ミドルレンジ市場へ参入したアルヴィス
実は、日本にも少なくないアルヴィス・ファンが存在する。半世紀以上前に廃業した自動車メーカーの貴重な例を後世に継ぐうえで、喜ばしい事実といえる。ただし、アジア大陸を挟む遠い位置関係にあり、お互いに不便なことも起き得る。
【画像】隠れたワークス・マシン アルヴィス10/30 同年代の量産車 蒸気機関ロードローラーも 全107枚
今回のアルヴィス10/30のエンジン始動に必要な木製ブロックは、まだ東京に保管されているらしい。それがないと、冷間時には大人2人の手が必要になる。
スターターモーターへの通電と同時に、キャブレターの吸気用トランペットを手で塞ぐ。筆者も手伝いながら、1.5L 4気筒エンジンが目覚めた。
ブルブルと震え、カラカラと音を放つ。1920年代のクルマでありながら、電動スターターを備えるという事実が、高級車であることを物語る。
キャブレターで後に名を馳せる、ホーリー兄弟が所有するコベントリーの敷地を、トーマス・ジョージ・ジョン氏が購入したのは1919年。小型車へ迫るランニングコストを叶え、大型車に準じた品質を備える、新モデルの開発へ着手した。
その頃、フォードは大衆車の先駆者といえるモデルTを英国へ導入。ロールス・ロイスは、高級車を提供していた。その間に位置するミドルレンジ市場への参入を、トーマスは目指した。
外部への技術開発で事業を拡大させつつ、早くも1920年には初の量産モデルの準備が整えられた。そのエンジンには、アルミ製のピストンが組まれていた。ラテン語で、ビスは強さを意味した。この2つを組み合わせ、アルヴィスというブランド名が与えられた。
3500rpmで盛大に振動し始めるエンジン
この象徴的なエンジンは、ベントレーのショールーム・マネージャーを務め、軽量なピストンの有効性を唱えた、ジェフリー・ド・フレヴィル氏に影響を受けたもの。黎明期にあり、サイドバルブ構造の単純な4気筒ユニットではあったが。
高品質な部品を積極的に採用し、一定の実績があった技術を可能な限りブラッシュアップ。当時の1.5Lエンジンとしては不満のないパワーを発揮し、高回転域まで滑らかに上昇した。
エンジンブロックには、冷却用の経路をシリンダー周辺だけでなく、バルブシート側にも均等にレイアウト。クランクシャフトにはニッケル鋼を、ベアリングにはリン青銅を用いるなど、新しい素材も採用されていた。
もちろん100年前としては、という注釈が付く。最高出力が発揮されるのは3500rpmで、ここまで引っ張るとエンジンは盛大に振動し始める。フロントガラスを囲むクロームメッキの部品も、激しく震えて形がわからなくなるほど。
それでも、その頃としては驚くべき、4速もあるマニュアル・トランスミッションが載っている。60km/hから70km/h前後の速度なら、落ち着いた回転域を保って運転できる。最高速度は、時速60マイル(約96km/h)が主張されていた。
今回の1922年式10/30は、非公式ながらアルヴィスのワークスチーム・レーシングカーといっても良かった。コーチビルダーのクロス&エリス社が手掛けた2シーター・ボディで、それ以上のスピードが狙われていた可能性はある。
1.5Lクラスで圧倒的な競争力を披露
最初のオーナーは、アルヴィスの開発ドライバーだったジョー・ブラウン氏。ワークスチームが既にしのぎを削っていた時代に、プライベート・レーサーとして参戦する機会を意図的に与えたようだ。
プライベート・ドライバーの駆るマシンは、量産モデルの品質を明確に反映すると考えられていた。メーカーが表に出ないことが、マーケティング的には有利に働いた。
10/30のステアリングホイールを握ったブラウンは、ダートコースを走るトライアル・レースへ出場。ロンドン=ホーリーヘッドやロンドン=エディンバラ、ロンドン=ランズエンドといったイベントで優勝を飾った。
ケント・オートモービル・クラブが開催したヒルクライム・レースでは、ファステストタイムを記録。1460cc 4気筒エンジンの信頼性は確かに高く、1.5Lクラスで圧倒的な競争力を見せつけた。
ところが後年、アルヴィスのブランドを継いだレッド・トライアングル社の技術者がエンジンをバラすと、排気量が100ccほど拡大されていたことを発見している。モータースポーツでの不正疑惑は、決して新しい問題ではなかったようだ。
慣れが必要なトランスミッション
実際に10/30を運転してみると、このマシンでロンドンからグレートブリテン島北部のエディンバラまで走破したという事実に、驚嘆させられる。現代的なモデルに甘えてきた、筆者の場合は特に。
トランスミッションの取り扱には、慣れが必要。1速へ入れる時は、かなりの力でレバーを押し込む必要がある。走り始めてからも、アクセルペダルの角度を加減しながら、次のスロットへ倒す作業が求められる。
クラッチを2度踏みつつ、適切な回転数までエンジンをなだめる。コツを掴めば、それほど難しくはない。シフトダウンは、ギアの回転を予想しながらアクセルペダルを軽く踏めば問題ない。
シフトレバーはドライバーの右側。ボディへ接する位置から伸びており、細いレバーの動きを、目で毎回確かめる必要がある。
ありがたいことに、コーンタイプのクラッチの繋がりは理解しやすい。ペダルは相当重いが、戦後の高性能モデルに必要な筋力と比べれば、遥かに優しい。
3速までは基本的に加速用。4速と大きく離れたギア比が、弱点のようだ。
一般的にクラシックカーでは、登り坂で徐々に減速し始めたら、ステアリングホイール上のレバーで点火タイミングを進めると、粘り強く登ることになっている。だが、排気量の小さい10/30では目立った効果は得られない。アクセルペダルを蹴飛ばすしかない。
この続きは隠れたワークス・マシン(2)にて。
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