なぜ導入? クルマへの影響は
2019年4月16日、欧州議会は、2022年7月から発売される新型車にインテリジェント・スピード・アシスト(ISA)システムの装着を義務付けることを決定した。この法律はEU圏内に適用され、英国では未確定だが、導入の兆候が見られる。
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欧州議会が法案にゴーサインを出してからしばらく、特に欧米の自動車メディアではISAが見出しを飾った。しかし、そのほとんどは「速度制限」についてのもので、議会が言うところの「インテリジェント(知的)な速度アシスト」に関するものではなかった。今回は、速度制限に限らず、ISAについて幅広く見ていきたい。
EUでスピードリミッターとドライバーモニターが義務化へ
欧州で見られる多くの報道では、「インテリジェント」や「アシスタンス」といった重要な単語はあまり使われず、「2022年以降すべての新型車にスピードリミッターを搭載」といった見出しが付けられることになった。
確かに、読者の興味を強く引く見出しだし、内容も大きく間違っているわけではない。英国のAUTOCARとて他媒体を揶揄することはできないだろう。しかし、偏った情報発信の方法は事実を湾曲して伝えてしまう。一部では、「速度制限」がクルマの性能とハンドリングを無意味にするとまで予測されている。
改めて、ISAの真意を考えてみたい。インテリジェント・スピード・アシスト・システムとは何か、それを搭載したクルマの運転はどのようなものか。本当にクルマをつまらなくさせてしまうものなのか。
なぜISAが必要なのか?
ISAシステムに関して欧州議会に助言を行った欧州運輸安全協議会(ETSC)によると、欧州諸国ではスピード違反が大きな問題となっており、EU圏内で毎週500人の死亡事故が発生している主な原因は、スピードの出し過ぎにあるという。
スウェーデンとオランダの研究では、ISAを導入すると、たとえシステムのスイッチを切っていても、ドライバーは比較的ゆっくりと運転することが示されている。
ETSCのプロジェクト・ディレクターであるグラツィエラ・ジョスト氏はISAについて、「EUに大きな変化をもたらす一世一代のチャンスです。すべての新型車にISAを標準装備すれば、最終的には交通死亡事故の5分の1を防ぐことができるでしょう」と述べている。
まとめると、交通死亡事故の原因はスピードの出し過ぎによるところが大きく、ISAをすべての新型車に導入することで、交通事故における死者数を大幅に減らすことができるはずだ、というのがETSCの考え方である。
ISAはどのように機能するのか?
ISAは、クルマに取り付けたフロントカメラと、車載のナビゲーションシステム(カーナビ)を使って制限速度を認識する。カメラで道路標識を読み取り、ナビの位置情報と合わせて認識する仕組み。制限速度を超えている場合は、エンジンに供給される燃料を制限することで速度を抑制する。
ブレーキ操作には一切介入しないので、車速の低下は緩やかで段階的とされる。ISAが作動すると、アクセルペダルが反応しなくなるが、EUではオーバーライドが可能で、アクセルを強く踏めば加速できる。もし制限速度を超えて運転し続けた場合、ISAは警告音を鳴らし、ディスプレイにも数秒間警告を表示する。
システムはいつでもキャンセルすることができる。ETSCは、ドライバーがISAを受け入れやすくするために、最初の数年間はキャンセル機能の搭載を推奨している。もちろん、搭載されれば半永久的に使えるはずだが、いずれは搭載されなくなるかもしれない。
ISAシステムの精度は?
ドイツのドライバー団体ADACが実施したテストでは、2015年に発売のフォードSマックスに搭載されたISAシステムは、約90%の正確性を示した。2018年、道路標識認識システムとISAのサプライヤーであるインテル傘下のモービルアイ(Mobileye)社は、欧州議会のワークショップで、ほとんどのEU諸国で最高95%の精度があると述べた。また、さらに精度を高められるとしている。
ISAシステムの使い方
フォードは2015年、欧州で販売するギャラクシーとSマックスにISAをオプションで導入したところ、購入者の95%が追加したという。現行のフォード・フォーカスは、初めて標準装備されたモデルだ。AUTOCARの英国編集部は、公道において約300kmのテスト走行を行っている。
システムを起動するには、ステアリングホイール上の「LIM」ボタンを押す。制限速度はメーターディスプレイとナビ画面に表示される。先述の通り、ドライバーの意思でいつでも解除可能だ。
システム作動中、制限速度を超えようとすると、エンジンのパワーが落ちていくのを感じる。ペダルを少し強く踏み込むと(キックダウンの必要はない)、リミッターが解除され、フルパワーに戻る。
フォードに搭載されたISAでは、メインのLIMボタンとは別に、複数のボタンで上限速度の設定を上げたり下げたりすることができる。一見、おかしなものにも思えるが、後続車の列ができると使うようになる。システムが義務化されれば、スピードアップへのプレッシャーは軽減されるはずだ。
編集部が英国でテストしたところ、ISAは、時速20マイルゾーンと30マイルゾーンが交互に存在するようなエリアで特に有効であることがわかった。また、制限速度が時速40マイルから30マイルに変更された区間でも有効であった。どこから制限速度が切り替わるのかわかりにくい場所でも便利だ。
テスト中、システムの反応が鈍く、近隣の別の道路で設定されている制限速度に惑わされたことがあった。また、ハンプシャーの静かな村で、制限速度が誤って時速60マイル(97km/h)と表示されたことも一度だけあった。
ドライバーからは嫌われる存在?
ISAがいつの日か解除できなくなる可能性があるということは、近い将来クルマの運転を楽しむことができなくなるのではないか。クルマや運転が好きな人は、そのような心配を抱くかもしれない。
欧州委員会は、ISAが作動していないとドライバーの注意力が低下し、低速ゾーンに入るときに減速することを忘れ、高速ゾーンに入るときに加速することを忘れるという研究結果を発表している。
同時に、ISAシステム全般が抱える課題についても正直に述べている。例えば、ISAを使用する際、ドライバーが過信してリアルタイムの道路状況を無視したり、ISAが作動しない道路で普段以上にスピードを出そうとしたりすることがある、といった調査結果も認めている。ドライバーをはじめ、周囲の車両にストレスを与える可能性もある。
また、速度制限装置を「非常に役に立つ」と考えるドライバーは25%に過ぎないという調査結果も明らかにされている。しかし、この調査では、速度制限装置を体験した後、多くのドライバーは導入を受け入れるようになったという結果が出ている。
英国編集部のテスターも、速度制限装置を受容するようになった。街中では特に、前方や周囲の状況に気を配りやすくなるため、有効なシステムと言える。一旦使い始めると、やがて習慣となり、ISAの介入が当たり前になる。これは安心感につながる一方で、習慣を断ち切るのは難しい。
もしEUがISAを任意に解除できないようにするのなら、まずドライバーの遵法精神や、ISAの事故削減への貢献度を見直すことを期待する。
英国記者が考える「アフターISA」の楽しみ方
近い将来、ISAの導入が予想される英国のAUTOCAR記者は、「アフターISA」についてどう考えているのか。彼らの意見を聞いてみた。
リチャード・レーン
「もし運転の楽しさが、クルマとの会話(コミュニケーション)にあるとしたら、すでに気になるところがたくさんあるはずです。最近の高性能車の多くは、会話が弾む前に制限速度に達してしまいますし、本当に親しくなるためには法を破るリスクを冒すことになります」
「だから、ISAが普及する未来では、わたしはモダン・クラシックを買いたい。RSメガーヌ275とか、997世代のポルシェ911カレラとか。あるいは、アルピーヌA110を買って、ずっと持っていたいですね」
マット・プライヤー
「これからは、ゆっくり走ることに楽しみを見いださなければなりません。それは悪いことではありません。率直に言って、僕達は今、そうすべきなのです。だから僕は、古くて奇妙なクルマ、時にはバイクに乗って、モータースポーツを楽しんでいこうと思うんです。制約の少ないバイクと古いクルマを何台か所有することになるでしょう」
「特殊なクルマやバイクを自分で作ってみたいという漠然とした計画もありますよ。今の夢は、ホンダの芝刈り機/カート用エンジンGX160から、最高出力75psくらいの空冷2.0L V12を作ること。僕は物置の中で、徐々にひげを生やした老人になっていくと思いますが、それもそれでいいですよね」
アンドリュー・フランケル
「ISAシステムが導入されたら、わたしはどのようにレクリエーション・ドライブを楽しむのだろうか?今と同じように、崖から突き落としても制限速度に達しないような、古くて遅い小型車を運転することになるでしょうね。最近では、復活祭のとき、友人と2人で1950年代のシトロエン2CVに乗り、記憶にある限り最も楽しいドライブを体験しました。彼もわたしと同じように、ほとんどすべてのクルマに乗ってきた幸運な人です」
「現代のクルマと違って、古い小型車は合法的な速度で限界まで走らせることができるのです。スピードの出し方を学び、持てる力を最大限に発揮する。現代的なドライビングよりも楽しいだけではありません。なぜなら、自由に使えるパワーが20psに満たないため、すべてに時間がかかりますが、その長い時間を楽しむことができるからです」
マット・サンダース
「ISAについて一般の人よりも詳しい人たちに話を聞いたところ、自動車愛好家の不安は杞憂に終わったようです。この技術が常時稼働するためには、良好なモバイルデータ接続と明確で規則的な制限速度の標識が必要になります。僕の毎日の通勤には影響があるかもしれませんが、最高のドライブができるような、標識がまばらな人里離れた道路に大きな影響を与えるとは思えません。ISA導入後にモーターライフを楽しみたいなら、交通量の少ない道を探すといいでしょう」
コリン・グッドウィン
「わたしにとって、高速走行は欧州大陸でさえ何年も前に終わったことです。多額の罰金、クルマの没収、そして最悪の場合は刑務所送りになる可能性があり、わたしは足の力を緩めました。ですから、ISAと一緒に暮らすのは簡単なことです」
「わたしはオースチン・セブン・スペシャルを作り、制限速度に近づくことなく、自分自身をハラハラドキドキさせることになるでしょう。海面から50フィートの高さで、時速200マイルで飛行機を飛ばす。そして、動力を使う趣味の中で最も美しいとされるオートバイに乗る。素晴らしいことだと思いませんか」
スティーブ・クロプリー
「これからやってくる速度制限のある新しい世界を考えると、わたしは幸運な人間の1人かもしれないと思います。わたしのような人間は、クルマの速さと同じくらい、その進歩を楽しんでいます。わたしはほとんど常に制限速度を守り、かなりゆっくり走りますが、たまに気が向くと、安全で誰も見ていないと判断したときに、ちょっとだけ疾走することがあります。これからも、同じようにやっていくつもりです」
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みんなのコメント
それは車自体の性能であって、運転技術とは関係ない。
その車を免許を取って数年ほどの若輩者や道交法を守らない無法者が、
俺は運転が上手いんだと勘違いにも程がある走り方をするから危ない。
他人を怪我させ後遺症が一生残ったり、殺したりすることがどれほどの事か、
事故を起こしてから、やっとわかって一生悔やみ続けても遅い。
やってしまってから夜に思い出して眠れないだろうし、
殺してしまったとしたら毎年数回でも被害者の仏壇や墓参りに行けるのか?
保険会社と弁護士に任せっきりでは、被害者家族も一生納得しません!
ISAは日本でも義務化されて当然です。
前方への拡散、つまり余分にスピードを出して前方へ散らばることが必要なわけですが、
こういったものが装備されてしまうと、
今でもそうですが、さらに加速しない車ばかりになってしまい。
一度渋滞してしまうと全くそれを解消できなくなってしまう恐れがあります。
平均速度80キロで流れていた道路が渋滞になってしまい平均速度20キロになってしまったとします。
速やかに回復させるためには、はっきり言えば120キロのスピードが必要になります。
これは物理学では当たり前の現象です。
最前列にいる車が速く走ることは実は必要な事なんですよ。