安かろう悪かろう?? バイクを手っ取り早くパワーアップさせるなら排気量を上げる「ボアアップ」が一番手っ取り早い方法です。だけど、安く買えるボアアップキットを取り付けたら、かえってピークパワーが下がることもあるよ?というお話です。
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「ボアアップ」・・・
排気量を上げてエンジンパワーを増大させる、なんとも甘美な言葉ではないでしょうか(ウットリ)。
本来、ボアアップキットはとても高価なアイテムですが、近年ネット通販の普及もあって、あらゆるメーカーのものというだけでなく、激安のボアアップキットすら買えるようになりました。
だけど、注意しなくてはならないことがあるのです。排気量が上がったのに、最高出力が下がるなんてことがあるかもよ? そんな可能性があることを皆様にお伝えしたいのです。
ここから全て筆者の経験談
ヤマハDT50用のボアアップキット買いました。
―― KN企画シリンダーキット46mm(65cc)/DT50・RZ50 税込販売価格:23,100円
お値段なんと2万円ちょい!!
かつて存在していたボアアップキットは5万円超えもザラだったので非常にリーズナブル。思わずポチっちゃったわけですよ、はい。
で、届いたのがこちらのキット。
ノーマルと比べるとボアの大きさの違いは一目瞭然。排気量が50ccから65ccへアップします。たかが15ccと思うことなかれ。数値は小さくとも実に30%の排気量アップだし、仮に1000ccだとしたら1300ccになっちゃうんだからその変化は期待したいところ。
―― スリーブ、薄!!
加工バリが残っていることもあるという口コミだったので、シリンダー内壁をチェックしてみました。裏を見てびっくり。ぎりぎりまでボーリング加工されたスリーブが薄いったらありゃしない。
ノーマルのシリンダーに近いものをベースにボーリング加工したのでしょうか? 元々の排気量の設計ではないので スリーブが薄くなってしまうのは当然のこと。
…うん?
ボーリング加工??
―― あっ、違和感!
シリンダーを上から見たら強い違和感を感じました。
すかさず、排気ポートの高さを測ってみると…
ノーマルに比べて約2ミリも違う!!
排気量を上げるとポート高さが変わっちゃうカラクリ
どうして排気ポートの高さが下がってしまったかというと、理由は簡単です。
シリンダーを横から見ると、排気ポートはご覧の通り斜めに走っています。
なので、ボーリング加工で単純にボアを拡大してしまうと…
ポートの位置が下がるのです!
こりゃ大変だ。
何が大変かというと、2サイクルは4サイクルのようにバルブの開閉によって吸気排気圧縮がしっかり制御されていません。爆発燃焼によって排気ポートから飛び出した圧力がチャンバー内壁に反射して戻ってきて、その排気脈動によって吸気された混合ガスを燃焼室に閉じ込めるという、なんとも計算しづらい複雑な性質をもっているのです。
構造はシンプルなんですけどね(笑)
ややこしい話は割愛しますが、ノーマルに比べて2mmも排気ポートが下がるということは、エンジンの性格がガラッと変わってしまいます。
ざっくりシンプルに言うと、ピーク回転が下がっちゃう。
高回転型のエンジンが、中回転型のエンジンになるということ。
それはつまり、スポーツバイクがカブみたいなビジネスバイクになる感じ。
その予想は当たっていて、このボアアップキットを組み付けてから実際に走ってみると、パワーバンドの回転域が全体的に2000回転も下がりました。
ボアアップして排気量が上がったのに、体感できるピークパワーは下がってしまったのです…。
ちなみに、吸気ポート(掃気ポート)の高さも変わってしまうので、エンジンの性格は全然別物になってしまうのです。
モノは考えよう? 素材と考えるか、乗りやすさを取るか…
専用設計じゃないからしょうがないですね~。
これを65ccの排気量としてゼロから作った場合、吸排気特性から全部見直しになるので開発する手間は膨大なものとなります。
もしそうしたら、値段はやっぱり高いものになってしまうでしょう。
なので、素材の原価とボーリング加工賃と考えればこの値段は納得なのです。
もしこのボアアップキットで高回転特性を取り戻したいならば、ポートを加工して自分でチューニングするしかないけど、これがまたとてつもなく難しくて、知識と経験と熟練と技術を要する作業になってしまうのです。
時間かけて作業したけど、削りすぎちゃって逆にパワーダウンしたり最悪エンジンが焼き付いたりしていまうのはよくある話。
だけど・・・ モノは考えようで、排気量アップによって低回転は確実にトルクアップしているので、そこにピーク回転を落とす特性が加わると、2サイクルエンジンとは思えないようなトルクフルで乗りやすいエンジンになるのです。
2サイクルのピーキーさに不慣れな今の若い人には、むしろちょうどいいかもしれませんね~。
事実非常に乗りやすくて、オフロード走行でテストしてみたらメチャクチャ走りやすかったです。
―― オフロード走行ではすっごく乗りやすくて最高! だった
永遠の峠小僧へ告ぐ! 「にわかチューナー」やってみない?
と、いうわけで。
お値段が安いし、古いバイクにもかかわらず現在でも部品提供していることはとてもありがたいと思います。
これもひとつの「素材」と考えて、扱いにくいじゃじゃ馬を好む40代以上のおっさんは、リューター片手に「にわかチューナー」気分でポート加工に挑んでみるのもまた一興ではないでしょうか?
首尾よく高回転に回るようになってパワーアップすれば良し、うまく行かななくてもそれはまたそれで良し?とか思っちゃったりして。
2サイクルが消えゆく昨今、おっさん達よ自分好みのエンジンにするべく格安ボアアップキットを手に入れてチューンナップに挑戦してみようではないか~!
この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
動画解説はこちら↓
YouTube動画のほうでは映像付きで解説しているのでよかったら参考にしてください♪
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みんなのコメント
まぁ、下手したらエンジンがかからなくなってもおかしくないカスタマイズなので、ちゃんと走れるなら良しとするしかないのでは?
因みに、原付免許では乗れなくなることにも注意が必要ですね。
スリーブの薄さを訴えていましたが、自分や仲間が購入したキットはみんな純正シリンダーの加工品でした。今考えればキットで5~6万でも、シリンダー代・ボーリング・ポート加工・ピストンキット込みなら安かったと思う。今の激安品は海外シリンダーにボーリングだけなら妥当な価格では。