日産が生んだパイクカーの傑作
text:Richard Bremner(リチャード・ブレムナー)
【画像】500、トゥインゴ、ケータハム、ミニ、A110【レトロな外観のモデルを写真で見る】 全186枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
キュートな日産フィガロが、デビュー30周年を迎えた。
まるでブリキのおもちゃのようだ。レトロなフィガロは、1950年代のキッチン・キャビネット、古いレコード・プレーヤー、戦後間もないころの英国や日本が得意としていた米国向けの小型車の時代を思い起こさせる。
車内に一歩足を踏み入れると、1990年代に話題になったCDプレイヤーにカセットプレーヤー、ラジオ、パワーウィンドウ、エアコンを備えており、外観とは裏腹に近代的なクルマであることが分かる。
フィガロのデザインは、1935年のダットサン・ロードスターや30年代のアールデコ・ファッションにインスパイアを受けている。
パワーウィンドウのスイッチがミニチュアのランプシェードのような形をしているなど、細部に至るまで一般的な日産車とは一線を画している。
R32スカイラインGTRなどの例外もあるが、1990年当時の日産は、空っぽの待合室のように退屈なセダンばかり売っていた。
フィガロは、日産が「パイクカー」と呼んだ最後のモデルだった。魚のパイクではなく、中世の槍を意味するパイクは、デザインが先鋭的なもの、つまり「尖っている」クルマを指して使われる。
80年代から90年代にかけて、日産のパイクカーは基本的に日本でのみ販売されていた。その歴史を簡単に振り返ってみよう。
Be-1
発売:1987年 生産台数:1万台
最初のモデルはBe-1である。
いまでこそ普通のクルマに見えるが、1985年にコンセプトとして発表されたときには、1960年代のスローバックと曲線的な未来主義のミックスがブルーバードとは対照的で、広く評判を呼んだ。
1万台生産されたBe-1の人気は非常に高く、日産は抽選制を導入したほどだ。後に、ファブリック・サンルーフを採用したモデルも登場している。
パオ
発売:1989年 生産台数:5万1657台
Be-1の次に躍り出たのはパオで、ネーミングからして驚きに満ちていた。
シトロエン2CVのようなボディパネル、カラーが施されたダッシュボード、キャンバストップ、露出したドアヒンジ、フラットなフロントガラスなど、1960年代初頭のクルマの特徴をふんだんに盛り込んだ、一風変わったコンパクトカーだった。
3か月という受注期間の中で、5万台が売れるという人気を博した。
エスカルゴ
発売:1989年 生産台数:8000台
その年の後半には、日産史上最も風変わりなクルマの1つであるエスカルゴ(S-CARGO)が登場。愛らしいハイルーフ・バンであるエスカルゴは、カタツムリを彷彿とさせるスタイリング、寿司トレイのようなダッシュボードを備えていた。
クリエイティブなインテリア
創造性にあふれた日産は、1991年にフィガロを発売した。わずか2万台の限定生産にもかかわらず、パイクカーの中で最も有名なモデルとなった。
子供が描いたかのようなピュアなフォルムを持ち、クロムメッキの縁取りと、哀愁漂うヘッドライト、そしてシンプルな楕円形のグリルが独特の雰囲気を醸し出している。
フィガロに一歩足を踏み入れれば、その贅沢で芸術的なインテリアとアームチェアのようなシートに魅了されるはずだ。
ボディは最近のクルマと比べると非常に小さく見えるし、開閉可能なルーフが構造的に空洞を生んでいるにもかかわらず、他の日産車と同じように頑丈に感じる。
ダイナミクス的には、1.0Lエンジンにターボが搭載されていることを除けば、サニーやマーチといった同世代のモデルとほとんど変わらない(つまり退屈ということ)。しかし、運転しやすいという点は、心を打つ理由の1つでもある。
多くが英国へ渡ったフィガロ
フィガロは1989年の東京モーターショーで発表され、大胆で奇抜、華麗なモデルとして高い評価を受けた。
抽選方式で2万台が販売されたが、驚くべきことに、そのうち6000台ほどが英国に輸入された。
サリー州レザーヘッド近郊にある自動車ディーラー、Bookham Autosのハミド・ファダイ社長は約12年間フィガロを販売してきた。
彼はもともと、日産スカイラインやスバル・インプレッサなど中古のハイパフォーマンスモデルの輸入を専門にしていたが、「英国に10台しかなかった頃にフィガロを持ってきた」という。1万1000ポンド(149万円)で販売したところ好調で、それが彼の本業となった。
顧客のほとんどは30~55歳で、その多くは「フィガロを愛している」というファンだ。70%は女性、15%は男性、残り15%は両性のカップルだという。
多くが英国で長く使用されていることもあり、「スペアパーツはすぐ入手できます」とファダイは語っている。
30年前のクルマでありながら、レトロなスタイリングがいつまでも新鮮さを保っていることに驚きを感じる。英国で価格が上昇していることからもわかるように、それが魅力の鍵かもしれない。
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みんなのコメント
「欧州車のパクリ!」
「未熟なの日本の自動車、恥ずかしい!」
「こんな欧州人は絶対やらない!」と、
皆さま、口を揃えて御講釈垂れておられたかと記憶しておりますが、、、?
この時代は日産も、日本全体も、余裕があったんだな。