この記事をまとめると
■メルセデス・ベンツ日本は電気自動車であるEQSを発表
メルセデス・ベンツが突き進むEV戦略! ミドルクラスセダンEQEを発表
■同日、EQS 450+を発売、またEQS 53 4MATIC+は予約注文の受付を開始
■メルセデス・ベンツ初のラグジュアリー電気自動車
ARヘッドアップディスプレイを採用!
2022年9月29日(木)、メルセデス・ベンツ日本は電気自動車であるEQEとEQSを発表した。
同日、EQS 450+を発売、またEQS 53 4MATIC+は予約注文の受付を開始。納車は同年10月頃を予定している。
今回はメルセデス・ベンツ初のラグジュアリー電気自動車、「EQS」を紹介する。
EQSのエクステリアデザイン
EQSのスポーティで低く構えたフロントは、グリーンハウスを跨いで続く「ワン・ボウ」(弓)のラインとサッシュレスドアにより、クーペのようなシルエットを形成。フロントにエンジンやトランスミッションを縦置きする必要がないことから、メルセデス・ベンツの典型的なシルエットとは異なるキャブフォワードデザインを採用した。通常よりも前方に位置するAピラーと前後のショートオーバーハングにより、ゆったりとしたキャビンスペースを確保することに成功。
フロントフェイスは「ブラックパネル」ユニットに統合。また、ボンネットは左右フェンダーまで回り込んでいる。これはシームレスなデザインとしているだけでなく、高速巡航時にボンネットが浮く現象を抑え、空力的にも有効な機能性も備えた。左フェンダー側面のサービスフラップはウォッシャー液補充のためのもので、ボンネットは、室内用エアフィルター交換などのメンテナンス目的の場合にサービス工場でのみ開閉可能。ベルトラインに配置されたドアミラーは、空力と低騒音が最適化されたデザインとした。格納式のシームレスドアハンドルは全車に標準装備。
ルーフからなだらかにつながるクーペのようなリヤエンドは官能的なデザインとする一方、テールゲートにスポイラーを設けることによりスポーティな印象も持ち合わせる。テールゲートは、隙間を精密にデザインすることでボディとの段差を最小とし、周囲との連続性を表現。リヤカメラはスリーポインテッドスター裏側の、汚れが付かない位置に格納。LEDリヤコンビネーションランプの内部は、曲線的な螺旋構造となっており、立体的に映るような工夫が施されている。フロントと同じくリヤにも連続したライトバンド(光の帯)が設けられ、メルセデスEQモデルであることを強調している。
EQSのインテリアデザイン
左右のエアアウトレットはジェットエンジンのタービンを模したデザイン。高度な精密技巧とデジタル技術を駆使したMBUXハイパースクリーンとのコントラストを通じて、アナログとデジタルの共存という遊び心豊かな演出とした。なお複雑な形状を持つタービンブレードは、エアコンの空気を効率よく配分する機能を備えている。センターコンソールの前部はダッシュボードにつながり、下側は宙に浮いたような構造となっている。
ドアパネルのデザインは、先進的な室内デザインを提案したもの。ドアパネルに取り付けたモジュール本体は宙に浮く格好で、アームレスト、ドアグリップ、ドアポケットなど、必要なものをすべて備えている。また、周囲が暗くなると自動的に点灯するアンビエントライトが、この宙に浮くような前衛的なデザインをさらに美しく演出。
EQS 450+には、デザインはシンプルながら造形美にこだわったシートを採用。サイドサポートの「ラップアラウンド」形状は、乗員の身体を支えるとともに、シートの中央部とのコントラストによる立体感を生み出している。
オプションのAMGラインパッケージではスポーツシートが標準となる。スリムな一体型の形状が特長で、シート表面は本革のカバーを上から掛けたように見えるデザインが施されている。
シートは輪郭に沿って照明付きパイピングが施されており、夜間走行の際には 雰囲気のある室内空間を演出。
インテリアトリムには、アンスラサイトファインラインライムウッドインテリアトリム、ブラックファインストラクチャールックセンタートリム、アンスラサイトファインライン ライムウッドセンタートリム、AMGカーボンインテリアトリムなどを用意。
コックピットの機能と操作は基本的にSクラスと同様だが、電気自動車ならではのアレンジを各部に施している。グラフィックはすべてブルーのカラーテーマでデザインし、2つの円形メーターを映し出すクラシックなスタイルを採用。走行に関係するインフォメーションは2つのメーターの間に表示される。
ディスプレイの表示は複数のスタイルからカスタマイズすることが可能。 EQS 450+のスタイルは、スポーティ、クラシック、ジェントル、ナビ、アシスト、サービスの6つ、EQS 53のスタイルは、TRACK PACE、 Super sport、 スポーティ、クラシック、ジェントル、ナビ、アシスト、サービスの8つを用意。
スポーティは、立体的なパフォーマンスバーを採用し、走行状態(加速、減速、充電など)をエモーショナルに、そしてわかりやすく表示。Gフォースパックは加速度の変化に応じて円盤が空間内を移動する。
ジェントルモードは、室内に静寂な雰囲気を演出する狙いから、表示内容をできるかぎり絞り込み、7つのスクリーンカラーテーマに応じてアンビエントライトの色合いの変化にもマッチ。アシストモードでは、車線変更や車間距離制御、標識などのインフラストラクチャー、検知した物体の識別(自動車、オートバイ、トラックなど)を表示する。
ナビゲーションの表示では視線移動が大幅に削減できるので、疲労が軽減されるとともにリラックスした運転が可能となる。MBUX ARナビゲーションは車両の前面に広がる現実の景色がナビゲーション画面の一部に映し出され、進むべき道路に矢印が表示される。
さらに、EQS 450+にオプション設定、EQS 53に標準装備されているARヘッドアップディスプレイでは、進むべき道路がフロントウインドウの約10m先の景色に重ねて矢印で表示される。クルマの進行方向が変わると、それに従って矢印も動き、つねにどの方向に進むべきかをわかりやすく表示。これにより、目線を逸らさず、より直感的にどの道路に進むべきかを判断することができる。
航続距離は日本で販売されているEVで最長の700km
EQSのエアロダイナミクス
EQSの優れたエアロダイナミクスを実現するディテールには、主に以下が挙げられる。
・エアロダイナミクス的に有利なサイズやジオメトリを最適化したタイヤ
・エアロダイナミクスを考慮したホイール
・フロント部に施した連続シール(サービスフラップ、ブラックパネル、ヘッド ライトの間など)
・Aピラーの流線形デザイン
・テールゲートのスポイラーにより、リヤアクスルに働く揚力と空気抵抗をともに低減
快適性を損なう低周波ノイズを防ぐために、ボディの構造部の空洞部分の多くに防音発泡材を充填。
高周波の風切り音に対しては、ドアやウインドウのシールに特殊な防音対策を施している。6枚のサイドウインドウの間に施したシールはとくに留意した部分だという。ボディ面に格納されるドアハンドルやウインドウ支持部、取り付け位置が高いドアミラーについても、ノイズの最適化を図っている。
Aピラーには、フロントウインドウとの境目に特殊な形状のゴム製トリムを取り付けることで大幅なノイズの低減を実現した。この開発においては、先進的な気流シミュレーションに加え、風洞内で特殊なマイクロフォン配列を使った外部ノイズ測定を支援ツールとして活用している。このようにして生まれたAピラーは、風切り音を改善するだけでなく、Cd値の低減やウインドウに汚れをつきにくくする上でも重要な役目を果たす。
EQSのパワートレイン
EQS 450+ はリヤアクスルに電動パワートレイン(eATS)を搭載し、最高出力333馬力[245kW]を発生。航続可能距離は日本で販売されている電気自動車の中なかで最長となる700km。電気モーターには永久磁石同期モーター(PSM)が採用されている。PSMでは、ACモーターのローター(回転子)に永久磁石が取り付けられているため、ローターには通電の必要がない。電気モーターは三相の巻線を2つ備える六相式を採用しているため、きわめて強力だ。
メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+はフロントとリヤにeATSを備えており、最高出力は658馬力[484kW](RACE START使用時は最大761馬力[560kW])。 航続可能距離は601km。トルクシフト機能によってフロントとリヤの電気モーター間で駆動トルクの連続可変配分が行われるため、前後駆動力配分は常に効率的かつ最適化されている。
EQSの回生ブレーキ
EQSでは回生ブレーキによる運動エネルギー回収をさまざまな方法で行うことができる。アクセルペダルを戻した際やブレーキペダルを踏んだ際に、高電圧バッテリーへの充電を行う。加えて、ドライバーはステアリングホイールのパドルシフトを使って、回生ブレーキによる減速度を3段階(D+、D、D-)で調整できる。D Autoモードでは、最大5m/s2の減速度が得られ、うち回生ブレーキによるものが最大3m/s2となっている(残りの2m/s2は摩擦ブレーキ)。
また、ECOアシストでは、状況に応じて回生ブレーキの最適化を実行。もっとも効率的な運転スタイルとなるよう減速の強弱を自動調整し、たとえば先行車を検知すると、先行車との車間距離を調整しつつ先行車が停車に至るまで可能な限り追従していく。
EQSの4MATIC+
4MATIC+では、トルクシフト機能によってフロントとリヤの電気モーター間で駆動トルクの緻密な連続可変配分が行われる。前後のeATSは相互独立に調整可能であることから、前後輪に必要な駆動トルクを毎分1万回の頻度でチェックし、必要に応じて前後の駆動力配分を最適化。電気信号による制御のため、機械式四輪駆動システムに比べてはるかに速い反応が可能となる。
EQSのリヤ・アクスルステアリング
メルセデス・ベンツ技術陣の開発目標のひとつが、大きなボディを持つEQSをコンパクトカー並みに容易に扱えるクルマとすることだったそうだ。このサイズとしては異例の取り回し性を実現したのがいわゆる4輪操舵であるリヤ・アクスルステアリング(EQS 450+は最大4.5度、 EQS 53は最大9度)で、これはステアリング操作だけでなく、ブレーキやサスペンションなどの車両ダイナミクスコントロールに統合制御されている。
EQSのダイナミックセレクト
EQSは、パワートレインやESP、サスペンション、ステアリングの特性を個々のドライバーが好みに合わせて変更できる。ドライブモードの切り替えは、メディアディスプレイの下端にあるスイッチで行う。EQS 450+のドライブモードの標準設定はComfortのほか、Sports、Eco、Individual、EQS 53には、Comfort、Sports、Sports+、Individual、Slipperyが用意されている。
EQSの電気自動車専用プラットフォーム
バッテリーはアンダーボディ内の衝突に対して保護された部分に置かれており、側面のアルミニウムの押出成型材などボディシェル構造内に組み込まれている。電動パワートレイン用モジュールには、フロントとサイドのエネルギー吸収構造と高剛性の二重壁ベースプレートを備えるハウジング内に収納され、保護効果をさらに高めている。また、日常走行に対応した多段階安全システムも搭載。これは、温度や電圧、絶縁状態などを監視する統合安全監視システムで、エラーが発生した場合にバッテリーを停止する。
EQSの大容量リチウムイオンバッテリー
EQS 450+のリチウムイオンバッテリーはエネルギー容量107.8kWhで、これにより航続距離700kmを達成。バッテリーは電気自動車にとって中核を担う技術であり、メルセデスはバッテリー本体だけでなくバッテリーを管理するソフトウェアも自社開発している。
メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+のリチウムイオンバッテリーはエネルギー容量107.8kWhで、航続距離601kmとなる。
両グレードは6.0kWまでの交流普通充電と、150kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応している。
EQSの高電圧システム
バッテリーと高電圧ケーブル、その他の高電圧コンポーネントは、事故が発生した際にメルセデス・ベンツの厳格な安全要件を満たすよう、設計・保護されている。
高電圧システムの多段階保護方式は、すでにメルセデスEQのほかのモデルでも実績を上げているもので、危険が発生すると自動で電源OFFとなるほか、バッテリーとの接続が遮断される。高電圧システム遮断時には、残留電圧による傷害を避けるため、バッテリー以外の高電圧システムから数秒以内に確実に放電されるよう対策が施されている。
EQSの給電機能(V2H/V2L)
日本仕様の特別な機能として、EQSから車外へ電力を供給できる双方向充電が可能。EQSは家庭の太陽光発電システムで発電した電気の貯蔵装置となるほか、停電した場合などに、電気を家庭に送る予備電源としても利用できる。なお、給電はMBUX設定画面よりバッテリー残容量10%から50%まで10%単位で設定可能。
EQSの安全運転支援システム
EQSには以下などの安全運転支援システムが採用されている。
「インテリジェントドライブ」
・ アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック (自動再発進機能付)
・ アクティブステアリングアシスト
・ 渋滞時緊急ブレーキ機能
・ アクティブレーンチェンジングアシスト
・ アクティブエマージェンシーストップアシスト
・ アクティブブレーキアシスト(歩行者/飛び出し/右折時対向車検知機能付)
・ 緊急回避補助システム
・ トラフィックサインアシスト
・ アクティブレーンキーピングアシスト
・ アクティブブラインドスポットアシスト(降車時警告機能付)
「その他」
・ ドライブアウェイアシスト
・ 360°カメラシステム
・ メモリーパーキングアシスト
EQSの価格
EQS 450+が1578万円、メルセデスAMG EQS 4MATIC+が2372万円(税込み)。
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