新ルール適用で開幕した2024年シーズン。予選方式の変更およびドライタイヤの使用本数削減によって新たな戦い方が求められるなかで見えたのは、タイヤ無交換と4本交換のどちらにも対応したブリヂストンタイヤの強さだった。果たして“1強”の状況は続くのか……。
5月2日発売のauto sport臨時増刊『2024 スーパーGT公式ガイドブック』では、開幕戦岡山の結果を踏まえ、GT300クラスの2024年シーズンを展望する。
【タイム結果】GTエントラント協会主催 GT300鈴鹿専有テスト 5月8日セッション1/2
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多種多彩な車両が参戦するスーパーGTは今季、大きな変化を迎えることとなった。1大会で使えるドライタイヤの本数が1セット削減され、300kmレースでは2日間で4セットしか使えないということを考慮し、予選方式が変更されたのだ。
予選はQ1とQ2のタイム合算方式となり、予選Q1から決勝スタート時まで同じタイヤを使用することが義務づけられた。参加台数の多いGT300クラスは、上位グリッドを獲得するためにはQ1各グループでトップ8以内に入らなければならず、ポールポジション獲得のために攻めた走りをすることでタイヤにかかる負担は大きくなり、決勝のレースペースに影響が出る可能性もある。昨年もGT300クラスではタイヤ無交換作戦を選ぶチームがいたことを考えると、このルール変更によって戦い方が変わるのではないかという意見もあり、チームはその対策に追われている印象だった。しかし、フタを開けてみると“いつもどおり”を貫いたチームが上位を独占する結果となった。
4月13~14日に開催された開幕戦岡山は予想以上の暑さとなり、タイヤのセット数も減っていることから、タイヤのライフがどこまでもつのか心配する声もあった。そのなか、予選で速さを見せたのは岡山ラウンドを得意とする65号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)だった。
まずはQ1担当の篠原が1分26秒181でBグループ2番手につけると、Q2グループ1では一度アタックしたユーズドタイヤでタイムが伸び悩むライバルが多いなか、蒲生は1分26秒016をたたき出し、合算タイムでも同じブリヂストン(BS)の2号車muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)を0.067秒逆転しポールポジションを奪取した。
「新予選方式になっても意識することは変わらない。チームとドライバー、スタッフ全員がミスなくベストを尽くすこと」と話すのは、65号車の黒澤治樹監督。ルール変更や周りの状況に惑わされることなく、自分たちのやるべき“いつもどおり”を貫いたことでポールポジションという最高のスタート位置を手にした。
■上位5台中、4台がブリヂストン装着車
日曜日の決勝レースはさらに暑くなり、途中には気温28度、路面温度45度を記録。夏のようなコンディション下で82周に及ぶ長丁場の戦いが繰り広げられた。レースは1周目から各所でアクシデントが続出し、セーフティカーが導入される波乱の展開に。8周目にレースが再開されると65号車の篠原と2号車の平良による接戦のトップ争いが続いた。序盤は押され気味だった篠原だが、GT500との混走をうまく使ってリードを広げていく。
全体の3分の1を迎えてピットウインドウが開くと、上位陣では7番手を走っていた昨年王者の52号車Green Brave GR Supra GTが25周目にピットイン。昨年と同様にGTA-GT300+BSの強みとなるタイヤ無交換の作戦を選んだ。つまり、予選Q1から決勝終了までを1セットのタイヤで走り切ることを意味するのだが、それでも陣営はピットでのロスタイム削減を選んだのだ。これに続くように、同じGTA-GT300規格の2号車mutaも34周目にピットインし、タイヤ無交換でマシンをコースへと送り出した。
早めにピットインしたライバルに対し、65号車LEONはコース上にとどまってギャップを築こうとするが、すでにピットストップを終えた車両の集団が目の前に現れ、篠原のペースが鈍る。その間にmutaの堤が着実に周回を重ねてトップとのギャップを縮めにかかった。
65号車は50周目まで引っ張ってピットイン。こちらはタイヤ4本交換を選択したことで作業時間が長くなり、2号車mutaと52号車Green Braveの先行を許した。ただし、これは65号車陣営には想定の範囲内。後半担当の蒲生がフレッシュタイヤの利点を活かしてライバルを追いかける。まずは52号車Green Braveに追いついて、残り12周でオーバーテイク。その後も逆転トップを目指してペースを緩めることなく攻めていったが、この時点で2号車mutaとは16秒以上の差があり、追いつくことはかなわなかった。
チェッカーフラッグの瞬間を迎え、開幕戦を制したのは、最後まで安定したペースを守り抜いた2号車muta Racing GR86 GTだった。昨年のGT300クラスで2位表彰台を3度経験し、シリーズランキングでも2位と悔し涙を流し続けた堤と平良は、体制を継続して迎えた今季初戦を優勝で飾るという最高のスタートを切った。しかし、レース後の平良は「まだまだ、これからです」と冷静だった。彼らが見据えるのは昨年果たせなかったシリーズチャンピオンの座。この岡山ラウンド制覇は、それを実現するための“第一歩目”にすぎないのだということを、このふたりは誰よりも理解している雰囲気がうかがえた。
タイヤの使用セット数削減や新予選ルールの導入で展開に変化が生じるかと思われたGT300クラスだが、終わってみれば“いつもどおり”タイヤ無交換作戦で粘るチームと、タイヤを交換して追い上げていくチームという図式に変わりはなさそう。次戦以降、開催コースやレース距離も変わっていくことになるが、おそらく根本的な戦い方は今までどおりになりそうだ。ある意味で、それを強く感じた2024シーズンの開幕戦だった。ただ、開幕戦の結果を見ると、3位にミシュランタイヤの7号車Studie BMW M4(荒聖治/ニクラス・クルッテン)が入ったものの、4~5位にもブリヂストン勢が入賞。タイヤ交換をしても無交換でもその強さを発揮し、BS勢が上位を独占するかたちとなり、一歩抜きん出ている印象は否めない。
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ゴールデンウイークに行われた第2戦富士の開催直前に発売された『2024 スーパーGT公式ガイドブック』ではこのほか、GT300クラスの車両紹介企画として新車の11号車GAINER TANAX Z、6号車UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI、777号車D’station Vantage GT3を特集。また、GTA-GT300車両のアップデートメニューも詳しく解説している。
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