スペイン・バルセロナで争われた2023年TCRヨーロッパ・シリーズ最終戦は、僚友ジョン・フィリピや新鋭コービー・パウエルらと三つ巴のタイトル戦線で臨んだトム・コロネル(コムトゥユー・レーシング/アウディRS3 LMS 2)が、その長いキャリアに於いて自身初のツーリングカー選手権タイトルを獲得。シリーズチャンピオンは実に1999年のフォーミュラ・ニッポン以来となり、約24年ぶりに待ち望んでいた“王者の称号”を手にした。
シーズン序盤は新生TCRワールドツアーとの併催が続いた欧州最高峰シリーズもいよいよ最終戦となり、第7戦として10月20~22日にシーズンフィナーレの舞台が整った。
アウディの新鋭パウエルに続き、新型FL5ホンダ・シビックRが初優勝を達成/TCRヨーロッパ第6戦
その地元戦には約1年ぶりの参戦となるぺぺ・オリオラ(RC2レーシング/アウディRS3 LMS 2)もゲストエントリーで姿をみせ、かつてのWTCC世界ツーリングカー選手権で共闘したオランダ出身の大先輩が“宿願”を達成する瞬間を、間近で見届ける覚悟を示した。
「今週末、このチャンピオンシップには多くのことが掛かっているのはもちろん承知している」と、コロネルの境遇を念頭に語った2022年のTCRサウスアメリカ・シリーズ初代チャンピオン。
「年間王者がカタルーニャで決まるのは素晴らしいことだが、僕の目的は異なっていて、コース上のライバルとは別にチームに付加価値を与えたいと思っている。ここは僕がよく知るトラックであり、レースを特等席から見るのも楽しみだ。ファンのサポートを受けホームで良い週末を過ごしたいと思っている」
迎えた予選では、ポールポジション獲得で実に10点が加算されるとあって、早速タイトル争いを繰り広げる実力者たちが火花を散らす展開に。
このレースウイークを前にした時点で、ランキング2位のパウエルに10点差としていた選手権首位コロネルは、ここで「同点に追いつかれてレースを戦うわけにはいかない」と意気込み、Q2では今季ラリークロスから転向の若手有望株に対し0.194秒差の最速タイムを記録。3番手のフィリピに対しても0.343秒差をつけ、まずは安堵の最前列確保とした。
しかし現地土曜17時55分にスタートが切られたレース1では、スタートで抜群の反応と蹴り出しを見せたパウエルが先行しホールショットを奪うと、ここから必死のディフェンスラインで背後のコロネルを抑え込みに掛かる。
序盤数周のアタックをしのいだパウエルは、ここからポジションを脅かされることなく12周を走破し、直近4戦で3勝目のトップチェッカー。ランク首位コロネルに対し詰め寄る結果としたが「最初の3周は本当に挑戦的だったが、コービーがあまりにもディフェンスをしてきたから『よし、賢く戦ってポイントをもぎ獲ろう』と切り替えた」コロネルが2位フィニッシュ。さすがの“年の功”でダメージを最小限に留める結果とした。
■歓喜爆発のコロネル「50歳の白髪でハゲた男にとって、悪くないよな!」
明けた日曜正午過ぎの今季最終ヒートとなったレース2は、予選トップ10リバースでポールを得たルベン・ヴォルト(ALMモータースポーツ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が快走。前日予選前にタービン交換を強いられたFL5型シビックRは、前戦イタリア・モンツァに続く今季2勝目を飾ってみせる。
一方、タイトル最終決戦は意外なカタチで結末を迎え、フォーメーションラップを終えたところでパウエルのアウディはまさかのピットロードへ向かい、前日予選&決勝とワン・ツー・スリー・フォーを達成したチームはすぐにボンネットを開けてトラブルシューティングに入ったため、これでコロネルは俄然有利な状況に。
ヴォルト、フィリピ、そして前日FP1で最速発進を決めたヴィクトル・アンダーソン(MA:GP/リンク&コー03 TCR)に続き、4位でチェッカーを受けたコロネルが、2009年のWTCCインディペンデント・トロフィー部門以来、そして2019年のスパ500や、2022年モータースポーツ・ゲームズのツーリングカー・カップ以来のビッグタイトルとなる、ツーリングカー転向以来初の年間総合シリーズチャンピオン獲得を決めた。
「悪くない、悪くないだろう? 50歳の白髪でハゲた男にとって、悪くないよな!」と表彰台に招かれ、恒例のお祝いとなった典型的ジャンプでフォトグラファーの要望に応えた新チャンピオン。
「ここまでツーリングカーに長く携わって来たし、シングルシーターから転向した2001年からここにいる。ETCR、WTCC、ETCC(欧州ツーリングカー選手権)、WTCR世界ツーリングカー・カップ、そしてTCRヨーロッパ・シリーズなど、すべてのチャンピオンシップで戦ってきたんだ」と続けたコロネル。
「そのカテゴリーが何と呼ばれようと、そこにはハコ車の熾烈な競争があり、同じサーキット、同じ組織で、同じ勝負を繰り広げてきた。ようやくチャンピオンシップを獲得できてうれしいし、単なるプライベーター・チャンピオンシップではなく、本当のヨーロッパのチャンピオンシップを獲得できた」
「自分の最後のタイトルは1999年に日本で開催されたフォーミュラ・ニッポンだったから、こうして24年ぶりにタイトルを故郷に持ち帰ることができて本当にうれしいね!」
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