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猛追及ばなかった平川、号泣したキャシディ。無念のKeePerと消えた“レクサス艦隊”

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猛追及ばなかった平川、号泣したキャシディ。無念のKeePerと消えた“レクサス艦隊”

 スーパーGT最終戦もてぎ。決勝レースを終えてライバルのRAYBRIG NSX-GTタイトルが決まった後、KeePer TOM'S LC500のニック・キャシディは号泣していたという。そして「今日の取材は勘弁してくれ」と、誰に対しても壁を作った。平川亮もまた、「『悔しい』では表すことができないくらい」とその心境を表現する。

 抜きにくいもてぎはピットストップが逆転の大きなポイントになる。停止時間とアウトラップを短縮できるタイヤ無交換作戦は、当然選択肢のひとつだった。だが皮肉にもそれが陣営のシナリオを狂わせてしまったのかもしれない。「一度は判断を下したが、まわりがバタバタと入り始めたり、36号車と重なりそうだったので躊躇した」と小枝正樹エンジニアは言う。キャシディのタイムは悪くはなく、レイブリックNSXも引っ張っているのでもう少し様子を見ようと。だが、その間に、それまでライバルと6~7秒で推移していた間隔が、一気に9秒以上に開いてしまった。

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 たしかにキャシディから「タイヤのパフォーマンスはだいぶ落ちてきている」というインフォメーションはあった。「その時点で早く決断せず、予定を崩してしまった」と小枝エンジニアは悔やむ。ピットでの逆転はほぼ不可能になってしまったため、セオリーどおりの4輪交換をして、あとはコース上で前に出るしかない。引っ張った分、燃料は軽く、タイヤはフレッシュだ。

 ただし、レイブリックNSXも同時に入ったため条件は同じだが。コースに戻ってみると、タイトル争いの2台が揃ってポジションを落としていることから、フィニッシュ順位を重視するという意味では、両チームともこの作戦は失敗だったと言える。ただし、対ライバルとの位置関係だけならば、レイブリックNSXに軍配が上がったということになる。

 逆転を託された平川がコースインしたとき、ジェンソン・バトンとの間には4台のマシンがいた。このうちLC500が3台、NSXが1台。バトンの前にはZENT CERUMO LC500の石浦宏明がいて、フタをしている。その間に何とか前の4台を攻略したい。だがこのすべてをパスしたのは、6周も後だった。

 レイブリックNSXの後ろのポジションに浮上したときの差は約7秒。この間隔は周回ごとに縮んでいく。やがてその差は1秒を切り、残り5周の時点でテール・トゥ・ノーズになった。キーパーLC500の勢いから、チェッカー目前の大逆転が脳裏を掠めるが、当の平川は限界を感じ始めていた。

「最初の(4台を抜く)段階でタイヤをかなり使ってしまっていた。向こうはタレている雰囲気はなかった。並べそうな瞬間はなく、ぶつかる覚悟で行かないと無理なくらい」

 レクサスLC500のステアリングには、パワーアップが可能な赤いダイヤルが付いている。要所で使うと効果的だが、それをフルで使っても届かない。それだけホンダNSXのポテンシャルは高かった。残り3周になったところで一瞬差が開いてしまったのは、V字の立ち上がりで2速から3速にギヤが入らなかったためだ。これが致命傷となり、ついに望みは絶たれてしまった。

 たしかに予選のNSXは速い。でも決勝ではそれほどでもない。ただし、第7戦オートポリスほどではないはず──この予想は当たっていた。だが、決勝でのライバルの落ち幅が少なく、それは予想以上だった。ならば戦略やチームワークで対抗するしかないのだが、レクサスは「メーカーオーダーは出さない」。

 思えば2016年の最終戦。決勝終盤、ランキングトップのデンソーRC Fがトップを走り、ライバルのモチュールGT‐Rとの間に4台ものRC Fを従えていた。仮にトップが何らかの理由で消えたとしても、次のRC Fが必ずチャンピオンに繰り上がるような完璧なフォーメーションでライバルを封じ込めた。敵を絶望の淵に突き落とす、あのレクサス艦隊の姿は今季はなく、個人戦でがんばるしかない。残り3周、“個”の力で約コンマ5秒差まで追い詰めたが、そこまでだった。

「最終戦に同ポイントに持ち込んだのはいいことだったと思います。チームもTRDもがんばって最後にこういう戦いができた。クルマは持ち込みからほとんど触ってなくて、悪くはなかったです。でも予選も決勝も、NSXが速かった」。平川は2018年の戦いを、そう締めくくった。

 1年間戦ったマシンは、現在ファクトリーでバラバラになっている。12月に予定されているセパンテストの準備のためだ。この走行から2019年の雪辱戦は始まるのだ。

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