いま最も運転の楽しいバッテリーEV
一気に開花した、電動化技術。2000馬力超えのハイパーカーから、豪奢なサルーン、小さなホットハッチまで多彩なモデルが登場しているが、ピュアなドライバーズカーとして開発された最初の1台といえるのが、ヒョンデ・アイオニック5 Nだ。
【画像】いま1番運転の楽しいEV降臨! ヒョンデ・アイオニック5 N 走り自慢の電動モデルたち 全121枚
ヒョンデの高性能部門、Nパフォーマンスは絶好調。フォード・フォーカス RSの開発を率いた1人、ティロン・ジョンソン氏を招聘するなど、優れた人材確保にも意欲的だ。内燃エンジンで走るi30やi20のホットハッチ仕様は、クラス最高の仕上がりにある。
かくして、主観だけでなく客観視しても、アイオニック5 Nは今最も運転の楽しいバッテリーEVだ。通常のアイオニック5をベースに、大幅な手が加えられている。早速、詳しく見ていこう。
ボディシェルは、溶接ポイントを42か所追加し高剛性化。接着剤は2.1m、長く塗られている。ステアリングとモーターのマウント、サスペンション・サブフレームは強化された専用品が組まれる。
駆動用モーターは2基載り、フロント側は226ps、リア側は383psを発揮。システム総合での最高出力は、通常609psとなる。オーバーブースト機能を用いると、最大10秒間650psへ高められる。
駆動用バッテリーは84kWh。急速充電能力も、最大350kWまでとかなり速い。
パワートレインの熱管理は共通の課題といえるが、ドライブモードを「Nレース」へ切り替えると、僅かにパワーが絞られ加熱を抑制。8分切りのペースで、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェを2周できるらしい。
エンジン車に乗っているような変速機能
インテリアは、サポート製の高いシートと高剛性なペダル、上質な内装素材などでアップグレード。高性能であることを、静かに主張する。レイアウトは論理的で、主要な機能には実際に押せるハードボタンが用意され、運転中でも扱いやすい。
ステアリングホイールには4つのボタンが追加され、6種類のドライブモードとオーバーブースト機能を操作できる。任意のプリセットを保存も可能だ。
駆動用モーターの反応、ステアリングの重さ、ダンパーの硬さ、リアのリミテッドスリップ・デフの効き、スタビリティ・コントロールの介入、ヘッドアップ・ディスプレイのグラフィックなどが調整可能。合成エンジンノイズも、オン/オフできる。
その合成ノイズをオンにすると、擬似的な変速機能を有効にするかも選択できる。内燃エンジンの高性能モデルに乗っていると勘違いするほど、リアルなのが面白い。
Nブレーキと呼ばれる機能で、回生ブレーキの強さも任意に調整できる。最も強くすると、アクセルオフでABSが動作するほど強力な減速を得られる。
フロントとリアの駆動用モーターは、トルク発生の割合を指定でき、ドリフト・オプティマイザーと呼ばれる、ドリフトで遊べる機能も実装。そもそもクラッチ操作は不要だが、ローンチコントロールも備わる。
電圧800Vの電動パワートレインは、極めてタフ。20分間ハードに走り、20分充電し、再び20分責め立てるというルーティンを連続でこなせるそうだ。0-100km/h加速は、3.4秒がうたわれる。
トップレベルの動的能力 タイカン以上の回頭性
ドライブモードの変化度はかなりワイド。広いサーキットを数周しただけでは、すべてを理解しきれない。秘めた実力の全貌を、一般道で引き出すことも不可能だろう。
ドライブモードを1つ引き上げ、合成ノイズと変速機能をオンにしてコースイン。ホットハッチのi30 Nに搭載される8速ATの開発技術者が、このシステムにも携わったとか。
内燃エンジン車に乗り慣れている筆者にとって、この2つのギミックはサーキットで有効。クルマの状態を把握する要素として、エンジンノイズがあるとブレーキングポイントやコーナリングラインを探りやすい。
合成された音だから、確かに多少の違和感はある。内燃エンジンが珍しい機械に感じる時代が来たら、余計な音に聞こえるかもしれない。そんな時は、オフにすれば良い。少なくとも筆者は、この機能を気に入った。
アイオニック5の動的能力は、トップレベル。車重は2235kgと軽くなく、ダンパーをハードな状態にしても、加減速時のピッチや旋回時のロールは小さくない。そのかわり、負荷に応じてステアリングが重くなり、確かな手応えが伝わってくる。
ブレーキも、バイワイヤ制御なことを感じさせない。ペダルの重み付けは、一般道での使い勝手を考えれば丁度いい。
ブレーキを引きずりながらコーナーへ突っ込めば、フロントノーズが効果的に食らいつく。前後のトルクバランスを変更せずとも、ポルシェ・タイカン以上の回頭性を披露する。コーナリングラインの調整域も、より広い。
一般道でも充足感はずば抜けて高い
リアモーターの方が僅かにパワーが勝り、タイヤは275/35 R21のピレリPゼロ。前後の重量配分は、ほぼ均等だ。スタビリティ・コントロールをオフにすれば、ドライバー次第で思い切り振り回すこともたやすい。
コーナーの頂点を過ぎたら、グリップを活かしつつテールスライド。高速コーナーでも、僅かにオーバーステア傾向を示すほど。同社の技術者は、「ドリフトマシンではありませんが、ドリフトは可能です」。と控えめに話すが、極めて楽しい。
ドリフト・オプティマイザーも特筆に値する。濡れたスキッドパンではアクセルレスポンスが尖すぎる印象ながら、テールスライドの練習には好適だろう。
一般道でも、充足感はずば抜けて高い。欧州仕様として仕上がったアイオニック5 Nは、若干しなやかなダンパーを得た。それでも、通常のアイオニック5よりはハード。ステアリングは正確で、反応がシャープで小気味いい。
荒れた路面でも安定性は高いが、鋭敏さも備わる。フォーカス RSだけでなく、三菱ランサー・エボリューションにも通じる個性がある。
4本のタイヤがアスファルトを掴み、加速力も驚異的。フォルクスワーゲン・ゴルフ Rのように。ただしアイオニック5 Nは、アクセルオンでのライン調整が一層滑沢だ。
確かに、車重は2.2tを超えるため、妖精のように身軽なわけではない。しかし、適正な運転姿勢と正確な操縦系が相乗し、カーブへ積極的に飛び込んでいける。ハードに責め立てるほど、アイオニック5 Nは小さく感じられていく。
従来的な運転の楽しさを見事に蒸留
ロングドライブでの快適性も、大きな魅力。ダンパーをソフト側に振れば、長時間の移動もリラックスしてこなせる。サーキットを走った時とは、まったく違うクルマへ乗り換えたように。それほど、ドライブモードが叶える特性の幅は広い。
さて、このクルマの英国価格は、6万4956ポンド(約1228万円)から。かなりの金額だが、電動パワートレインの性能や動的能力、広々とした車内空間などを加味すれば、納得できる範囲。むしろ、お手頃なドライバーズカーといってもいいだろう。
僅かに人工的な印象は拭えないが、従来的な運転の楽しさを見事に蒸留したといえる、バッテリーEVのアイオニック5 N。ギミックのエンジンノイズや疑似変速モードを備えていても、その楽しさはリアルだ。
高度な電動パワートレイン技術にも唸らされる。ドライバーとの高次元での一体感を実現した、画期的なバッテリーEVだといっていい。数時間試乗したものの、まだ探り足りない気分だった。
2024年の英国ベスト・ドライバーズカー選手権へ、ノミネートすることは確実だろう。まだ、だいぶ気は早いけれど。
◯:驚くほど調整域の広い操縦性 ドライブモードの振り幅 鋭い直線加速
△:やむを得ないとしても、優れない電費効率 高めのお値段
ヒョンデ・アイオニック5 N(欧州仕様)のスペック
英国価格:6万4956ポンド(約1228万円)
全長:4715mm
全幅:1940mm
全高:1585mm
最高速度:259km/h
0-100km/h加速:3.4秒
航続距離:447km
電費:5.1km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2235kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:84.0kWh
急速充電能力:350kW
最高出力:650ps(オーバーブースト時)
最大トルク:75.7kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
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