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お正月にテレビで観た砂漠を走るラリーマシン! その衝撃まさかハーレーでも!? 海を渡りダカールへ!!

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お正月にテレビで観た砂漠を走るラリーマシン!  その衝撃まさかハーレーでも!? 海を渡りダカールへ!!

過酷なデザートラリーで戦闘力を証明

 年末年始にかけて、モナコから海を渡ってダカールを目指す「Africa Eco Race(アフリカエコレース)に、『パンアメリカ1250スペシャル』で参戦したジョアン・ペドレロ選手が、マキシトレイル部門で見事1位! 総合25位でフィニッシュしました。

【画像】ハーレー唯一のアドベンチャーモデル「パンアメリカ」を画像で見る(15枚)

 ハーレーダビッドソン・ヨーロッパ/中東/アフリカ地域の本部長(Vice President)コルヤ・レブストック氏は、「このレースの結果とジョアン・ペドレロ選手の素晴らしいパフォーマンスに興奮しています。当社のブランドは冒険とパフォーマンスに根ざしており、パンアメリカがこのレースを完走することは、テクノロジーとパフォーマンスの限界を押し広げた素晴らしい前例でしょう」と述べています。

 15回目を迎えたアフリカエコレースは、北アフリカの砂漠およそ6500kmを約2週間かけて走破する壮大で過酷なラリー。南米でも中東でもなく、海を越えてアフリカ大陸を走り、セネガル共和国のダカールでゴールするのは、かつてお正月にテレビでダイジェスト版を観て興奮したパリダカを思い出さずにはいられません。

 ジョアン・ペドロはパンアメリカで「Basella Race2023」などにも参戦し好成績を収めたほか、4月には難関の「Baja Extremadura」に出場し、マキシ・トレイル部門で優勝し、7月には同部門で優勝して「バハ・エスパーニャ・アラゴン」を完走しました。パンアメリカとともに実績を着実に積み重ねています。

 なお、総合優勝はアプリリアの『トゥアレグ 660』で、ファクトリーライダーを務めたイタリアを代表するトップライダー・ヤコポ・チェルッティ氏でした。

電子制御サスの恩恵は大きい

 ハーレーダビッドソンにとって新境地となるアドベンチャーツーリングというカテゴリーへ、2021年に新規投入したモデル『パンアメリカ1250スペシャル』はいったいどのようなバイクでしょうか。改めて乗ってみます。

 ダートでの高い走破性を考慮し、前後サスペンションのストロークが長く背の高いアドベンチャーモデル。それゆえシート高が上がり、足つき性に不安を抱きがちですが、停車時に車高を自動で落とす「アダプティブライドハイト」(ARH)を搭載する『パンアメリカ1250スペシャル』なら心配無用となっています。

 ARH、これは心強い装備と言えるでしょう。減速に伴ってシート高を落とし、電子制御によって停止時には車高を50mmダウン。地面におろす足がしっかりと地面に届き、一時停止も苦になりませんし、ブーツのソールをどこへ置くか絶えず気にしなければならないオフロードでも大きな武器となるのは言うまでもありません。

足つき性に優れるから引き起こしでも踏ん張りが効く

 ARHの装備によって足つき性を改善し、大排気量アドベンチャーへのハードルを引き下げることに成功しています。これは『パンアメリカ1250スペシャル』だけではなく、ハーレーの他のモデルにも流用されていく予感がしてなりません。

 というのも、シート高はさほど高くありませんが、同社のグランドツアラーは400kgにも迫るヘヴィ級揃いで、フルドレッサーのフラッグシップ『ウルトラリミテッド』の車体重量は416kg。シート高は740mmとさほど高くありませんが、その巨体を引き起こすにはカカトまで足の裏を地面にしっかりと付け、踏ん張りたいところなのです。

 それは日本だけでなく、欧米のライダーも同じ。ユーザーの要望から、2015~2017年式ではツーリングファミリーの最高峰にも『ウルトラリミテッド ロー』という車高を下げたモデルがラインナップされていました。

『パンアメリカ1250スペシャル』に導入された「アダプティブライドハイト」ですが、近い将来に重量級モデルに採用される可能性もあるでしょう。それほどに『パンアメリカ1250スペシャル』に乗っていると、ありがたさを感じるのです。

ツアラーとしての能力が非常に高い

 話を戻しましょう。『パンアメリカ1250スペシャル』はウインドプロテクションに優れ、スピードレンジが上がってもクルージングが快適です。長距離をそつなくこなすには高速巡航性能も重要ですから、ツアラーとしての能力もかなり高いと言えます。

 また、『パンアメリカ1250スペシャル』には純正オプションでハードケース(トップケース+左右パニア)も設定されていますから、積載力でもグランドツアラーらにひけをとりません。

ハーレー十八番の旅バイク

 そもそも“長旅”なら、広大な国土を持つアメリカで生まれ育ったハーレーダビッドソンが得意とするところです。創業120年を超え、古くから北米大陸横断という果てしないロングライドも前提にモデル開発がされ、穏やかでゆったりとしたライドフィールのグランドツアラーを長きに渡ってリリースし続けてきました。

 ロングライドのためにホイールベースを長くし、エンジンはロングストロークで低中速のトルク重視に。防風性能や積載力も目をみはるものがあります。

 しかし新境地となる「アドベンチャー」というセグメントでは、ダート性能も高い次元で求められます。これまでのロー&ロングな車体、味わい深く心地良い鼓動を伴うパワーユニットで対応というわけにはいきません。そこで新たにシャシーとエンジンを開発し、2021年にデビューしたのが、このPAN AMERICA(パンアメリカ)という新シリーズです。

 伝統のVツインエンジンはV字の挟み角を空冷時代の45度から60度に広げ、ダウンドラフト吸気のためのスペースを確保するなどし、ヘッドはOHVからDOHC4バルブへ劇的な進化を遂げました。これが「レボリューションマックス」エンジンです。

幻のハーレー水冷V4エンジン

 じつはハーレーの水冷エンジンは、1976年という早い段階からポルシェとの技術提携によって開発がスタートし、1981年には『NOVA PROJECT』とネーミングされた水冷V型4気筒エンジンの存在が明らかになっています。

 市販化には至りませんでしたが、『NOVA PROJECT』のモックアップは、今もハーレーダビッドソンが本社を構える米国ウィスコンシン州ミルウォーキーにある公式ミュージアムに展示されています。

打倒ドカで開発されたVR1000

 そのテクノロジーは1994年、ロードレースにフィードバックされました。アルミツインスパーフレームに水冷60度VツインDOHC4バルブエンジンを搭載するハーレーダビッドソンのファクトリーレーサー『VR1000』が、AMAスーパーバイク選手権にフル参戦したのです。

 打倒ドゥカティを目指し、プロジェクトは1988年にスタート。135馬力超える強力なパワーユニットを完成させ、ホモロゲーション獲得のために50台を販売しつつ、当時盛り上がりを見せたツインレースへ挑んだのでした。

 AMAスーパーバイクでのレース活動は、2001年まで8年間に及びます。この間、ミゲール・デュハメル、フリッツ・クリング、ダグ・チャンドラー、トム・ウイルソン、クリス・カー、パスカル・ピコッテ、スコット・ラッセルら、錚々たるライダーをファクトリーチームは起用したものの、大きな戦果はクリス・カーが1996年第2戦ポモナで獲得したポールポジションと、同年第5戦ミッド・オハイオでの2位表彰台(ウイルソン)、99年にピコッテが第4戦シアーズポイント3位と最終第11戦パイクスピーク2位を果たしただけと、満足のいくものではありませんでした。

水冷エンジンがVロッドで市販化!

 ワークス参戦最後の年となった2001年シーズン、ハーレーダビッドソンはついに市販モデルに水冷60度Vツインを採用します。世界中のバイクファンらが注目した『V-ROD(ブイ・ロッド)』です。

『VR1000』のボア・ストロークは98x66mmで排気量995ccでしたが、『Vロッド』の「レボリューション」エンジンはボア・ストロークを100x72mmで1131ccとしました。前傾姿勢となるスーパースポーツタイプではなく、ロー&ロングなドラッグレーサースタイル。2007年式ではボアを5mm拡大し、1246ccへとスケールアップしています。

VVT採用でさらなる進化

 こうした歴史を踏まえつつ、ハーレー水冷60度Vツインはパンアメリカで『レボリューションマックス』へとさらなる進化を果たしました。ボア・ストロークを105×72.3mmとし、排気量は1252cc。可変バルブタイミング機構(VVT/バリアブルバルブタイミング)を新採用したことで、ダートで多用する低中回転域で扱いやすいトルクを発揮しつつ、トップエンドもDOHC4バルブらしく気持ちよく伸びます。

 ちなみに可変バルブタイミング機構は、昨夏デビューした『CVOストリートグライド』および『CVOロードグライド』のニューエンジン「ミルウォーキーエイト121VVT」にも採用。『レボリューションマックス』で培われた技術が、メインストリームであるビッグツイン系にも受け継がれたのでした。

スーパーフーリガンレーサーで活躍

 そして驚くことなかれ、パンアメリカはアドベンチャーラリーだけでなく、ロードレースにも挑んでいます。『ヨコハマホットロッドカスタムショー2023』(12月3日/パシフィコ横浜)のライドインショーで会場入りし、ハーレーダビッドソンのブースで展示されたのが、紛れもなくそのリアルレーサー!

 アメリカでいま盛り上がりを見せる市販車レースシリーズ「AMA Moto America スーパーフーリガンナショナルチャンピオンシップ」に参戦する2台のマシンでした。

 これはカリフォルニアに拠点を置く『SUICIDE MACHINE COMPANY』が製作したパンアメリカベースのロードレーサーで、ビルダー兼ライダーのガルダド兄弟によれば「パンアメリカはサーキットでも高いポテンシャルを発揮する」とのことです。

 スイングアームやホイール、サスペンション&ブレーキをはじめ、スーパースポーツ顔負けの足まわりで、見るからに戦闘力が高そうではありませんか。センターアップ2本出しマフラーなどを見ていると、こうしたロードスポーツ仕様へのカスタム、あるいはニューモデルへの期待も高まるのでした。

水冷Vツインハーレーは可能性無限大!!

 何が言いたいかと言うと、着実に進化を遂げ技術を積み上げてきたハーレーの水冷60度Vツインは、一線級の競技でもついに通用するレベルに達しているということです。

 それを思いつつ乗ると、より頼もしく、なんだかワクワクしてきます。このまま『パンアメリカ1250スペシャル』でまた、未舗装路を含むロングツーリングに出かけたくなるではなりませんか。

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