スーパーバイク世界選手権(SBK)第11戦フランスラウンドがマニクール・サーキットで行われ、ジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)がレース1、スーパーポール・レースで2位、レース2で優勝。このフランスラウンドで、5年連続のSBKチャンピオンに輝いた。
フランスラウンドでは、第5戦イタリア(イモラ)ラウンドの予選で怪我を負い、欠場が続いていたレオン・キャミア(モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム)が復帰している。
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ウエットコンディションで行われたスーパーポールでは、レイがポールポジションを獲得。2番手がマイケル・ファン・デル・マーク(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)で、3番手がレオン・ハスラム(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)のフロントロウ。バウティスタは14番手だった。今大会は3レースの結果によってレイがチャンピオンを獲得する可能性があり、バウティスタはそれを阻みたいところだが、グリッドでは大きな差ができてしまった。
■レース1:レイとのトップ争いを制して初勝利を手にしたラズガットリオグル
レース1はスーパーポールから天候、路面ともに回復。気温19度、路面温度21度のドライコンディションで行われた。ホールショットを奪ったのはレイで、ファン・デル・マーク、ハスラムが続く。ファン・デル・マークはオープニングラップから積極的にレイに仕掛けていく。そうする間に、3番手のハスラムにはトム・サイクス(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)が迫り、さらにファン・デル・マークを交わして2番手に浮上する。
サイクスは2周目も果敢に攻め、5コーナーでレイとサイド・バイ・サイドの激しいトップ争いを見せ、ついにはレイからトップを奪う。3番手には11番グリッドスタートのチャズ・デイビス(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)がつけ、4番手にファン・デル・マーク、5番手にトプラク・ラズガットリオグル(ターキッシュ・プセッティレーシング)が続き、混戦の様相だ。
序盤のトップ争いは目まぐるしく展開していった。4周目にはトップのサイクスからレイ、ラズガットリオグル、デイビス、ハスラム、ファン・デル・マークまでがほぼワンパックの状態。混戦により、何度もポジションが入れ替わる。
しかしそんな4周目9コーナーで、一時はトップも走っていたデイビスが転倒。3番手を走っていたデイビスは2番手のラズガットリオグルのインにマシンをねじ込んだが、その際、ラズガットリオグルと接触。デイビスはスリップダウンを喫してリタイアとなった。ラズガットリオグルはそのままレースを続けている。
6周目にはレイ、さらにはファン・デル・マークがトップのサイクスにテール・トゥ・ノーズで接近。3台が三つどもえとなって激しいトップ争いを演じる。7周目には、サイクスを交わして再びファン・デル・マークがレースリーダーとなった。ファン・デル・マークは中盤にひとり飛び出し、2番手以下を引き離していく。
11周目、レースをリードするファン・デル・マークと2番手のレイとの差は約1.5秒。レイは少しずつファン・デル・マークへの追い上げを見せ始め、16周を終えるころにはその差は1秒を切った。
チャンピオンシップのランキング2番手であるバウティスタは、7番手から6番手を走行中。前を行くアレックス・ロウズ(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)のすぐ後ろについて追いかける。レイよりも前でゴールしたいところだが、状況は厳しい。
残り4周、トップのファン・デル・マークと2番手レイとの差は約0.5秒にまで迫っていた。レイは終盤にもかかわらず、残り4周で1分37秒759のファステストラップを叩き出す。ペースは明らかにファン・デル・マークよりもレイの方が速く、残り3周で、レイは完全にファン・デル・マークを射程圏内にとらえた。
レイの猛追を受けていたファン・デル・マークだったが、残り3周の5コーナーでまさかのスリップダウン。グラベルへと滑っていくファン・デル・マークの横を、レイが通り過ぎていく。ファン・デル・マークはマシンを起こして再びレースに加わったが、10番手以下にポジションを落とした。
ファン・デル・マークに代わって先頭に立ったレイ。しかし今度は、2番手のラズガットリオグルの猛追を受けることになる。最終ラップでレイとの差を詰めてきたラズガットリオグルは13コーナーでレイをオーバーテイク。そのままポジションをキープすると、トップでチェッカーを受けた。
序盤から最後まで、役者を変えたトップ争いを最後に制したのは、SBK参戦2年目のラズガットリオグル。2019年シーズンはここまで8度の表彰台を獲得し、間違いない実力を見せていたラズガットリオグルが、レイをねじふせる形でついにSBK初勝利を挙げた。
2位はレイで、ファン・デル・マークへの見事な追い上げを見せながらも、ラストラップでラズガットリオグルに交わされた。3位はトム・サイクス。2019年シーズン4度目の表彰台を獲得している。
4位フィニッシュはロリス・バズ(テンケイト・レーシング)。バウティスタはロウズとの5位争いを制した。終盤までレースリーダーでありながら転倒を喫したファン・デル・マークは、13位でレースを終えている。9番グリッドスタートの清成龍一(モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム)は、18位だった。
■SBK第11戦フランス レース1順位結果(21周)
Pos.No.RiderTeam/MachineTime/Gap154T.ラズガットリオグルターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR)34'37.68621J.レイカワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR)0.240366T.サイクスBMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR)6.839476L.バズテンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1)8.497519A.バウティスタAruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R)9.368622A.ロウズパタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1)15.12972L.キャミアモリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR)25.067833M.メランドリGRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1)26.869950E.ラバティチーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R)32.0911011S.コルテセGRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1)32.8231181J.トーレスチーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR)35.4091236L.メルカドオレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR)41.9451360M.ファン・デル・マークパタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1)46.6401421M.ルーベン・リナルディバーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R)1'03.1361552A.デルビアンコアルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR)1'07.3151628M.ライターベルガーBMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR)1'07.6791720S.バリアーブリックス・パフォーマンス(ドゥカティ パニガーレV4 R)1'08.3001823清成龍一モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR)1'11.449RET91L.ハスラムカワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR)5 Laps(リタイア)RET7C.デイビスAruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R)17 Laps(リタイア)
■スーパーポール・レース:新鋭ラズガットリオグルが2連勝
日曜開催のスーパーポール・レースは気温19度、路面温度22度のドライコンディションのもとで行われた。ポールポジションスタートのレイがスタートから飛び出すが、ホールショットを奪ったのは、2番グリッドのファン・デル・マーク。ファン・デル・マーク、レイ、ハスラム、サイクスがほぼワンパックとなってオープニングラップを終え、5番手にラズガットリオグルが続く。
2周目、トップを走るファン・デル・マークを、レイがテール・トゥ・ノーズでマーク。ファン・デル・マークのインにつくと、あっという間にトップのポジションを奪う。トップのレイとそれを追うファン・デル・マーク。3周目には、レース1で優勝を飾ったラズガットリオグルが、ファステストラップのレコードを更新しながら3番手に浮上してきていた。
ラズガットリオグルは2番手のファン・デル・マークの背後につける。そのペースはトップのレイ、2番手のファン・デル・マークよりも速い。ラズガットリオグルは5周目にファン・デル・マークを交わして2番手に浮上すると、トップのレイを追う。この時点で、その差は約0.4秒。残り周回数からして、十分に追い付くことが可能な数字だ。
ラズガットリオグルはその後もレイより速いラップタイムを刻みながら周回を重ねると、7周目にレイを交わしてトップに立つ。しかし、レイもラズガットリオグルに食らいつき、トップ奪還をねらう。
ラストラップ、レイがラズガットリオグルに勝負を仕掛ける。5コーナーでラズガットリオグルのインを差し、オーバーテイクを試みたレイ。しかし、
クロスラインでラズガットリオグルが再びそのポジションを奪い返す。
トップがラズガットリオグル、レイが2番手のまま最終コーナーに入ると、そのままの順位を保ったまま、チェッカーを受けた。
ラズガットリオグルがレース1に続きスーパーポール・レースを制して、2019年シーズン2勝目を挙げた。レイは、こちらもレース1同様に2位フィニッシュ。チャンピオンシップのポイントランキングでバウティスタに104ポイント差を築いた。3位には序盤以降にそのポジションを守ったファン・デル・マークが入っている。
4位はデイビス、5位はバウティスタ。清成は9番手スタートから徐々に順位を下げてしまい、20位でレースを終えている。
■SBK第11戦フランス スーパーポール・レース順位結果(10周)
Pos.No.RiderTeam/MachineTime/Gap154T.ラズガットリオグルターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR)16'17.18621J.レイカワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR)0.319360M.ファン・デル・マークパタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1)1.48647C.デイビスAruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R)2.384519A.バウティスタAruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R)4.964622A.ロウズパタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1)5.657776L.バズテンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1)8.759866T.サイクスBMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR)9.219991L.ハスラムカワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR)10.1301021M.ルーベン・リナルディバーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R)12.8071111S.コルテセGRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1)13.9921233M.メランドリGRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1)16.4231350E.ラバティチーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R)17.8101436L.メルカドオレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR)17.9631581J.トーレスチーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR)18.269162L.キャミアモリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR)18.7011728M.ライターベルガーBMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR)20.7061820S.バリアーブリックス・パフォーマンス(ドゥカティ パニガーレV4 R)33.9221952A.デルビアンコアルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR)34.0752023清成龍一モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR)58.296
■レース2:レイが勝利で2019年シーズンのチャンピオン獲得を決める
レース2は気温25度、路面温度29度のドライコンディションで行われた。スーパーポール・レースの結果により、ポールポジションはラズガットリオグル、2番グリッドにレイ、3番グリッドにファン・デル・マークが並んだ。
スーパーポール・レースまでの結果により、レイは確実にチャンピオン獲得に近づいていた。レイがこのレースでチャンピオンを獲得するには、チャンピオンシップのポイントランキング2番手であるバウティスタに対し、少なくとも21ポイント以上の差をつけるポジションでゴールする必要がある。
ホールショットを奪ったのはラズガットリオグルだったが、オープニングラップでレイ、さらにはファン・デル・マークがラズガットリオグルをオーバーテイク。1周目をファン・デル・マーク、2番手レイ、そして5番グリッドスタートだったバウティスタが好スタートを切り3番手で終える。ラズガットリオグルはオープニングラップでマシンの挙動を乱したこともあり、4番手にまで順位を落とした。
そんななか、2周目の13コーナーで、3番手のバウティスタと4番手のラズガットリオグルが接触。ラズガットリオグルがバウティスタのインに入り、前に出たところでマシンがスリップダウンするようにイン側に倒れていく。バウティスタはその失速したラズガットリオグルのマシンをよけきれずに追突。ふたりは転倒し、コース上に投げ出された。
幸いにも後続のライダーとそれ以上の接触はなかったものの、ラズガットリオグルとバウティスタはここで戦線を離脱。バウティスタがリタイアしたことで、レイの2019年シーズンチャンピオン獲得の可能性がぐっと高まる。
レース中盤にはファン・デル・マークがトップ、2番手レイ、3番手にロウズが続いていたが、11周目にレイがファン・デル・マークを交わしてレースリーダーとなる。レイはその後、少しずつファン・デル・マークとの差を広げていった。
最終的にレイは2番手のファン・デル・マークに対して約1秒のアドバンテージを築いてチェッカー。優勝を飾ってポイントランキングでバウティスタに対し129ポイントの差を築くことに成功し、2戦を残して今季のタイトルを手にした。レイにとって5度目のSBKタイトルであり、これによってSBK史上初の5連覇の偉業を達成している。
ファン・デル・マークはこの週末の3レースでトップを走りながらも、優勝を飾ることができず悔しい2位。3位にはロウズが入り、パタ・ヤマハ・ワールドSBKチームが2位、3位を占めた。清成は12番グリッドからスタートし、ポイント圏内の14位でフィニッシュしている。
同じくフランスラウンドで開催されたスーパースポーツ世界選手権(WSS)とスーパースポーツ世界選手権300(WSS 300)。WSSはKawasaki Puccetti Racingのルーカス・マフィアスが2019年シーズン初勝利。チームメイトの大久保光は5位でフィニッシュしている。
WSS 300では、2018年シーズンチャンピオンの女性ライダー、アナ・カラスコ(Kawasaki Provec WorldSSP300)が優勝。岡谷雄太(DS Junior Team)は22位だった。また、WSS 300は今大会でマニュエル・ゴンザレス(Kawasaki ParkinGO Team)が2位を獲得して2019年シーズンのチャンピオンを決めている。SBKではレイが優勝してチャンピオンを獲得、WSSではマフィアスが優勝、そしてWSS 300でもゴンザレスがチャンピオンを決めるなど、フランスラウンドはカワサキの活躍一色となった。
以下、SBK第11戦フランス レース2の順位結果。
■SBK第11戦フランス レース2順位結果(21周)
Pos.No.RiderTeam/MachineTime/Gap11J.レイカワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR)34'26.280260M.ファン・デル・マークパタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1)0.862322A.ロウズパタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1)1.70247C.デイビスAruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R)4.014576L.バズテンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1)4.989633M.メランドリGRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1)19.939791L.ハスラムカワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR)20.130866T.サイクスBMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR)20.30592L.キャミアモリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR)26.5641081J.トーレスチーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR)27.8551136L.メルカドオレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR)30.1901250E.ラバティチーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R)32.2831320S.バリアーブリックス・パフォーマンス(ドゥカティ パニガーレV4 R)48.0001423清成龍一モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR)48.2981528M.ライターベルガーBMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR)48.7031652A.デルビアンコアルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR)54.3841721M.ルーベン・リナルディバーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R)3 LapsRET11S.コルテセGRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1)11 Laps(リタイア)RET19A.バウティスタAruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R)19 Laps(リタイア)RET54T.ラズガットリオグルターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR)20 Laps(リタイア)
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