MTのカレラSは最もピュアな992型
text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
最新992世代のポルシェ911として、最速でも、最高級でもない。でもポルシェ製の7速MTを採用したカレラSは、最もピュアな992型だといって間違いないだろう。
足元のペダルは3枚。駆動輪は後ろの2本。わずかな軽量化も叶えている。911 GT3の登場が控えているが、それまでは最もドライバー・フォーカスな911と呼べる可能性は高い。ちなみにこのGT3、MTが載る保証はないらしい。
992型のポルシェ911にこれまで載っていたのは、PDKと呼ばれる8速デュアルクラッチAT。市場需要の大きさを優先させるカタチだったといえる。
MTへ強い支持が集まるのは、欧州と英国程度。マーケット規模を考えれば、採用しないという可能性すらあった。最終的にMT版の追加が決定したのは、北米市場のニーズにあったようだ。北米も合わせれば、MTが占める割合は約20%になる。
この7速MTだが、現在組み合わせられる911はカレラSのみ。後輪駆動と四輪駆動で選べる。8速PDKと比べると、35kgも軽量に仕上がっている点も特徴だろう。
さらにドライバーとしてうれしい情報が、MTならスポーツクロノ・パッケージが標準装備になること。油圧アクティブ・エンジンマウントと、専用のスポーツ・チューニングとなるアダプティブダンパーも付いてくる。
PDK版に採用される電子制御のLSDは、機械式LSDにスイッチ。トルクベクタリング機能は残る。最高出力は同じ450psだ。
変速作業は喜びに変わる
最近の高性能モデルでは一般的だが、MTを選ぶとATより加速は少し遅くなる。911でも同様で、7速MTの0-100km/h加速時間は、8速PDKの3.7秒に対し4.2秒。
燃費効率でいえば、MTの方が若干有利。PDKの燃費が9.5km/Lなのに対し、MTでは9.9km/Lへ若干伸びる。CO2の排出量も5g/km少なくなり、229g/kmとなっている。
価格はPDK版と同じで、MTを選んでも安くはならない。考え方としては、無料オプションといったところ。いずれにしても、ベーシックな911が10万ポンド(1350万円)もするという事実は、少々受け入れがたいけれど。
ドアを開くと、ハイテクな雰囲気が漂うインテリアデザインの中で、マニュアルのシフトレバーに違和感を覚える。ダッシュボードには、タッチセンサーと大きな液晶モニターが並ぶ。
トランスミッション・トンネルの真ん中、今までPDKのセレクターが付いていた部分に、レザーで覆われた丸いノブが付いている。手を伸ばすと、最小限の動作で済むように、適度な高さにレイアウトされていることがわかる。
気持ち良く変速するには、フルードを温める必要がある。懐かしい体験。冷たい状態では、やや引っかかりがあり、頼りない感触だ。
温度が一度上がってしまえば、変速作業は喜びに変わる。ショートストロークのシフトレバーが、滑らかに正確に動く。指先程度の軽い力で、6速まで気持ちよく選んでいける。
911の一部になったような一体感
右前側に飛び出た7速目は、従来より楽につながる。1000rpmプラス程度の低い回転数で、65km/h前後のクルージングを穏やかに味わえる。ロードノイズは、大きめだが。
重すぎないクラッチの操作も、運転を楽しくする要素。渋滞時でも、左足が痛くなることはないだろう。漸進的なつながりは、スムーズなシフトアップを促してくれるようだ。
エンジンやトランスミッション、速度などの状況を判断し、完璧なシフトダウンをサポートしてくれるレブマッチ機能も備わる。ペダルレイアウトは素晴らしく、機能をオフにして、ヒール&トウで回転数を合わせることも造作ない。
ドライバー自ら変速することで、911の魅力が際立つ。ドライバーとの強い一体感は、まるで911の一部になったようですらある。PDK版では味わえない体験だ。
MTなら、ツインターボで加給されるフラット6の輝きを、より存分に引き出せる。滑らかなPDKによって、トルク感が濁されることもない。常に最適なタイミングで、最適なギアを選べる。
ダイレクトなパワーが控えているから、マニュアルなら理想より1・2段高めのギアでも気持ちよく走れる。1500rpmからブースト圧の高まりを感じられるが、2000rpmを超えれば充分に力強い。
変速のたびに、コンプレッサーとウェストゲートからの高音域が、スポーツエグゾーストからの中音域に重なる。MTでも992型は間違いなく速い。
それ以外の部分は、基本的に同じ。洗練されたデザインの911だ。
リアエンジンというレイアウトを味わう
先代よりボディは大きくなっているが、ライバルと比べればまだコンパクト。運転席からの視認性は良好で、サイズ感はつかみやすい。
ステアリングのレシオ設定も素晴らしく、レスポンスと滑らかさを両立。狙った通りに911を操れる。リアタイヤにぶら下がる質量を考えれば、コーナリング時のバランスにも深く感心する。
ステアリングホイールを握る指先と、シートに収まる腰まわりから、クルマの動きを正確に感じ取れることも見事。グリップの限界に迫り、そのままテールスライドへ持ち込む自信を与えてくれる。
知的なスタビリティ・コントロールは、コーナー出口でLSDを有効に機能させるだけの、自由度も許している。スロットルステアによる制御も、ドライバーの技術次第だ。
スポーツ・モードを選ぶとサスペンションは明確に硬くなり、ボディの動きも引き締められる。それでいて、不快に感じさせないだけの落ち着きも持ち合わせている。
しかし筆者は、コンフォート・モードを選んだ方が、より楽しいと感じた。低速域で乗り心地にしなやかさが増すだけではない。姿勢制御がやや緩くなることで、リアエンジンというレイアウトのフィーリングを、感じ取りやすくなる。
中速コーナーの途中でアクセルペダルを緩めると、質量の大きいリアが反応。コーナー出口に向けてノーズの向きを整えれば、脱出加速への準備は完了だ。
MTを積む最後のポルシェ911になるのか
992型の変化幅としては、大きいものではない。それでも、911がドライバーを酔わせるスポーツカーであるという理由が、MTならより良く理解できる。
ターボSやGT3などとは異なり、比較的低い速度域で911を味わえるというところが、カレラSのミソ。特性はそのままに、スリリングな体験をより多くの時間で楽しめる。
インテリアは美しく、驚くほど実用的。大人には狭いリアシートだが、実際は想像以上に便利。フロントには充分な荷室もある。その乗りやすさは、毎日の通勤にも使えるほど。こんなスポーツカーは多くない。
カタログ数値上では、MTのカレラSは、PDKのカレラより速くない。それでいて価格は高い。でも、ドライバーの喜びに焦点を向ければ、MTの911は選択肢の上位に入って然るべき。近所を走るときですら、クルマとの一体感を噛み締められる。
ペースを速めるほどに、深い充足感でドライバーをより強く巻き込んでくれる。クルマとの対話で、自然と操縦技術も磨かれていくだろう。そうすれば、一層爽快な走りが待っている。
もし銀行口座に余力があるのなら、早いうちに決断した方が良い。環境規制に伴うハイブリッド化の波は、マニュアル・トランスミッションの残り時間を飲み込んでいく勢いだ。992型は、MTを積む最後のポルシェ911になる気がしてならない。
ポルシェ911カレラS マニュアル(英国仕様)のスペック
価格:9万6255ポンド(1299万円)
全長:4519mm
全幅:1852mm
全高:1298mm
最高速度:307km/h
0-100km/h加速:4.2秒
燃費:9.3-9.9km/L
CO2排出量:229-243g/km
車両重量:1480kg
パワートレイン:水平対向6気筒3995ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:450ps/6500rpm
最大トルク:53.9kg-m/2300-5000rpm
ギアボックス:7速マニュアル
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みんなのコメント
20%のVATを含んでいるにも関わらずこの安さ。
英国のポルシェオーナーが羨ましい……
カレラSの日本仕様は英国より多少装備が良いとはいえ、消費税10%で1700万を超えますからね…