大幅なグレードアップを受けた新型4シリーズだが、巨大なキドニーグリルのインパクトばかりがもっぱら、話題の中心となりがちだった。だが進化の真価は、ピュアスポーツカーをも凌ぐダイナミクス性能にある。(Motor Magazine 2020年8月号より)
個性的なフォルムを前面に押し出したニュー4シリーズ
スタジオに現れた量産BMWニュー4シリーズのエクステリアデザインはちょっと驚いたことに2019年のフランクフルトモーターショーで登場した「コンセプト4シリーズ」とほぼ同じだった。「ちょっと驚いた……」と表現したのは、その公開直後に、SNS上では好き、嫌いが二極化した評判が拡散していたからである。
【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?
議論の中心は、「メガキドニー」と呼ばれる大きくて大胆なフロントグリルの採用だった。しかし、これこそがBMWが望んだ結果でもあった。すなわちここ数年、BMWのデザインはモデルチェンジでも変化に乏しく、またシリーズの間での違いもはっきりしないというクレームが多かったからだ。
こうして登場したのがこの大きく、大胆なデザインのグリルを持ったコンセプト4シリーズだったのである。私は個人的には賛同するが、ひとつだけ残念なことは立派なモノキドニーグリルの中央に、無骨な横長のナンバープレートが邪魔していること。フロントにナンバーを付けなくて良い州がある、北米マーケットが羨ましい。彼らだけがこの個性的な素晴らしいデザインを堪能できるわけだ。
ところでもうひとつ、デザイン上で大きな変化がある。BMWファンであれば、すぐにおわかりだと思うが、長年BMWデザインのアイコンのひとつとして温存されてきたCピラーの根本にあった「ホフマイスターキンク」が消滅したのだ。そうした点からもBMWが、この4シリーズからデザイン革命を起こそうとしていることがわかる。
一方、ボディサイズは旧モデルよりも全長が128mm伸びて4768mm、全幅は広がって1852mm、高さは6mm増えて1383mmとなるなど、低くワイドでスタイリッシュなスポーツクーペのラインを実現している。インターフェイスはBMWのすべての最新モデルに準じたオペレーティングシステム7.0を採用した12.3インチのモニターを持つデジタル仕様だが、ヘッドアップディスプレイ画面は70%広い。
ピュアスポーツに匹敵するハイパフォーマンスなシャシ
実は、スタジオでのスタティック取材に先立って、プロトタイプを公道で試乗するチャンスを得ている。テスト車は2L直4ターボエンジンを搭載した430iとM440i xDriveで、前者は258ps(190kW)と400Nm、後者は374ps(275kW)と500Nmをそれぞれ発生する。さらに後者はクランク直結のISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)による11ps(8kW)を発生する48Vマイルドハイブリッドテクノロジーを採用していた。
テストコースはミュンヘン郊外で、新型コロナ感染を避けるためにドライビングダイナミクスシャシ開発アプリケーション担当のヨース・ファン・アース氏がZ4を駆って先導、レポーターは単独でそれに追従するという異例のパターンだった。相手はプロフェッショナルテストドライバーでしかもスポーツカーのZ4。追いつくのさえ大変だったが、ニュー4シリーズのシャシポテンシャルはピュアスポーツカーに勝るとも劣らない非常に高いものだった。
その主な要因についてアース氏は、自身に満ちた口調で語った。「走りのポテンシャルをさらに高めるために、部分剛性を高める専用パーツを開発しました。おかげでバネ、ダンパー、そしてハンドルからの一層精緻なフィードバックを得ることができるようになりました。新しい4シリーズは、究極のドライビングマシンです」
このニュー4シリーズは今秋、10月24日から世界同時発売を予定している。最初に市場投入されるのは2種類の気筒エンジンを搭載した420i(184ps)と430i、そして直6搭載のM440i xDriveで、ドイツでの価格は4万5800ユーロ(約552万円)から6万6900ユーロ(約807万円)までと発表されている。日本での価格は現時点ではまだ公表されていない。(文:木村好宏)
■BMW M440i xDriveクーペ主要諸元
●全長×全幅×全高=4768×1852×1383mm
●ホイールベース=2851mm
●車両重量=1740kg
●エンジン= 直6DOHCターボ
●総排気量=2998cc
●最高出力=374ps/5500-6500rpm
●最大トルク=500Nm/1900-5000rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
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みんなのコメント
M4じゃなくても1000超えか。
みんな、仕事がんばろうぜ