ミュルザンヌ、国内試乗 ベントレーの本流に乗る
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:菊池 貴之
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今から10年以上も前の話だけれど、ロンドンの街を歩いていてふと目をやった建物の壁に、「ベントレー・モーターズ発祥の地」と書いたプレートを見つけて、なにやら嬉しい気分になったことがある。W.O.ことウォルター・オーエン・ベントレーが1920年に自身の名を掲げて設立した自動車メーカーの最初の本拠地は、ロンドン市内に位置していたのだ。もちろん後に郊外に移転するが、生まれは生粋の都会っ子だった、というわけである。
1920年代半ばから1930年に掛けて、ベントレーはルマン24時間レースで5回もの優勝を記録し、その速さ、強さを世に知らしめるが、それを駆ったドライバーがベントレーボーイズと呼ばれた富裕層の男たちだったこともあって、ルマンの祝勝会はロンドンでも一流中の一流といえるホテル、サヴォイで開かれたという話を、たまたま仕事がらみでサヴォイに泊まったとき、僕は部屋に置いてあったヒストリーブックで知った。つまりベントレーとは、もともとそういうポジションにあるクルマだったのだ。
アストンマーティンやマセラティがそうであるように、こういった名門自動車メーカーの多くは経営が立ちゆかなくなるのが常で、ベントレーもやがてロールスロイス傘下に入り、W.O.自身は会社を去って、その名前だけがブランドとして残った。それから幾十年かが過ぎた20世紀末、ロールスロイスも経営が悪化し、ドイツの有力メーカーによるロールスとベントレーの争奪戦が勃発、最終的には1998年にBMWがロールスの、フォルクスワーゲンがベントレーの親会社に落ち着いたのは、よく知られているとおりだ。
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