6シリーズクーペに試乗 走りも価格も、ギリ出し
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏
BMWのお膝元であるミュンヘンで開催されたニュー6シリーズの試乗会に参加してきた。3代目にあたるこのモデルの開発コードはF13でベースは5シリーズ(F10)である。サイズは長さ4894mm(+74mm)、幅1894mm(+39mm)、高さ1369mm(-5mm))と()内の数字が示すように旧6シリーズと比べると長く、ワイドで、幅広くなっている。またホイールベースは2855mmで75mm延長されている。
エイドリアン・ホーイドンクが率いるBMWデザイン・チームはこのクーペを先代のモデルと比べると常識的にまとめている。とは言ってもBMWの個性的なアイコンは健在で、フロント先端はフラットになったキドニー・グリルの上部分が低く突き出したシャークノーズ、その両脇にはフルLEDのアダプティブ・ヘッドライトが並んでいる。リアは伝統的なホーフマイスター・キンクを持ったCピラー、そしてクラシックで端正なラインのルーフがトランク・リッドになだらかに続いている。
旧6シリーズ(E63)で特に不評だった段付きトランク・リッドは消え、L字型のリアコンビネーションが採用された。
コクピットはカブリオレと同一でスポーティ&ラクシャリー、操作系も人間工学的なレイアウトを持っている。また9.2インチのフラット・スクリーン・モニター、ワイド画面のカラー・ヘッドアップ・ディスプレイがハイテックを象徴している。
問題はキーレス・システムで、キーを置く場所に困る。6シリーズのキーは長さ7.5cm、幅が4cmもあるので車内に適当なスペースが欲しいのだ。
ニュー6シリーズは幅とホイールベースが延長された結果、リアコンパートメントにも若干の余裕ができた。しかし大人ではヘッドルームが足らず4人の長距離ドライブは厳しい。またトランク容量は10リッター増えて460リッターとなり46インチのゴルフバッグが3個搭載可能になった。でも3名でのゴルフ・ドライブはきつい…。
用意された試乗車は全て640i、つまり搭載されているエンジンは直列6気筒、ガソリン直噴、ツインスクロール・ターボ、バルブトロニック、ダブルVANOSなどBMWのハイテックをすべててんこ盛りにしている。その結果、最高出力320ps/5800-6000rpm、最大トルクの450Nmは1300-4500rpmの広範囲で発生する。
トランスミッションはZF製の8速トルクコンバーターが標準装備され、カタログ性能は0-100km/hの加速が5.4秒、最高速度は250km/hでリミッターが介入する。
試乗車に装着されていたタイアはスタンダードの18インチではなくオプションの19インチで、フロントが245/40R19、リアが275/35R19であった。
走り出す前に新しくなったドライブ・モードを確認する。ここでは従来の「ノーマル」に代わって「コンフォート」になっている。また上の2つ「スポーツ」と「スポーツ+」は健在だが、「ノーマル」の下に「ECO PRO」というエコ・モードが加わった。
市街地、一般道、ワインディングを含んだミュンヘン近郊のコースへ向かう。1300rpmから発生する大トルクのおかげで一般路ではまったくスムースで、パワフル。まさに電気モーターのような加速感だ。アウトバーンの追い越しもまるで無段変速機のように加速する。また直進高速安定性はまったく問題なくこなす。さらに最大で2.5度までリアをステアさせるインテグラル・アクティブ・ステアリングはレーンチェンジで瞬間移動を体験させてくれる。
クーペは高いボディ剛性を得られるため、シャーシ・セッティングはカブリオレと比べるとずっとダイナミックにチューンされておりワインディング・ロードで楽しめる。新たに加わったロール・スタビライザーの効果も加わって、取り回しはまるで一クラス下のクルマのように楽しい。
最後に、640iに装備されているECO PROについて語ろう。このモードを選択するとエンジン・キャラクター、スロットル開度、そしてシフトタイミングが低燃費指向にプログラムされる。感覚的にはギアを一段上にして、低いエンジン回転数で走るようで、特に気を使う事はなかった。ただし日本での運転パターンでどうなるかがになる気になる。開発担当重役のDr.ドレーガーは実用燃費で20%は向上すると説明している。
BMW発表の燃費はEU基準定格走行モードで100kmあたり7.8リッター、単純に計算するとリッターあたり12.8kmとなる。
発売時期は世界全域統一で10月15日と決まっている。価格はドイツで7万4700ユーロ(19%の付加価値税込:約897万円)となっている。
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