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「頼もしい」復調のカギ アルファ・ロメオ・トナーレへ試乗 一貫性や調和が惜しいプラグインHV

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「頼もしい」復調のカギ アルファ・ロメオ・トナーレへ試乗 一貫性や調和が惜しいプラグインHV

ブランドの復調を力強く支えるトナーレ

伝統あるイタリアン・ブランドの熱烈ファンには、冷遇されているかもしれない。しかし、業績を緩やかに好転させる功労者は、ジュリアではなく2種類のSUVだ。

【画像】「頼もしい」復調のカギ アルファ・ロメオ・トナーレ サイズが近い欧州製SUVはコレ 全194枚

中型SUVのステルヴィオは、生産終了が近づいている。それでも販売は堅調。小さくお手頃なミラノも控えているが、誰よりも力強く復調を支えているのはトナーレ。2023年には、全世界での販売数を30%も増加させ、欧州では約50%も増やした。

トナーレが属する、Cセグメントと呼ばれるクラスには競合も多い。BMW X1にボルボXC40など、いずれも実力派だ。プレミアムではない、プジョー3008やフォルクスワーゲン・ティグアンなども競争力は高い。

トナーレの強みは、アルファ・ロメオ流のデザインと、マイルドとプラグインという2種類のハイブリッド・パワートレイン。英国価格は約3万5000ポンド(約662万円)からに設定されている。

今回試乗したのは、主にプラグイン・ハイブリッドでトップグレードのヴェローチェ。イタリアで試乗したマイルド・ハイブリッドの印象も、交えてお伝えしたい。

スタイリングは、歴代のアルファ・ロメオの特徴を巧みに引用している。3連ヘッドライトは、1990年代の同社のSZから。ボディサイドのラインはGTから。丸い穴の開いたテレダイヤル・デザインのホイールは、定番といえるだろう。

とはいえ、フォルムは一般的なSUV的で、アルファ・ロメオ感は強くない。オーバーハングは長めで、ウエストラインは高め。ライバルより精悍に見えるものの、ひときわカッコいいとまではいえないように思う。

プラットフォームはグランデ・プント由来のSCCS

トナーレの全長は4530mmで、全幅1840mm、全高1600mm。Cセグメントでは、平均的な大きさにある。

プラットフォームは、ステランティス以前の、FCAグループだった頃に開発された「SCCS」。大幅な改良を受けているが、起源は2005年のグランデ・プントに遡る。

英国に導入されているパワートレインは、160psを発揮する電圧48Vの1.5Lマイルド・ハイブリッドと、280psを発揮する1.3Lプラグイン・ハイブリッドの2種類。前者が前輪駆動で、後者は四輪駆動だ。

プラグイン・ハイブリッドでは、4気筒のマルチエア・ターボユニットが前輪を駆動。単独で180psを生み出し、スターター・ジェネレーターも組まれる。後輪は、ERADと呼ばれる駆動用モーター・ユニットが担う。こちらは、122psの能力を持つ。

駆動用バッテリーは、15.5kWh。電気だけで最長61kmを走れると主張され、このクラスの平均より優れる。車重は1835kg。前後の重量配分は53:47だった。

サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式で、リアがマルチリンク式。コイルスプリングと、振動数調整式ダンパー(FSD)という組み合わせ。ヴェローチェ・グレードでは、アダプティブ・ダンパーへアップグレードされる。

車内は競合より狭め やや力不足のマイルドHV

車内空間は、競合ほど広くはない。運転席は、ステルヴィオより着座位置が高い印象。足元の空間はやや広めながら、頭上空間は前後とも限定的といえる。

ダッシュボードはシンプルで、このブランドらしく、メーター用モニターは長いカウルで覆われている。ステアリングホイールにはアルミ製シフトパドルが備わり、センターコンソールには従来的なシフトレバー。とても好ましい。

DNAと呼ばれるドライブモードのセレクターも、ノブのまま。エアコンの操作パネルには、実際に押せるハードボタンが並んでいる。

ただし、内装の製造水準が高いわけではない。不自然なエッジが残る成形部分も見られた。エアコンの送風口やタッチモニター周辺、メーターカウルなどは、もう少しソリッド感が欲しい。

荷室容量は、マイルド・ハイブリッドならトノカバー下で約500L。プラグインにすると、床下の空間が奪われ約400Lになる。形状はスクエアで、荷物は載せやすそうだ。

さて、アルファ・ロメオ期待のトナーレながら、走りの印象で「らしさ」が濃いわけではない。マイルド・ハイブリッドを、同社の技術者は適正サイズだと主張するが、訴求力ある運転体験にはやや力不足だろう。

低速域ではエンジンを始動せず走れるものの、距離は短い。強めの加速を求めると、大きな燃焼音が響いてくる。洗練性は低くないが、2.0LガソリンのBMW X1には及ばない。

7速デュアルクラッチATも、BMWの8速AT並みの滑らかさや変速スピードは得ていない。変速タイミングも、一層の調整を受けても良さそうだ。

満充電なら運動神経は高い 惜しい一貫性や調和

プラグイン・ハイブリッドでは動力性能に余裕が生まれ、求めただけの反応を得られる。ただし、それは駆動用バッテリーにも余裕がある場合のみ。満充電なら、0-100km/h加速を6.3秒でこなし、かなりの運動神経を発揮する。

充電が切れた状態では、0-100km/h加速は1秒ほど余計にかかる。充電のためエンジンのパワーが奪われると、深く踏み込むまで、アクセルレスポンスが悪くなる。充電量を問わない一貫性という点では、競合の方が一枚上手だ。

車内の防音性はほどほど。110km/hでの車内のノイズレベルは、71db。参考までに、クラストップの静寂性を誇る例で67dbだ。

操縦性は、アルファ・ロメオが特にアピールする部分。確かに、このクラスではダイナミックに反応する部類に入る。ボディロールは適度に抑えられ、コーナリング時にグリップ不足が露呈することも基本的にない。

ステアリングレシオは可変式ではないが、その評価は英国編集部で別れた。SUVとしては鋭く回頭するものの、やや一貫性に欠けると感じたスタッフもいた。

四輪駆動のプラグイン・ハイブリッドでは、コーナーからの脱出時などで、前後アクスルの調和がうまく取れていない印象。マイルド・ハイブリッドでも、特段機敏な回頭性を披露したり、自然な旋回性を楽しめるわけではない。

初のモデルとして誇れる完成度 競争力は低くない

乗り心地は、FSDを組んだマイルド・ハイブリッドの方がベター。荒れたアスファルトでも、衝撃を巧妙に均していた。車重が増えることもあって、プラグインでは落ち着きを保つことに若干苦労していた様子だ。

燃費は、プラグイン・ハイブリッドで17.6km/L。高速道路を長距離走るような場面では、11.3km/Lへ落ち込んだ。そのかわり、市街地中心で58kmを電気だけで走れることも確認している。

かくして比較的ハンサムなトナーレは、競争の厳しいCセグメントのSUVとして、低くない競争力を備えた選択肢に仕上がっている。欧州では特に人気カテゴリーの1つといえ、アルファ・ロメオにとっては頼もしい存在に違いない。

インテリアの品質や車内空間、ハイブリッド・パワートレインの一貫性や洗練性など、もう少しを求めたい部分は確かにある。価格設定も、比較的お高めといっていい。

それでもトナーレは、このクラスにおける同社初のモデル。充分に誇れる完成度にある。ダイナミックな魅力では、同様に初めてのSUVとなった、ステルヴィオには届いていないとしても。

アルファ・ロメオ・トナーレ 1.3PHEV ヴェローチェ(英国仕様)のスペック

英国価格:4万8440ポンド(約916万円)
全長:4530mm
全幅:1840mm
全高:1600mm
最高速度:206km/h
0-100km/h加速:6.2秒
燃費:71.4km/L
CO2排出量:33g/km
車両重量:1835kg
パワートレイン:直列4気筒1332cc ターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:15.5kWh
最高出力:280ps/5750rpm(システム総合)
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:6速オートマティック(四輪駆動)

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