1.2L 3気筒のマイルドHV 容姿はほぼ同じ
ジープ・アベンジャーの発売は2022年後半。当初は、電気モーター版のみの提供が英国では予定されていたが、実際の市場の要望を踏まえ、内燃エンジン版の投入も決定した。まだ電気自動車は早い、と考えている人は欧州でも少なくない。
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ちなみに、ベースを共有するフィアット600eも、状況は似ているらしい。ガソリンエンジンを搭載した仕様が、英国にもやってくる可能性が高い。
現在、アベンジャーの内燃エンジン版にはMTのガソリンと、ATのガソリン・マイルド・ハイブリッドという2種類が用意されている。「選択の自由」を提供したと、ジープは主張する。
パワートレインは違っても、見た目はほぼ同じ。リアバンパーの下部からマフラーが出ていることと、マイルド・ハイブリッドのe-ハイブリッドでは、黄緑色の「e」のロゴがテールゲートに貼られる程度。シャープで若々しい雰囲気は、まったく変わらない。
搭載される内燃エンジンは、1.2L 3気筒ターボのピュアテック・ユニット。非ハイブリッドの場合、最高出力は100psで、燃費は17.8km/Lが主張される。
e-ハイブリッドでは、同じエンジンに電圧48Vのハイブリッドが組み合わされる。運転席の下に0.9kWhの駆動用バッテリーが載り、6速デュアルクラッチATに28psの電気モーターを一体化。システム総合での最高出力は128ps、最大トルクは20.8kg-mだ。
好印象なインテリアも基本的に同一
e-ハイブリッドのインテリアも、基本的に電気モーター版と変わりない。ATのシフトセレクターは、ダッシュボード下のボタンとなる。
着座位置は高めで、ステアリングホイールやシートの調整域は広く、理想的なドライビングポジションを探しやすい。内装は豪華とはいえないまでも、ジープらしい個性があり好印象。全方向に視界もいい。
ステアリングホイールの奥には、7.0インチのメーター用モニター。中級グレード以上では、10.25インチへ大きくなる。
ダッシュボード中央には、同じく10.25インチのインフォテインメント用タッチモニター。メニュー画面は論理的で、グラフィックは鮮明。アップル・カープレイとアンドロイド・オートに標準で対応する。
車内空間は、このクラスとしては広々としており、実用性は低くない。センターコンソールに大きな小物入れがあり、ドアポケットにはペットボトルを置ける。助手席正面の、ワイドな小物トレイもそのまま継承された。
後席側は、前席側の空間をゆったり取ると、やや窮屈。e-ハイブリッドの場合、駆動用バッテリーがフロントシートの下に搭載されるため、つま先の置き場に影響が出ている。
荷室容量は、電気モーター版では355Lだが、e-ハイブリッドでは380Lへ拡大する。トヨタ・ヤリスクロスは397Lと、更に大きいが。
動力性能は高くない ステアリングはダイレクト
試乗したe-ハイブリッドの動力性能は、高いとはいえないだろう。0-100km/h加速10.9秒だから、信号ダッシュでリードすることは難しいはず。とはいえ、出だしは充分に力強く、5.5kg-mを加算するE-ブースト機能が備わる。
中回転域は、粘り強く扱いやすい。非ハイブリッド版と比較して、48-96km/hの中間加速は30%も鋭いとか。幹線道路などで、違いを体感できるはず。
アクセルペダルを踏み込むと、1.2Lエンジンが気張っている様子が伝わってくる。流石に、ほぼ無音といえる電気モーター版の静けさには遠く及ばない。6速ATは、望み通りに変速してくれない場面もあった。
e-ハイブリッドでは、電気だけで最大1kmを走れると主張される。その能力は、トヨタのフルハイブリッドに届かないが、市街地を流すような環境では恩恵にあやかれる。発進と停止を繰り返す区間で、上質なフィーリングを味わえる。
大きな駆動用バッテリーを積まないe-ハイブリッドの車重は、バッテリーEV仕様より315kgも軽量。ステアリングの反応はダイレクトで、カーブを軽快に縫っていくような印象がある。
鋭く旋回させると、大きめにボディロールが生じる。敏捷性では、フォード・プーマが勝るとはいえ、落ち着きがあり運動神経は低くない。
乗り心地は、フラットな形状のシートも影響し、荒れた路面ではやや揺れが目立つ。つぎはぎの多い市街地でも、細かな入力をサスペンションは吸収しきれない。高速道路では、ぐっと質感が良くなるのだが。
現在のベストバランス・アベンジャー
アベンジャー e-ハイブリッドの燃費は、カタログ値で20.4km/L。今回の平均値は、18.5km/Lという結果になった。
バッテリーEV仕様のアベンジャーは、少々お高めなことは事実。対して、e-ハイブリッドの英国価格は2万5965ポンド(約490万円)から。その差は、1万ポンド(約189万円)近くある。
試乗車のサミット・グレードは、2万9200ポンド(約552万円)。18インチ・ホイールにモニター式バックミラー、キーレスエントリー、バックカメラ、オートヘッドライト、半自律運転システム、パワーテールゲートなどが標準装備される。
今回は試乗できなかったが、非ハイブリッドのMT版は2万3600ポンド(約446万円)から。こちらも魅力的な設定といえる。
e-ハイブリッドは、現在のアベンジャーのベストバランスにある。マイルド・ハイブリッドは燃費に優れ、英国価格は低めに設定され、充電に数10分を費やす必要もない。
もっとも、ジープはプラグイン・ハイブリッドの4xeも計画中とのこと。こちらが、最も有能なアベンジャーになる可能性は高い。
◯:優れた燃費 現在のベストバランス・アベンジャー
△:運転の楽しさはほどほど 実用性が秀でるわけではない
ジープ・アベンジャー e-ハイブリッド・サミット(欧州仕様)のスペック
英国価格:2万9200ポンド(約552万円)
全長:4084mm
全幅:1776mm
全高:1528mm
最高速度:183km/h
0-100km/h加速:10.9秒
燃費:2.04km/L
CO2排出量:111g/km
車両重量:1280kg
パワートレイン:直列3気筒1199cc ターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:128ps(システム総合)
最大トルク:20.8kg-m(システム総合)
ギアボックス:6速デュアルクラッチ・オートマティック(前輪駆動)
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