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「アストン・マーティンには“ソウル”がある、そこが違う」──CEOが語るアストンマーティンの魅力とは?

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「アストン・マーティンには“ソウル”がある、そこが違う」──CEOが語るアストンマーティンの魅力とは?

今、もっとも話題の豊富な自動車メーカーといえばアストン・マーティンかもしれない。昨2018年だけでも「DBS」の発表をはじめ、ウェールズに新工場を設立し、SUVを生産すると発表、また、「DB4 GT」にくわえ「DBS 53」といった過去の名車を再生産するプロジェクトや電気自動車に空飛ぶクルマのプロジェクトも打ち上げる……と、枚挙にいとまがない。

2014年からCEOとして同社を率いているのが、日産自動車から転職したアンディ・パーマーである。2018年10月にはロンドン証券市場に株式も公開した。株主対策もあるのか、先立つ9月に「プロジェクト003」と名付けたミドシップスポーツの開発が進んでいることも明らかににしたのであった。

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「アストン・マーティンは創業105年という長い歴史を持つメーカーですが、ビジネスが順調で、かつ黒字収益だった期間はきわめて短いです。私が日産に在籍したとき買収の話が出たため、財務内容を調べて分かっていたつもりだったのですが、実際CEOに就任したところ、私の考えている以上に状況がよくなかったのには驚きました」

フランクでひとの興味をそらさない魅力的な話し方をするドクター・パーマーは、包み隠さず過去を話す。CEOに就任し、彼がまず手をつけたのはモデルレンジの整理と、一部エンジン(4.0リッターV型8気筒エンジン)の外部調達(メルセデスAMG)など、コスト削減だ。

同時に限定生産の高価なスペシャルモデルの開発と販売もおこない、アストン・マーティンらしさを強調してきた。ざっとあげると「ヴァルカン」(2015年)、「GT12」(2016年)、「GT8」(2016年)それに「ヴァルキリー」(2017年)など。なかでもヴァルキリーはF1のレッドブルとの協力関係によって開発されたフルカーボンファイバーのボディを持つハイパースポーツとして話題を呼んだ。

くわえて「DB4 GT」「DB5」それに「DBS GTザガート」など過去の”名車”を、車台番号まで引き継いで極力オリジナルに忠実に作る「コンティニュエーション(継続生産)」車も、注目すべき商品だ。

「これらは自社技術力のショーケースでもありますが、同時に、ありていに言って資金確保の手段です。これからも限定生産モデルやコンティニュエーションモデルは、年2台ぐらいの割合で販売していくつもりです」

これらはドクター・パーマーの指揮下で始まった、アストン・マーティンの新しいビジネスだ。

「私がアストン・マーティンに入ったとき、まず考えたのが“将来”です。そもそもイギリスの小さな会社なので、保守的な考えをするひともいました。たとえば、赤字があっても従来のDB9を作り続け、赤字をこれ以上拡大しないようにしていれば、それでもよいではないか? といった意見もあったぐらいです。でも生き残りを考え、私は“積極的なビジネス”がいいと判断しました」

ドクター・パーマーが語る未来の話はかなり明るい。ひとつは新工場で生産する予定のSUVと電気自動車(EV)だ。「EVは年5000台ぐらい売れそうですが、そうなると生産能力が7000台しかない工場のキャパをほとんど奪ってしまいます」と言って、“困りますよね”と、笑顔を見せる。

EV(あるいはハイブリッドモデル)については、どのようなモデルになるか不明な部分が多いけれど、ゆくゆくは2018年のジュネーブ自動車ショーでお披露目された「ラゴンダ・ビジョン」のように、電気で走る豪華ラウンジのようなモデルもありうる、とドクター・パーマーは言う。

「現在エンジンが載っている部分は、キャビンのスペースに充てられます。これにより、いままでにない快適性が実現します。顧客のなかには”高級車は12気筒でないと……”と、言うひともいますが、このクルマが世に出れば大きなトレンドを作れると思います」

アストン・マーティンはフェラーリやランボルギーニ、ポルシェと競合するスーパースポーツカーのブランドであるいっぽう、ラゴンダはロールズ・ロイスやベントレーとぶつかるブランドにする、というのがドクター・パーマーの考えだ。「いちはやいEV化などによって、“トレンドセッター”になって市場で地歩を固めたい」と、語る。

「ランボルギーニもポルシェもかつては独立した会社でしたが、いまは大きなグループの傘下です。アストン・マーティンはそれらと異なり、ごく少数の独立したスーパースポーツカーメーカーという立ち位置を堅持していくつもりです」

本業であるスポーツカーの分野で、いかに他社に対して独自性を守っていくのか気になる。レッドブルF1チームとの共働体制によって、すぐれたF1技術を将来のモデルに適用する可能性もあるだろう。「でも……」と、ドクター・パーマーは言う。未来のことばかり見なくても、現在すでにアストン・マーティンには独自の魅力が備わっている、と。

「他社についてあれやこれや言うのもよくないですが、ポルシェはアウトバーンの国のクルマ、という操縦感覚を持っています。それに対し、アストン・マーティンはツイスティなカントリーロードを持つイギリスならではのクルマです。独自の操縦感覚こそエンジニアのシグネチャーといえるもので、アストン・マーティンの個性になっていると思います」

ドクター・パーマーは説得力のある笑みをたたえながら語る。自らレース活動もおこなうクルマ好きであり、語り口にあふれる情熱には聞いていて感心する。

「べつの言い方をすると、アストン・マーティンはたんなる工業製品ではありません。ソウル(魂)を持っています。それが、もっとも大きな個性といえるかもしれません」

乗ったひとはそれ(ソウル)に触れる。魂と魂がふれ合うところには感動が生まれる。たしかに、アストン・マーティンに乗るとずっと心地よい印象が残る。なるほど、この好印象は“ソウル”の賜物だったわけか。

【ドクターパーマーCEO プロフィール】
アストン・マーティン・ラゴンダ・グループの社長兼CEO。2014年に同グループ入りするまでは日産自動車に在籍し、2011年にエグゼクティブ・バイスプレジントになり、チーフ・プラニング・オフィサーを務めていた。一貫して自動車畑に身を置き、キャリアの初期は「UKオートモティブプロダクトリミテッド」でプロジェクトエンジニア、そののちローバーグループでマニュアルトランスミッションのチーフエンジニアだった。学生時代は、ウォリック・ユニバーシティにおいてプロダクトエンジニアリングで修士号を、クランフィールド・ユニバーシティにおいてエンジニアリングマネージメントで博士号を、それぞれ取得している。

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