがクーペのようにスタイリッシュで、曲線を用いたデザインが特徴の都市型SUVのプロポーション。
EVゆえエンジン冷却用のラジエターは不要だから、フロントグリルは中央にスリーポインテッドスターを配したブラックパネルとなる。水平に伸びる光ファイバーの帯が、フルLEDヘッドライトのデイタイムランニングライトを結びつけている。
オプションのAMGラインを選択すると、フロントのブラックパネルグリルにハイグロスブラックのフレームとツインルーバーがあしらわれ、引き締まったスポーティな印象に。
サイドビューは、全体としてメルセデス・ベンツの都市型SUVの特徴であるシンプルな力強さと、リアエンドにむかってなだらかに下降していくルーフラインと上下方向にスリムなサイドウインドウを採用し、スタイリッシュさを表現。
リアエンドでは、LEDのリアコンビネーションランプが中央に向けて次第に細くなるライトストリップに滑らかに一体化され、リアビューの幅を強調するとともに、先進性を表現している。
メルセデス・ベンツEQA 内装
インテリアもエクステリア同様に、「プログレッシブ・ラグジュアリー」というコンセプトのもとにまとめられ、EQ独自のデザイン要素が採用されている。
助手席前方のインストゥルメントパネルには、スパイラル調(バックライト付き)のインテリアトリムを採用。夜間には、アンビエントライトの設定により64色から選択できるバックライトが先進性を表現する。
円形のエアアウトレットは、ジェットエンジンのタービンを想わせるスポーティなデザインを採用しており、内部のタービンブレードがローズゴールド(AMGラインはシルバー)となる。
標準仕様のインテリアにはシート中央部分がローズゴールドのファブリック、その他の部分がチタニウムグレーのレザーARTICOとなるデザインが採用された。このインテリアはサステナビリティにも配慮し、ペットボトルからのリサイクル原料で作られたファブリックを使用している。
AMGラインではレッドステッチ入りのレザーDINAMICAシートが採用され、オプションでブラックのレザーシートも選択できる。
ラゲッジスペースは、リアシート使用時でも340L、リアシートバックを全倒すれば最大1320Lまで拡大する(VDA方式)。
メルセデス・ベンツEQA パワートレイン
EQAは、フロントのボンネット内に電気モーターを搭載して前輪を駆動するFWDだ。モーターの最高出力は190ps(140kW)、最大トルクは37.7kg-mを発生。
十分な加速力を持ちながら、従来のエンジン車からの乗り換えであっても違和感を感じないスムーズな制御がされている。車体へのモーターの搭載方法を工夫し、モーターからの振動・騒音が車内に伝わらないよう配慮し、従来のEVよりもさらに静粛性を向上。
高電圧バッテリーにはリチウムイオンを採用しており、前後アクスル間のフロア部に搭載されている。
バッテリー容量は66.5kWhで、WLTCの一充電による航続距離は422kmとなっている。首都圏からの日帰りドライブなら、フル充電で出発すれば途中で充電しないプランも組めるだろう。
充電方式は、6.0kW(200V・30A)までの交流普通充電と、100kWまでの直流の急速充電(CHAdeMO)に対応。
効率的な回生制御も採用しており、ステアリングのパドルを操作して、回生ブレーキの強度を5段階に手動で設定できる。パドルは右が回生レベルの上昇、左が低減のスイッチだ。
回生のレベルは、下記の5段階だ。
D+:コースティング
D:軽度の回生ブレーキ
D-:中程度の回生ブレーキ
D- -:強度の回生ブレーキ(十分な減速が得られる)
D Auto:前車との車間距離、登坂・降坂などの状況を加味
なお、アクセルペダルの操作だけで完全停車までできる、いわゆる「ワンペダル」には対応していない。完全停車するには、回生ブレーキの設定に関係なく、これまでと同様にブレーキ操作を行う必要がある。
メルセデス・ベンツEQA 装備
標準装備されるテレマティクスサービス「メルセデス・ミー・コネクト」にも、エレクトリック・インテリジェンス・ナビゲーション、充電ステーション情報、出発時刻・プリエントリークライメートコントロールの設定、エナジーフローや電費情報の表示、最大充電電流の設定といった、EQA専用のプログラムが用意されている。
対話型インフォテインメントシステム「MBUX」では、従来の会話のほか、「充電ステーションを探して」とか「8時までにクルマのクライメートコントロールを設定して」など、ピュアEV固有の機能にも対応した。
安全運転支援システムでは、アクティブ・ディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付き)やアクティブ・ステアリング・アシスト、渋滞時緊急ブレーキ機能などの「インテリジェントドライブ」は、高度化されたステレオ・マルチパーパスカメラとレーダーセンサーの働きにより、周囲の交通状況をより的確に把握することができるようになり、機能を大きく強化。
そのほか、ペダル踏み間違いに対応するドライブアウェイ・アシストや360度カメラシステムなど、ドライバーを支援するシステムは他のメルセデス・ベンツ車と同様に充実している。
50台完売 エディション1
EQAの正式発表を控えた4月2日。メルセデス・ベンツ日本はEQAの発表を記念した特別仕様車「EQA 250エディション1」の先行予約受け付けを開始した。
スポーティなAMGエクステリアを採用し、ポーラーホワイトの専用ボディカラーにハイグロスブラックのアクセントが入ったフロントスポイラーリップ、サイドスカート、ドアミラーハウジングやルーフレールが引き締まった印象を与える。ローズゴールドに専用ペイントされた20インチのAMGマルチスポーク・アルミホイールや、Aピラー下端の「Edition 1」バッジも装備。
インテリアでは、専用のナバグレー/サイバーカットブルーのレザーシートを採用し、シルバークロームのエアアウトレット内部のリングやフロアマットのエッジにもブルーのアクセントが入れられている。
スポーツサスペンションやパノラミック・スライディングルーフなども標準装備。
消費税込みの車両価格は後述する標準モデルの150万円高となる790万円。それでも、50台の限定販売はすでに予約受注が締め切られたようだ。
専用装備やリセールバリューを考えれば、150万円のエクストラプライスは、けっして高くはなかったという証しといえるだろう。
「EQC」 185万円の値下げ
また、2019年に日本に導入されたメルセデス・ベンツEQシリーズの第1弾、「EQC」の車両価格の値下げが4月20日に発表された。
これは、今までは標準装備されていたクライメートコントロール(前後左右・後席独立調整)やエナジャイジングパッケージ(空調・照明・音楽などのコントロール)、ステンレス・ランニングボード、ヘッドアップディスプレイ、ガラス・スライディングルーフなどをオプション設定に変更したもの。
こうした装備の見直しにより、消費税込みの車両価格は1080万円から895万円へと、185万円も値下げされた。
もちろん、パワートレインのスペックやテレマティクスサービス、そして安全装備などに関しては変更されていない。
従来どおりに、リース契約満了時に残価の差額清算が不要なクローズエンドリースや、ローン/クレジットカード一括払いも利用できる(いずれも条件あり)。
また、これはEQAも同様だが、新車購入から5年間または10万kmのいずれか早い方まで、一般保証修理/定期メンテナンス(点検整備の作業工賃・交換部品)/24時間ツーリングサポートが無償で提供される保証プログラム「EQケア」が適用される。
EQA 250とEQC 400 4マティックの価格差は約250万円。
EQC 400はその名のとおり2モーターの4WDとなるし、室内スペースもEQAより広く、WLTCモードでの航続距離は400km。価格差は大きいけれど、性能の違い・使い方・予算を考慮すれば、EQAと比較検討できる範囲内の価格におさまったことは間違いない。
メルセデス・ベンツEQA 価格
メルセデス・ベンツEQAの日本における車両価格は、下記の通り。
EQA 250:640万円
発売日は4月26日で、ハンドル位置は右のみとなっている。
なお、全国約2万1000基の充電サービス利用が購入から1年間は無料となるほか、アフターサービスは、全国221のサービス拠点で受けることができる。
メルセデス・ベンツEQA スペック
メルセデス・ベンツEQA 250(カッコ内はAMGライン)
税込み日本価格:640万円
全長×全幅×全高:4465×1835(1850)×1625mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1990kg(2000kg)
乗車定員:5名
航続可能距離:422km(WLTC)
最高出力:190ps/3600-10300rpm
最大トルク:37.7kg-m-1020rpm
駆動方式:FF
最低地上高:210mm
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