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【試乗】2代目シトロエンC5はマニアにのみ愛される「特殊なクルマ」ではなかった【10年ひと昔の新車】

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【試乗】2代目シトロエンC5はマニアにのみ愛される「特殊なクルマ」ではなかった【10年ひと昔の新車】

2008年、2代目シトロエンC5が先代とは大きくイメージを変えて登場した。その姿はどこかアウディやBMWのテイストを感じさせる骨太なもので、シトロエンファンを驚かせた。しかし乗ってみれば、やはりシトロエンらしい優しさのあるものでもあった。今回は新型C5日本上陸間もなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年11月号より)

ダイナミックで骨太にデザインは上級Dセグメントカーの雰囲気
第二次大戦後まもなく、フランスの田舎道をトコトコ走る質素なクルマ、それはシトロエン2CVだった。悪路を走っても「積み荷の卵が割れなくてよろしい」と評されたソフトな乗り心地が特徴で、性能はとるに足らなかったが、その実用性が買われ、たちまちフランスの「国民車」となる。

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そしてシトロエンは1955年に大型高級車、DS19をパリサロンで発表する。これがとんでもなく先進的なクルマで、スタイリングとメカニズムは当時の技術水準を大きく飛び越え、各国の自動車メーカーに衝撃を与えた。

とくに車高調整が可能なハイドロニューマチックサスペンションシステムはステアリングやブレーキまでも油圧でコントロールする仕組みだった。それゆえ、初期トラブルに見舞われることも少なからずあったのだが。

農民(や労働者)の実用車の2CVと、フランス大統領の公用車に使われたDS。この2車はまったく両極端にあるクルマだが、共通するキーワードは「独自の乗り心地」だった。現在のフラッグシップモデルであるC6、そして新しいC5は伝統的なシトロエン流サスペンションのもたらす乗り心地が最大のセールスポイントなのだ。

さて、試乗会で対面した新型C5のスタイリングは従来型の少々華奢なイメージから大きく変貌、ダイナミックで骨太になり上級Dセグメントカーの雰囲気が漂う。パッと見にはドイツ車、具体的には各部にどこかアウディ、BMWのジャーマンテイストを感じる。そしてC6ほどすっ飛んで(濃く)ない。世界を見据えた販売戦略としては、これが正しい方向のデザインだろう。

しかし顔つきはやはりシトロエン。ダブルシェブロンと呼ばれる「ヘの字」を縦に二連並べたようなシンボルマークが強い個性を放つ。

これは創業者のアンドレ・シトロエンが自動車生産を始める前にギア工場で作っていた高効率の「やまば歯車」(別名ダブルヘリカルギア)をモチーフとした由緒あるマークだ。好き嫌いが分かれそうだが、私は支持派。吉徳の雛人形は「顔がいのち」というがクルマも同じ。顔を一瞬見ただけでブランドが判別できるクルマは魅力的、つまり商品性が高い。

走り出してすぐにフラットな乗り心地を実感
今回試乗できたのはV6エンジンを搭載する3.0エクスクルーシブ(セダン)とツアラー(ブレークから改称したワゴン)の2車だった。

まず、セダンに乗り込み軽井沢の別荘地を抜け、鬼押出し方面に向かった。車幅は1860mmあるが、前方視界とシートポジションが適切なので、狭い道でもストレスはさほど感じない。

国道に出て流れに沿って走ると、うーんと納得。C6に近い乗り味だが、そこまでまったりしていない。適度にしゃっきり感がある。日本に導入される新型C5にはハイドラクティブIIIと呼称する、オイルと窒素ガスがコイルスプリングとダンパーの代わりとなって制御するシステムが全車(2Lモデルも)に標準装備される。

このシステムは先代C5がデビューした時に採用されたものの進化・熟成版で、すでに8年の実績があるから信頼性は高い。過去には「ハイドロが壊れて動かない」というシトロエン党の嘆き節をよく聞いたものだが、今は昔の物語といっていい。

センター部分が回らずリムが回転するセンターフィックスステアリングは、エアバッグを常に正しい角度で展開させることと、慣性重量を低減させて上質な操舵感覚を得るのが目的。なんら違和感なく操作性は上々である。

ワインディングロードでペースを上げてもハイドラクティブIIIがいい仕事をしてくれるのがわかる。走行状況によって自動的に、「コンフォート」、「スポーツ」に切り替わりフラットな乗り心地を示す。タイヤは245/45R18のワイドサイズだがその突き上げ感もうまく吸収し、まさしく高級車の趣き。さらに特筆すべきは防音ラミネートガラス採用による静粛性の高さがトップレベルにあるということだ。後から乗ったワゴンボディのツアラーも同様である。

プラットフォームはプジョー407と基本的に同一形式なのだが、まったく別のクルマになっていることを実感。ただ、通常のメカニカルサスペンションに乗り馴れたユーザーがいきなり新型C5で走り出すと、初めはそのふんわり感に少しとまどうかもしれないが、心配は無用。すぐに馴染む。V6の3Lエンジンは排気系が改良され出力で3kW、トルクが55Nmアップし、出力特性、静粛性ともに不満のない仕上がりで、シーケンシャルモード付き6速ATとのマッチングも良好。

ハイドラクティブIIIサスペンションを持つ新型C5はもはやマニアが選択する「特殊なクルマ」ではなくなった。独自の優れた乗り心地を提供する完成度の高いDセグメントカーとなった。これならばアウディA4、フォルクスワーゲンパサート、BMW3シリーズなどの強豪と十分に渡り合える。性能面のみならず、商品力においても「革新的シトロエン車」と断言できる。(文:Motor Magazine編集部/写真:保坂 明)

シトロエン C5 3.0 エクスクルーシブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4795×1860×1470mm
●ホイールベース:2815mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2946cc
●最高出力:155kW(215ps)/6000rpm
●最大トルク:290Nm/3750rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・72L
●10・15モード燃費:ーkm/L
●タイヤサイズ:245/405R18
●車両価格(税込):479万円(2008年当時)

シトロエン C5 3.0 ツアラー エクスクルーシブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4845×1860×1490mm
●ホイールベース:2815mm
●車両重量:1790kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2946cc
●最高出力:155kW(215ps)/6000rpm
●最大トルク:290Nm/3750rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・72L
●10・15モード燃費:ーkm/L
●タイヤサイズ:245/405R18
●車両価格(税込):499万円(2008年当時)

[ アルバム : シトロエン C5 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

2件
  • V6 ツアラーに乗ってます。
    最後のハイドロ最後のマルチシリンダー 今12年12万キロ、二度目の足回りエンジンのリフレッシュを150超かけてしたばかりです。
    新車に近い乗り心地が帰ってきました、
    維持できなくなるまで乗ります。
  • 最初にC6を試乗だったからか、C5ハイドラクティブ今ひとつ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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