250、650、1000とモデル展開するVストロームシリーズはスズキが大切に育てているアドベンチャーバイクのブランドだ。
例年、浜松のスズキ本社で行われる「Vストロームミーティング」も盛況で、2019年11月のミーティングでは日本での発売時期などは未定の段階ながら、新型Vストローム1050を国内で初お披露目した。海外はもちろん、スズキとしては国内に向けてもこのモデルチェンジにかなり気合いを入れている証と言えるだろう。
その新型Vストローム1050の世界統一試乗会がスペインで行われた。自身もVストローム650に乗り、Vストロームシリーズを愛してやまないノア セレン氏のファーストインプレッションをお届けする。
DR-Z&DRビッグを担当したデザイナーを起用
【画像ギャラリー9点】Vストローム1050シリーズのスタイリングを全方位から見る
今回の大きな変更は、まずなんといってもデザイン。Vストローム1000として2013年に最初のモデルチェンジが行われた時、特徴的な「ビークデザイン(クチバシ)」が取り付けられて話題となったが、車名も新たに「Vストローム1050」となった今回のモデルチェンジでは、かつてのデザートレーサー「DR-Z」やその公道版モデルであるDRシリーズのイメージをさらに強調。ビークデザインの元祖であるスズキとして、イメージ作りを大切にしたことがうかがえる。
Vストローム1050が「DRによく似ている」となるのは実は当然なのだ。というのも、かつてのDRをデザインしたデザイナーがチームに加わっているのである。
その“オリジナル”をデザインした本人が若手女性デザイナーとともに、DRのデザインを現代的にアップデート──まさに伝統を生かしたアプローチと言えるだろう。
また全体的な質感の向上も気を使ったとのことで、各種配線をしっかりと隠すだとか、エンジンまわりのボルト類の形やサイズをそろえるといったことにも注力。細かい部分をしっかりとツメることで「全体の仕上がりや質感の向上に取り組むつもりです!」とのことで、Vストローム1050はその第一号車になったそうだ。
1050XTは電子制御を大幅に充実
技術的な部分での変更は、電子制御技術の充実が主だ。「スズキ・インテリジェント・ライド・システム」(S.I.R.S)と名付けられたシステムは、クルーズコントロール、ヒルホールドコントロール、スロープディペンデントコントロール、ロードディペンデントコントロール、ライドバイワイヤ、スズキライドモードセレクターといった新機能が盛り込まれている(上級グレード・1050XTに標準装備で、スタンダードでは一部機能が省略される)。
1050XTに搭載されるクルーズコントロールは同シリーズ初採用。約50km/hから160km/hの間で設定することができる(今回テストした海外仕様の場合)。
ヒルホールドコントロールは登り坂で停止した際に、自動的に約30秒間ブレーキをかけてくれることで停止中のブレーキ入力を不要にしてくれるほか、坂道発進をサポートしてくれる機能だ。
さらに先進的で賢い新機能もある。ロードディペンデントコントロールとスロープディペンデントコントロールだ。
前者はライダーの体重や積載する荷物の量、もしくはタンデムか否かなどの重量負荷を検知し、ブレーキ力をサポートしてくれる機能だ。走り出して10回ほどブレーキ動作をすると、ブレーキ入力圧と実際の減速度から負荷を自動的に学習し、適切なブレーキ補助を行ってくれるというもの。
後者は下り坂でのハードブレーキング時にリヤが持ち上がってこないよう、リヤブレーキを状況に応じて多めにかけてくれ車体姿勢を安定させる機能である。
6軸へと強化されたIMU(慣性計測装置)を搭載する1050XTは、繊細な車両姿勢の把握が常に行われているため、こういった新機能が可能となった。もちろん、モーショントラックブレーキやトラクションコントロールなど、従来モデル・Vストローム1000に備わっていた機能もアップデートを受けながら継続採用している。
乗って気付く、ハード部分の優秀さ
電子制御の充実は安全装備としてありがたく、またトピックにもなりやすいが、実際に走り出すと脇役に徹する部分。「走り」においての進化は電子制御とは別の所で感じられた。
最初に気づくのは、従来モデル・Vストローム1000に対して全体的にコンパクトに感じられること。車両の寸法はほとんど変わっていないため感覚的な部分ではあると思うが、以前の有機的な曲線デザインから直線基調デザインに代わったことによる影響もあるだろう。650と比べても大きいと感じないコンパクトなフィット感がある。
また、ファットバー形状のハンドルを採用しつつもライダー側に寄せられているほか垂れ角もついているため、ロードスポーツモデルから乗り換えたとしても親しみやすい自然なライディングポジションだ。
スムーズでフレキシブルなエンジンキャラクターはVストローム1000から引き継ぐもの。
排気量なりのパワーはありつつ、瞬発力を重視したものと言うよりは長距離を疲れずに走り続けるのに適した、アドベンチャーモデルに求められるべき味付けとなっている。
それでいて1050へのモデルチェンジでヨーロッパの最新環境規制「ユーロ5」に対応しつつもパワーアップしているだけのことはあり(最高出力はVストローム1000から8馬力アップし107馬力に)、高回転まで回せば不足ない加速力を見せてくれる。厳しい環境規制のもと、大排気量Vツインをここまでフレキシブルに調教した点には素直に頭が下がる。
そしてもう一点、個人的に大歓迎した変更はハンドリングのフレンドリーさだ。
そもそもVストロームシリーズはあくまでロードモデルでありオフロードでの走行性能はうたっていなが、前モデル・Vストローム1000は特にオンロードでのダイレクト感を追求したイメージがあり、状況がいいと最高に楽しい代わり、路面が荒れてくると跳ねるような硬さがなくはなかった。
しかしVストローム1050ではサスペンション設定の変更と、ブリヂストンが専用設計したタイヤのおかげでフロント周りにしなやかさが生まれ、オンロードではこれまで通りのパフォーマンスを維持しながらも、砂が浮いているような路面や舗装が荒れた路面、さらにはダート路でまで懐深いハンドリングへと進化していたのだ。ますます万能性が高まり、新型で最も進化したと感じた部分である。
1000ccのVストロームとしては、完成の域なのではないか
さらにフレンドリーでフレキシブルさを推し進めたエンジン、さらにオールマイティな方向へとまとまってきたハンドリング、ライダーを選ばないコンパクトで軽く感じる車体、そしてあらゆる状況をサポートしてくれる電子制御。
1050は従来モデル・Vストローム1000から次のステージへと進化したと感じさせ「もはや何もリクエストすることはない」という域まで達したように思う。
上級グレードのXTとベーシックなスタンダードを用意するのもスズキらしい。Vストロームシリーズが気になっていた人がいたとすれば、この新型1050はさらに気になる一台になるはず。万人に薦められる優秀なツーリングバイクである。
スズキVストローム1050諸元 [ ]内はXT
【エンジン・性能】
種類:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ 総排気量:1037立方センチメートル 最高出力:79kW<107ps>/8500rpm 最大トルク:100Nm<10.2kgm>/6000rpm 燃料タンク容量:20L 変速機:6段リターン
【寸法・重量】
全長:2265 全幅:870[940] 全高:1515[1465] ホイールベース:1555 シート高855[850](各mm) 車両重量:236[247]kg タイヤサイズ:F110/80R19 R150/70R17
試乗レポート●ノア セレン 写真●スズキ ライディングギア協力●アライヘルメット/アルパインスターズ 編集●上野茂岐
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