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これで売れるとなぜ思った!? 超大味ヒュンダイからヒョンデへの名称変更とその勝算

掲載 更新 93
これで売れるとなぜ思った!? 超大味ヒュンダイからヒョンデへの名称変更とその勝算

 韓国の自動車メーカー・ヒョンデ(現代)が日本への再進出を発表した。

 2001年に『ヒュンダイ』として日本に登場したが販売がふるわず、2010年に日本市場から撤退した。今回、名称を『ヒョンデ』としてEVとFCVをひっさげて日本に再進出。

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 二度目の進出に勝算はあるのか!? 清水草一氏がレポートする。

文/清水草一、写真/ヒョンデモビリティジャパン

■一度目の撤退を教訓にヒュンダイが『ヒョンデ』となって日本再進出

ヒョンデの日本再進出の切り札アイオニック5

 韓国の自動車メーカー・ヒョンデ(現代)が日本への再進出を発表した。今回はEVとFCVに限ってのもので、しかもオンライン販売に特化するという。これはいずれ国産メーカーにとって、大きな脅威になると見る!

 現代自動車はかつて一度、日本市場に挑戦している。

 2001年、「ヒュンダイ(当時の日本での呼称)を知らないのは日本だけかもしれない」という宣伝文句の下、「ヒュンダイ・ソナタ」や「ヒュンダイXG」などを販売したが大苦戦し、2010年に日本市場から撤退した。10年間で日本で売れた現代車は、たったの1万5000台ほどだった。

 私は現代の日本進出直前、済州島で行われた試乗会に参加し、現代車3台に乗った。当時すでに現代は欧米に大いに進出し、かなりのシェアを奪っていた。日本への進出は、世界198か国目だったという。

 が、その時はまだ日本車に比べると、内外装のセンスもメカも大味で、「日本車より最低2~3割安くないと、日本では売れないな」と感じた。

 ところが実際の日本での値付けは、日本車とほとんど変わらなかった。しかも値引きなしのワンプライス販売だったから、実際には値引きの大きい日本車より高かった。当時の日本人は、韓国製のあらゆる製品を見下していたから、ブランド力はゼロどころかマイナス。これでは失敗するのも当然だ。

■日本撤退から12年……驚くほどに進化した韓国自動車

アイオニック5と並ぶもうひとつの切り札ネッソ

 実を言えば私は、割合、韓国自動車通だ。95年には自分のフェラーリで韓国に渡り、かの地で当時の韓国車に試乗したし、その後も2回、韓国でレンタカーの旅をしている。

 「ヒュンダイを知らないのは日本だけかもしれない」という状況は続いているが、私は日本人としては、ヒョンデ(現代の新しい呼称)を知っている方だ。

 そんな私も、2010年の渡韓を最後に韓国車に乗っていないのだが、その時乗った現代エラントラ(4代目)の質感には衝撃を受けた。

 3代目エラントラは、日本でも販売されたが、国産ライバルであるカローラと比べると、まだかなりの差があった。しかし4代目エラントラは、目をつぶって乗ったらカローラとの差がわからないくらい、すべてが向上していた。その時点ですでに私は、「日本車はもう韓国車に追いつかれている」と感じた。

 現在、現代グループは世界で約700万台を売り、トヨタを除くすべての日本メーカーを超えている。

 多くの日本人は認めたくないだろうが、海外での評価も価格も、日本車とほぼ変わらない。「韓国車は安いから売れる」という時代は終わっている。家電と似たような状況だ。いや、家電ではすでに、日本製品は韓国製品に完敗した……。

 ただ、前回のように正面から日本市場に挑んでも、勝ち目はない。どれだけKポップがヒットしても、中高年層には嫌韓感情も強いし、日本人には、あえて韓国車を選ぶ理由がないからだ。

 ところが今回は、販売戦略が斬新だ。まずはディー・エヌ・エー系のカーシェアサービス「エニカ」と組んで、購入前に試乗してもらい、気に入ったら購入。

 購入後もエニカを通じて、使わない時はカーシェアリングに貸し出すことができるのだ。これは非常に魅力的ではないだろうか。もともとEVは家電やスマホに近い存在なので、あまりブランドにこだわる必要もないはずだ。

■オンライン販売でEVとFCVに絞って日本市場を見据える

アイオニック5はEV、ネッソはFCVとなる。アイオニック5は家電などに電力を供給することができる

 今回、日本で発売するのは、EV「アイオニック5」と、FCVの「ネッソ」の2車種。価格はアイオニック5が479万~589万円、ネッソが776万円だ。

 EVのアイオニック5は、サイズも航続距離も価格も、トヨタbZ4Xや日産アリアとほぼガチンコ。デザインはシンプルで美しく、むしろ日本製EVに勝っている。

 現代グループは現在、アウディ出身のペーター・シュライアーにデザイン部門をすべて任せ、完全にドイツ系デザインにシフトしている。

 シュライアーは初代アウディTTのデザインにかかわった名デザイナーだが、その成果は目覚ましく、4ドアクーペの起亜スティンガーを筆頭に、今やドイツ車のデザインを超える境地に達していると見ている。

 それでも、国産車があまりにも強い日本市場では、普通に売ったのでは国産EVに勝ち目はないが、カーシェアと組んだのは大きな強みになる。

 EVなら、ディーラー店舗なしの販売戦術は、すでにテスラが実行済みで、それなりの実績を上げている。従来型の購入方法にこだわりのない層をオンラインで取り込んで、そのままカーシェアで貸し出しもできるという戦略は、「この手があったか!」と言うしかない。

 現代が腰を据えて日本市場に挑めば、10年後には、EVの分野でかなりのシェアを奪っている可能性は高いと見る。

 ただ、コストパフォーマンス的には、日韓ともに、昨年大幅値下げを実行した米・テスラモデル3に負けているのも事実。「スーパーチャージャー」という自前の充電網も持つテスラの優位は変わらず、現代製EVがシェアを伸ばすとしたら、テスラはもっともっと伸ばしているはず……というのが、合理的な予測だろう。

 加えて小型EVの分野では、中国勢が日本に進出すれば、その圧倒的な安さによって、間違いなく席巻される。中韓の足音はすぐそこまで来ている。国産メーカーも、従来型のビジネスから脱却する糸口を見つけてほしい。

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