新型ゴルフ、プレミアムの民主化が始まる!
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:中野 英幸
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:中野 英幸
DCC付きハイラインの乗り味はもはや完全にプレミアムカーの領域に達している。コンフォートモードはもちろん、ノーマルモードでも足はしなやかに路面に追従し、ショックを和らげ、タイヤを常に安定した状態で接地させる。残念ながらDCCなしには試乗できなかったが、VWの担当者によれば「乗り心地はやはりDCC付きが有利」とのことである。
それにしても、このクラスでこの重厚さ、しなやかさ、ゆったり感はすごい。それでいて、速度を上げれば上げるほどフラット感が増し、コーナーでは横Gが高くなればなるほど路面にピタリと吸い付く。FFでありながらステアリングと駆動輪が切り離されたFR車のような滑らかなステアリングフィール、初期操舵時の正確性、大きく切り込んでいったときの確かな効きなど、コーナーワークにも文句の付け所はない。
コンフォートラインは、DCC付きハイラインと比べると全体的に硬めで、より軽快な印象。荒れた路面ではゴツゴツ感を正直に伝えてくる傾向があるし、うねりのあるコーナーでのライントレース性もわずかに劣る。そうはいっても不満なレベルではなく、比べる相手が悪すぎるというのが正直なところ。絶対的には十分に快適だし素直に走る。ゴルフ5以前のいかにもドイツ車的乗り味が好みだったという人は、むしろコンフォートラインを気に入るかもしれない。
1.2リッターTSIは全体的なトルクは細めだが、それでも1.8リッターの自然吸気エンジン並みのトルクを1400rpmから発揮するため、乗っていてトロいなと感じることはない。街乗り中心なら、むしろ「これで十分だな」と感じるだろう。たまには刺激的な加速も楽しみたい、太いトルクを活かして上質な走りを味わいたい、という下心さえ捨てれば、1.2リッターTSIでも不足はない。
というわけでそろそろまとめに入ろう。ひと言でいえば、ゴルフ7は驚異的によくできたクルマだ。魅力的な新型純正ナビの用意が遅れていることを除けば死角らしい死角はない。いやむしろプラスαの魅力に溢れている。上質で使いやすく静かで快適で走らせて気持ちよく安心で燃費もいい……こんなクルマを250万円を切る価格で提供できるのはおそらくVWだけだろう。
もちろん、燃費(とくに市街地)に注目すれば、ほぼ同価格帯にいるプリウス(217.0万~334.0万円)も凄い。しかし内外装の質感、静粛性、乗り心地、走り味といったトータル性能ではゴルフが明らかにリードしている。しかも、ていねいな運転を心がければ燃費だって高速道路で20km/L、一般道路でも15km/Lはいく。そう考えると、ゴルフ7はプリウスから客を奪う実力と可能性を大いに秘めたモデルである、という結論を導き出すことができるのではないか。メルセデスAクラスやボルボV40といった輸入Cセグメントがライバルとされがちだが、ゴルフ7の本当のライバルは、日本を代表する大ベストセラーカーであるプリウスなのかもしれない。となればまさに黒船来襲。VWがもくろむ「プレミアムの民主化」は、日本の自動車業界に大きなインパクトを与えることになるだろう。
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