死亡女児は運転席後ろに座っていた
5月21日午前10時45分頃、西武池袋線・石神井公園駅から西に約800mの住宅街で信じられない事故が起きた。
【画像】「防げる」事故を起こさない 正しく使いたいチャイルドシート すべての画像をみる 全5枚
「子どもの首が車の窓に挟まり、抜けない」と車を運転していた30代の母親が119番通報をし、後席の2歳女児が意識不明の状態で救急搬送されその後、死亡が確認されたのである。
運転席の母親が首が挟まれたことに気づかずパワーウィンドウのスイッチを押し続けたことで女児は亡くなってしまった。
女児が座っていたのは運転席の真後ろに位置する座席(後部座席右側)でチャイルドシートの設置はされていた。が、母親によると「ベルトを装着していなかった」とのこと。チャイルドシートの機種などは明らかになっていない。
なぜこのような悲惨な事故が起きたのか?
チャイルドシートを正しく使用していれば、絶対起こりえない。平均的な2歳児の体格なら当然、身長100cm頃まで使う幼児用チャイルドシートを使っていたはずだ。
クルマとチャイルドシートの形状や窓との位置関係によって多少は事情が異なるかもしれないが、体格に合ったチャイルドシートにハーネスをきっちり締めて正しく着座していれば窓から顔を出せる状況などありえない。
「子どもが騒いでうるさかったので窓を閉めた」「事故が起きる前に換気のため開けていた前後4か所の窓のうち、女児が乗る右後部座席以外を閉めたつもりだったが、後ろを確認していなかった」などの情報も。
状況に不明点も多いが、母親の重大なミスとチャイルドシートの間違った使用状況が重なったことで発生した。
完全に「防げた事故」であることは確実といえる。
挟み込み防止機構は働かなかった?
筆者を含めこのニュースを見た人の多くは「パワーウィンドウの『挟み込み防止機構』は作動しなかったのか?」と思ったであろう。
この機構はAUTO(ワンタッチ)で作動するパワーウィンドウやスライドドアなどにもついており、窓やドアが閉まる際に異物を検知するとそこで動作が自動的に止まり、少し戻って(開いて)異物を抜く(脱出できやすくなる)ための事故防止機構である。
報道されている情報によると、母親は後部座席の窓を自らの意思で「閉め続けて」いることがわかっている。つまり、女児の首が挟まれていることに気づかずにスイッチを押し続けたため、挟み込み防止機構がついていたとしても作動しなかったと考えられる。
また、挟み込み防止機構は車種やグレードにもよるが運転席にだけついていることもある。窓が完全に閉まる直前に異物が挟まった場合や、スイッチで窓を閉める操作を続けた時は、この機能が作動しない可能性も。
そして次に気になるのは、チャイルドシートの使用状況、女児がどのように着座していたのか?ということだ。
報道によると、「チャイルドシートは後部座席に取り付けてあったが、女児はベルトをしていなかった」とのこと。これはどのような状況なのか?
チャイルドシートの機種やタイプがどのようなものかは明らかになっていないが、母親自ら「ベルトをしていなかった」と証言しているので、危険な状態を認知していたことになる。それでいながら、ベルトを正しくつけることもせず放置していた。
ベルトで子どもを拘束しなくては意味をなさない
チャイルドシートには
1.乳児用(後ろ向きで身長76cm頃まで)
2.幼児用(前向きで身長100cm頃まで)
3.学童用(前向きで身長100-150cm頃まで)
この3種類がある。
乳児用と幼児用はチャイルドシート本体をシートベルトやISO-FIXで座席に固定したあと、子どもを乗せて、子どもの体はチャイルドシート本体のハーネスを締めて固定する。
学童用は最近ではISO-FIXで座席に取り付けるタイプも増えているがまだ少数。主流はシートベルト1本で子どもの体と学童用ジュニアシートを「一緒に」固定するタイプだ。
背もたれあり(身長100cmから使用)と座面だけのブースターシート(同125cm以上で使用)の2種類があり、ブースターシートは正しく使用できてないケースが多く安全性は非常に低い。
実際、ブースターシートを使っていたのに子どもだけが内蔵圧迫で死亡した事例もある。
そして、今回の事故で2歳女児が使っていたチャイルドシートだが以下の2パターンが考えられる。
幼児用チャイルドシートを使っていたが、ハーネスがユルユルでハーネスの間から子どもが抜けだして窓から顔を出せる状態
ハーネスとはチャイルドシート本体についている2本の肩ベルトのことで、ほとんどの場合正しく使われていない。
ハーネスと子どもの体の間に大人の指1-2本が入る程度のキツさで締めなくてはならないが、ほとんどはハーネスが緩い状態で使用されている。
横転のような激しい衝撃を受けると子どもの体がすっぽ抜けて車外放出され路面にたたきつけられるか、後続車にひかれて亡くなる危険もある。急ブレーキ程度の衝撃でもハーネスの間から転げ落ちて床面に頭を打ち付けて重傷・死亡も珍しくない。
ハーネスやベルトの間からすり抜けて「脱出」する例も
もうひとつのパターンは、「チャイルドシートではなくジュニアシートを使っていた」可能性である。
ジュニアシートの体格にはまったく至らないわが子に対して、「場所を取らない」「取り付けが簡単」「子供が嫌がらない」などの理由で安全性を無視してジュニアシートを使いたがる保護者は意外と多い。
ジュニアシートには「背もたれのない座面だけのブースタータイプ」と「背もたれとヘッドサポートがついたフルバケットタイプ」の2種類があるが、前者は身長125cm以上(7-8歳)、後者は身長100cm~150cmまで使える仕様である場合が多い。
いずれにしても、前述したようにジュニアシートの固定はまだほとんどが「後席シートベルト1本で子どもの体とジュニアシート本体を同時に固定する」タイプである。
ミニバンの後部座席には衝撃を感知すると瞬時にシートベルトを巻き取ってがっちり拘束する3点式ELRシートベルトがついているはずだが、普段はベルトを締めていても簡単に抜け出すことができる。バックルから自分で外さなくても、肩ベルトの間から抜け出してジュニアシートの上に立っている子どもの姿も良く見かける。
また、チャイルドシートとジュニアシートの違いが判らず、オークションやリサイクルショップなどで「それっぽい形」のものを購入している可能性もある。
子どもの命を何だと思っているのか。
子どもはどの席に座らせるべきか?
このほか、現在は安全基準が旧式となったため生産終了している「スマートキッズベルト」など、座面を持たずシートベルトの高さだけを調整するベルトガイド式ジュニアシートも存在する。
旧基準(ECE R44/04)であり2023年8月末で生産終了となっているが販売する分には問題ないためコストコなどで安価に販売されているケースもまだある。このタイプも身長125cm以降で使うことが国連の安全基準では推奨されている。
事故で亡くなった2歳女児は運転席の後ろに座っていたことが明らかになっている。大人ひとり、子どもひとりで乗車する場合、この位置は絶対にNGだ。
運転席の真後ろに座っている状態では子どもの様子を確認するのが困難で実際、今回の事故では首が挟まれてぐったりしておとなしくなって初めて母親が異変に気付いている。真後ろで見えにくい位置に座らせていたことも、今回の死亡事故を招いた原因といえるだろう。
大人ひとり・子どもひとりの場合は運転席の斜め後ろ、つまりは助手席の後ろに座らせるのがマスト。お互い顔が確認しやすく、子どもにとっても親の姿が視界に入って安心感も生まれる。
かつては後部座席が3人乗りである場合、中央席にチャイルドシートを装着することが推奨されていた。
しかし、ISO-FIX金具の標準装備化(2012年7月1日~)に伴いISO-FIX金具のない中央席ではなく、後席の左右いずれかへの設置となった。子ども一人を乗せる場合は右側(車道側)ではなく、左側(歩道側)に乗せるのが安全である。
乗車中の子どもの安全について無頓着な保護者が増えているように思う。チャイルドシートは「ただ置いている」だけでは何の役にも立たず危険物でしかない。
ハーネスはきっちりきつめに締めて常にルームミラーなどで子どもの様子を確認しながら運転してほしい。
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みんなのコメント
掘り下げる必要ナシ。
これでは全然意味がない。
はい終了。