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【難解か否や?】フランスの高級車とは EVまで揃った「DS」の今 イッキ乗りしてみた

掲載 更新 6
【難解か否や?】フランスの高級車とは EVまで揃った「DS」の今 イッキ乗りしてみた

このクルマ、「DSっていいます」

text:Kazuhiro Nanyo(南陽一浩)

【画像】フランス人のための新しい高級車【DS三兄弟】 全157枚

photo:Masanobu Ikenohira(池之平昌信)

それは試乗会場のホテルの車寄せでDS 3クロスバックEテンスを撮っていた時のこと。

後ろから、とあるドイツ製2シーター・スポーツカーに乗ったマダムが声をかけてきた。言っちゃ悪いが、使いこなしていない高性能に退屈が乗せられている、そんな雰囲気の。

「すいませ~ん、そのクルマ、何てブランドのですか? ヒュン○イ?」

すでにDS 3クロスバックのICE版の方に好印象で乗り終え、脳内パリ状態だったため(筆者はパリに10年以上住んでいた)、フランスで赤の他人がおちょくってきた時の感覚で、小意地の悪い答えが反射的に口をつきかけた。

「もちろんそう見える方には、そういうものなんじゃないですか」

マウントとりたいのかクルマに興味あるのか。でもマダムが美人なら、尻尾ふって視線ガチで歩み寄って

「何なら、もしお試しになりたければ、お伴しますが?」
と、にっこりキーを差し出す。

そんな流れがフランス的な肉食思考ながら、生憎ここは横浜で、クルマは借りもので、試乗会の真っ最中。

ここまでコンマ数秒の後、コンプライアンスたっぷり目に現実にはこう答えた。

「いえ、DSっていいます」
「どこの国のですか?」
「フランスです」
「そうですか、お邪魔しました~」

秘せずは花なるべからず、そんなクルマ

かくしてマダムはさくっと走り去った。

おそらく自分のセンスのリトマス試験紙として、アジアかハワイ便の機内で見たCM辺りの記憶から、酸っぱめの「ヒュン○イ」が挙がったのだろう。

「フランス」と聞いて中和されたかのような彼女の笑みは、マスクの上からでも見てとれた。

とまぁ前置きが長くなったが、DSのプロダクトとブランド認知度が順調であることが分かった。

というのも、フランスの高級またはラグジュアリー・ブランドは、「道ですれ違う誰もが気づいてふり返る」ものではなく、「知る人ぞ知る」ものなのだ。

「それってどこの?」と人に聞かれる程度に。「秘すれば花」というヤツだ。

HとかLVが、高級だから高級鞄に群がる群衆を煙たそうにするのもそういうことで、いずれ実車のDS 3クロスバックEテンス、とくに白内装には、気づく人なら気づくオーラが備わっていることが確認できた。

ギンギンキラキラと対極 地味ハデの正体

オールラインナップ試乗会とはいえ、まだ3と7のふた型で、Eテンスを加えてようやく3モデルになったDS。

とりあえず「フランスもの」「パリもの」の運命で、お洒落というステレオタイプに括られ、ハイファッションだがクセ強めのデザインでキラキラしたクルマのように評されてきた嫌いがある。

でも今やドメスティックな軽自動車やミニバンの方が、よほどアクの強さでもクロームの面積でも優っているのは明らかだ。

それにハッチバックのDS 3の頃から用いているシャークフィンの意匠は、国産車にパクられまくっている。そういうオリジナリティの無さを流通台数で飽和してうやむやにされていることに、気づかれないだけで。

手始めにDS 3クロスバックの外観だが、そのクローム使いはマトリックスLEDライト周りやポップアップのドアハンドルなど、インテリジェント制御のテクノロジーが用いられ目線を向かわせたいポイントに限られる。

逆にいえば、視線を集めなくていい部分を敢えて光らせ、目立とうとするロジックではない。フロントグリルのクロームも、格子ひとつひとつの内側に回り込んでいて、光を拾えば光る程度で、中央のロゴを際立たせる脇役使いでしかない。

ちなみに都合上、「ロゴ」といったが、DとSのアルファベットを組み合わせた意匠は「モノグラム」と呼ぶ方が適切だ。動物などを用いた商標よりクラシックで署名性が高く、旧くは王侯貴族や聖職者が手紙の封蝋に押したような、そんな用途を想像されたし。

それがシトロエンのダブル・シェヴロンという、インダストリアルな意匠から派生して、現代的なモノグラムになったことに、進歩と遊びがある訳だ。

光って見える? そんな馬鹿な!

内装でも留意すべきは、外装のクローム使いと同じく「光らせ方」だ。

基本的に、間接光でぼんやりと浮かぶように光らせるのが、フランスのハイエンドひいてはDSの好む方向。

パティスリー好きの人には釈迦に説法となるが、エフェ・タミゼといって、単なる艶消しマットの表面でなく、ココアパウダーやアイシングシュガーを網を通してふりかけたような質感が、見た目に優しく触ってみたくもなる、そういう効果で内装全体が統一されているのだ。

いわばDSを構成するディティールは、じつはキラキラ目的ではなく、表面上はそう見えるものばかり、ということ。

例えばセンターコンソール上、スイッチ周りの「ギョシェ彫り」は、18世紀にブレゲが懐中時計の文字盤に用いた際は、反射防止の加工だった。

つまり「キラキラ光って見える」のは、知識がなければ相対的にそう見える、という話で、細かな凹凸の突起は、ウインドウスイッチを探り当てる触覚上の手がかりとして丁度いい。

他にも地味ハデなディティールとして、パール・ステッチとパティ―ヌ・レザーがある。

改めた乗ったICE版のサプライズ

前者(パール・ステッチ)は、明色ステッチが線でなく粒になって素材を縫い合わせるがゆえ、逆に光って見えるという。

後者(パティ―ヌ・レザー)は紳士靴でおなじみ、ダメージ加工ではなくトーン重ねで素材感と奥行を出す。これらもキラキラさせたくてやっている訳でなく、結果そう見える人もいるという話なのだ。うーん、いけず。

とまぁ、静的質感で好悪が分かれることは否定しない。よい趣味とは悪趣味にはつねに目ざわりなものだし、その逆も然りなのだから。

今回の試乗車はDS 3クロスバックもDS 7クロスバックもICE版が「オペラ」、前者のEテンスが「リヴォリ」という内装。いずれも実在の地名だが、現地を訪れるとか知っておく必要は別になく、ミニでいうメイフェアやケンジントンと同じと思えばいい。

3台のうち、個人的にベスト・サプライズは、年次改良で練り上げられたであろうDS 3クロスバックのICE版だった。

横浜の市街地で、アイドリングストップと再始動の境目をほとんど感じさせない。

直3のFFなのに、それほど振動がなく静粛性が高いのだ。

1.2Lターボの130ps仕様は、それこそお手本のようなダウンサイジングターボ。ハミングのように軽快な音とフィールで、唸らせずとも力強い。Bセグながら前席がアコースティックガラスで二重に外界と仕切られていたり、フロントサスに軽量高剛性のアルミ平断面アームを用いるがゆえの効果だろう

車格や見せびらかしではない「高級車」とは

そもそもリアシートにふんぞり返るでもない、自分でステアリングを握って街で扱いやすいサイズ感で好きなところに繰り出せる「小さな高級車」というジャンル自体、フランスの発明品だ。

その文脈でDS 3クロスバックEテンスの「リヴォリ」、つまりダッシュボードからシートまで心地よい白にモフッと包まれるインテリアを目にすると、単なるフェミニン内装ではないな、と思う。

ダッシュボードの助手席側の加飾パネル部に、白いナッパレザーとダイヤモンドステッチがこの上なく効いている。

この内装のためだけに、ICEからEVに切り替える人が絶対にいる。

そもそも、EVがEVであることを主張する感覚が、DS 3クロスバックを前にすると、過去のものと思える。

Eテンスには2年前、生産直前モデルに本国でちょい乗りして以来。あの時はまだ荒っぽくバタつく感じの後車軸が、すっかり落ち着いていた。浅間から三ツ沢へ上がる登りのS字が続く区間で、加速といいアクセルを軽く抜いた時のノーズの入り方といい、素晴らしく心地よい。

第三京浜からK7経由の首都高では、ICE版と変わらぬしなやかな足まわりと、輪をかけて静かな乗り心地に舌を巻いた。抜きん出た静粛性としっとりとしたステアリングフィール、滑らかな上下動と豊かなストローク感が、ICEでもEVでもキチンと表現されているのだ。

揺らぎとなじみ、DS 7クロスバック

考えてみれば2020-2021インポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、目下の絶賛を集めるプジョー208が使用するCMPプラットフォームの初出が、DS 3クロスバックだったりする。

他にもかなりのコンポーネンツを共有しているが、有りモノをギャルメイク的に「盛る」加飾ではなく、むしろコスメティックでない部分でDS 3クロスバックは、最初から高級車としてキチンと造り込まれている。

最後に乗ったのはDS 7クロスバックだが、サルーンのDS 9が控えているとはいえ現時点でフラッグシップだけに、やはりシートは厚みもクッションも大ぶりで柔らか。70年代のSMか時計のブレスレットのようなブロック状の意匠は、小さなレザーの継ぎ合わせでなく、仕入れが難しいであろう1枚皮で仕立てられている。

ドライブモードでコンフォートを選ぶと、前方路面をカメラで読み取ってサス減衰力のアクティブ制御が始まる。昔のDSのように、といったら大袈裟だが、船のような揺らぎ感と極上の乗り心地が味わえるのは、やはりこのモードだ。

DS 3クロスバックのフットワークがハミングかスキップのようだとすれば、DS 7クロスバックのそれは、まさしくトロット。

そのリズム感と柔らかさは確かにドイツ的な高級車にはない、独特の肌なじみでもって迫って来る。

残念ながら今回は用意がなかったが、外装クロームがマットブラック仕上げでアルカンタラ内装となる「パフォーマンスライン」も、もう1つのフレンチ・ラグジュアリーの解として注目したい。

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みんなのコメント

6件
  • 記事が読みにくく鼻に付く嫌味な感じ。
  • おフランスがお好きなのは分かった。
    クルマ云々より記事の方が難解過ぎて読む気無くす。
    ダブルシェブロン見てシトロエンと分からんオバサン相手に何鼻息荒らげてるやら。
    もっともヒュンダイと見ても仕方ない外見ではあるし、オーラとか分からん。という点でオレならオバサンに軍配挙げるな。
    昔のDSって同じアヴァンギャルドと言ってももっと品良く慎ましく纏まってた。
    オラオラが過ぎててDS(笑)としか見えん。
    ここんとこ小粋なクルマが多かった分残念臭を纏いすぎている気がする。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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