■レクサスやマセラティで本気でラリーに参戦!
占有された公道が舞台の競技であるラリー。世界ラリー選手権(WRC)を頂点に、世界各地で毎週のように様々なラリーが開催されています。もちろん日本でも開催されているのだけど、海外と比べるとどうしても地味になりがちだし、よく分からないって人も多いはず。
これはヤバい!レクサス「RC F」の2020年モデル発表! 限定モデルはもっとスゴい?
様々な事情があって、海外のように大勢のギャラリーが詰めかけたり、見た目にも派手なクルマが爆音で走っていたり、といったことは難しいのです。とはいえ、国内ラリーの頂点である全日本ラリー選手権(JRC)は競技として見るととてもハイレベル。
とんでもない争いが繰り広げられているのです。それを間近で観ることが難しいのがなんとももどかしいのだけど。
そんな全日本ラリーに参戦しているのは、スバル「WRX STI」や三菱「ランサーエボX」やトヨタ「86」や「ヤリス」といった車種。最近ではWRCにも参戦している海外メーカーの派手でやかましい車種も参戦していて、2021年からは一定の基準さえ満たせば海外登録の車も参戦できるようなので、車種が増えそうな雰囲気。
しかし、現状はいかにもな感じの日本車で占められています。
補修部品が容易に入手できることや、メーカーの支援の有無などがその理由。競技である以上は勝つために走っているわけなので、少しでも勝てる可能性のある車種を選択するのは当然といえます。
だけど、世の中には天邪鬼というか変わり者というか、他人とは違うクルマで走りたいという層がほんの少しは存在します。今回紹介する2台もそんな人たちが選んだクルマ。普通はこんなクルマでラリーに出ようとは思わないよねえ。そんな2台を取材しに、真夏の丹後半島で開催された全日本ラリー「ラリー丹後」の取材に行ってきました。
●レクサス「RC F」のラリーカーとは?
スーパー耐久などのレースには参戦しているレクサス「RC F」。どう考えたってRC Fをラリー車にしようなんて思わないですよね。ところが石井宏尚選手は何を思ったかRC Fで全日本ラリーに参戦。
5リッターV型8気筒のパワーは魅力だけど、ステージの多くは狭い林道。この巨大なボディは持て余しそう。
RC Fが参戦するJN-2クラスには、WRCをはじめ海外のラリーで活躍する、シトロエン「DS3 R3T」、トヨタ「GT86 CS-R3」といったFIA規定に沿って製作された世界基準のクルマの他に、ほぼワークスカーといってもよい「ヴィッツGRMN」といった強敵が参戦しています。
ロールケージをはじめとする安全装備の他は、LSDとブレーキ、ステアリングぐらいしか変更されていないRC F。
なんとエアコンもマークレビンソンのオーディオも残されています。もはや熱帯以上の暑さのニッポンの夏。移動区間ではエアコンを効かせて音楽を流して優雅に移動しているそう。
今回取材したラリーは狭くてタイトコーナーが続くステージと、2車線でアベレージ速度が比較的高いステージの両方が設定されていて、高速区間でのRC Fの走りは圧巻のひと言。格上クラスのWRX STIを上回るタイムを記録したステージもあったほど。
ただの物好きで選んだクルマだと思い込んでいたけど「勝てる可能性があったから選んだ」と語っていた石井選手。マジかよ、と思ったけど、1位のシビックとわずか1.1秒差で2位フィニッシュ。考え方を改めないとなあ。
■奥様用のマセラティがラリー仕様に変身!!
一方、オープンクラスにはマセラティ「グランスポーツ」が参戦。エントリーリストを見た時、思わず「え?」と声が出たぐらい驚いた。世界中のラリーの戦績を調べたけど、マセラティの車がラリーに出場したのは、2011年にイタリアで開催された国内戦でボクの友人が「ビトゥルボ」をゼロカーとして走らせたのみ。調べ漏れがあったらごめんなさい。
●マセラティ「グランスポーツ」のラリーカーとは?
グランスポーツで参戦した桝井和寛選手はこれまで1968年式のアルファ ロメオ「1750GTV」で参戦していました。
海外のラリーだとヒストリッククラスもあって、現代の車種と同じようにガチなラリーがたくさん開催されています。
現代の技術で製作されたヒストリックラリーカーは、現役当時よりも速くて安全。床の間に飾っておきたくなるような貴重な車種でも、お構いなしに全開で走らせるんです。そんなシーンを目の当たりにしたボクは、いつか日本でもこんなシーンを見てみたいなあと思っていたら、桝井選手のアルファが登場した次第。
そんな桝井選手になんでまたグランスポーツなのかを尋ねてみたら「エアコンとパワステが欲しかったから」と冗談とも本当とも取れる返事。お互い関西人なのでここはツッコミを入れるべきなのか否か、5秒ほど考え込んだけど、気を取り直して聞き取り調査を敢行。するとこのクルマ、元々は奥様用のクルマだったとか。
外装はホイールが変わってるぐらいだけど、ラリー車になってしまったグランスポーツを見た奥様の反応が気になります。
突貫作業で製作されたグランスポーツは、足回りとタイヤ、ホイール、ブレーキ。それにシートとロールケージ以外はほぼノーマル。ステアリングも純正だし、ミッションだって当然AT。これでほんとに走れるのかな、と、こちらが心配になるほど。
ところが、といっては失礼だけど、ステージを重ねるごとにタイムアップ。いろいろ試した結果、ATモードで走るのが一番速かったそう。しかも、移動区間だけではなくステージでもエアコンを使っていたとか。周囲の不安をよそにトラブル無しで無事に完走したのでした。
* * *
参戦クラスも競技に対するスタンスも違う両車だけど、似たような車種しか参戦していなかった競技に、大排気量V8エンジンを積んだスーパーカーで参戦なんて、ともすれば変わり者扱いされそうだけど、勝てる可能性を見出したRC Fと、優雅に快適に走るための選択だったグランスポーツ。どちらも大義名分はしっかりしていているように思えます。もちろん、万人向けではないのだけど。
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みんなのコメント
理由は簡単。金持ちの道楽だから。
これも一種の広告って事