毎年、全日本ロードレース選手権をまわり、シャッターを切り続けるカメラマン「Nob.I」がお届けする『カメラマンから見た全日本ロード』。今回は9月7~8日に開催された第6戦オートポリスです。
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岡本裕生がトップタイム。ヤマハファクトリーがセッションをリード/全日本ロード 岡山公開テスト 1日目
当ブログをご愛読の皆様、残暑が厳しいですが、いかがお過ごしでしょうか?
今回のオートポリスは私が取り上げたネタが編集部の好評を得たため、独立した2本立てでお送りいたします!
まず、「其の壱」にご登場いただくのはコチラの方々。
左から、ST1000クラス國井勇輝選手を担当している、チームマネージャー本田光太郎さん、メカニック高山康宏さん。
オートポリス編~其の壱~は、普段裏方に徹する『メカニック』の皆さんに焦点を当ててきました。
昨シーズンJSB1000とST1000の違いについて取材させていただいたことに味を占めた筆者は、再び名門『ハルク・プロ』に突撃取材してきました!
ST1000は2レース開催される忙しいウイークでしたが、快くインタビューに応じていただけました。
以下、本田光太郎さんを「ホ」、高山康宏さんを「タ」と記載。
では、いざメカニックの世界へ!
私)まずは、メカニックの仕事について教えていただけますか?
タ)選手がスタートしてゴールするようにバイクをメンテナンスすることです。
私)当たり前ですよね(笑)
タ)当たり前のことですが、実は非常に難しく、また、とても大事なことです。もう少し詳しく説明すると、バイクが「常に同じ状態」になるように維持しています。
私)それは非常に難しいのではないですか?走行する毎にエンジンをはじめ、各パーツが消耗していきます。
タ)その通りです。そのため、消耗品は走行距離で管理し、できる限り走行前・走行後の差を少なくするようにしています。
私)安全にチェッカーまで走り切れれば良いと思っていましたが、何故そのようなことをするのでしょうか?
タ)バイクの状態を常に「セッティングの差だけ」にするためです。例えば、サスペンションを調整した場合、その調整分のみの違いがバイクに表れるようにします。ライダーは人間であり、日々コンディションが変化しますので、バイクを一定の状態に保ちます。そうすれば、バイクのフィーリングがライダー自身に起因するのか、バイクに起因するのかも判断できるようになります。
私)そのような繊細な作業をしているなんて、非常に驚きです。バイクを「走れるように維持する」だけではないのですね。
タ)トップライダーとしてみれば、今説明したようなメンテナンスは「出来ていて当たり前」であり、メカニックを信じてバイクに乗ってくれているので、非常に神経を使います。
ホ)メーカーからバイクを購入した際に、一度すべて分解して、改めて組み直します。これは、ハルク・プロ独自の「基準」を定め、管理できるようにする作業となります。ねじのトルクや消耗部品を数値管理し、常に「基準」に戻れるようにデータを記録します。この「基準」があるからこそセッティングが施せます。
私)セッティングもメカニックの仕事だと思いますが、どのように決めるのでしょうか? 走行後にライダーを囲んであれこれ話し合っている状況をよく撮ります。
タ)ハルク・プロには長年培ってきたデータの蓄積があるので、昨シーズンまでのデータを基にセットし、ウイーク中にライダーの意見を聞きながら微調整していきます。それ故、メカニックはライダーとのコミュニケーションが非常に重要になります。先に触れましたが、ライダーも人間なので、その性格や調子をも考慮してセットします。
私)セッティングの方向性が「全くの見当違い」だった、ということもあるのでしょうか? 例えるなら、皆で「右」だと思っていたけど、実は「左」が正しかった、のような。
ホ)そういうこともあります。だからこそ、「基準」を定め、迷った場合はそこへ戻れるようにしています。データの蓄積から、ある程度セッティングの見当はつきますが、天候や気象条件も異なりますし、また、バイクは走行毎に消耗していきますので、そのような諸条件を加味してセッティングしていきます。セッティングを決めるには、バイクの「基準」の設定と「常に同じ状態する」という作業が非常に重要になります。
私)ライダーのコメントを解釈するのって非常に難しそうです。高山さんはキャリアが長いですが、「言っていることがさっぱりわからん」というライダーもいましたか?
タ)残念ながら、そういうライダーもいました。そういう時は自分の経験を頼りにセッティングしていきます。勝つためにはライダーの意見をきちんと解釈するのが大前提であり、コミュニケーションはライダーとメカニックはもちろん、チーム全体で取り組んでいく姿勢が本当に重要です。
私)レースウイーク以外は何をしているのでしょうか?
ホ)バイクのメンテナンスです。先に説明した「基準」に戻す整備を行っています。さらに、ボルトをはじめ、各部品をチェックしていきます。オリジナルの部品を開発することもあります。
タ)僕はレースやテストが行われる期間に臨時で雇われていますので、レースがないときは、いわゆる「町のバイクショップ」を営んでいます。東京都武蔵村山市にT.T.MOTOというお店を構えていますので、興味があったら来店してみてください。
(https://www.facebook.com/p/TTmoto-100057018086856/)
私)高山さんは以前、他のチームにも所属していましたが、チームによって「スタイル」は違うのでしょうか?
タ)全く違います。会社で例えるなら「経営方針」のようなものです。ハルク・プロはまさに「勝つため」のチームであり、その考えがチーム全体に共有されています。やるときはやる、抜くときは抜く、というメリハリが強いと感じています。
私)本田チームマネージャーにお尋ねします。多くのメカニックの中から、何故高山さんにオファーを出したのでしょうか?
ホ)旧知の仲で腕の良さを知っており、人手が足りない時にどのチームにも所属していなかったのでオファーしました。ハルク・プロの方針を理解し、それを実行してくれる優秀なメカニックです。また、時には夜遅くまで作業することもあるので、ハルク・プロの本社に近いというのも理由のひとつです。若いメカニックには、高山メカニックを見習いつつ「ハルク・プロのDNA」を受け継ぎ、そして伝承していってほしいと思っています。
私)メカニックのヘッドハントもあるのでしょうか?
ホ)そういうこともありますが、ハルク・プロはしません。他チームはライバルでもありますが、仲間でもあります。レースは1チームではできません。時にはメーカーを超えて情報共有もしたりし、業界全体で切磋琢磨して「魅せるレース」をしていきたいと考えています。
私)話を聞く限り、精神的にも体力的にも非常に大変な職業だと思いしたが、この仕事の楽しさを教えてもらえますか?
タ)細部まで気を遣うため、精神が削られるのは事実です。一方、レースで勝つのは1人(1チーム)であり、その分、勝った時の喜びは他の何にも代えられません。勝ち続けるハルク・プロは「一体何をしているのだろう?」という興味ももっていました。実際にチームに加わってみると、本当にあらゆるところに「勝利」が詰まっています。
私)最後に、今シーズンの意気込みを教えてください。
ホ)國井勇輝選手はアジアロードレースにも参戦しており、非常にタフなシーズンであるものの、全日本ロードレースではポイントリーダーとなっています(※9/8時点)。ST1000クラスのチャンピオンを獲得し、それを足掛かりに彼が再び世界の舞台に立てるようにハルク・プロはサポートしていきます。
SDG Team HARC-Pro.の皆様、ありがとうございました。
奥深いメカニックの世界はいかがでしたでしょうか?
その世界が少し覗け、いちバイク好きの身として非常に興味深い話が聞けました。
同じ外見のバイクであれど、公道仕様とレース仕様では全く異なる次元でメンテナンスされており、その大変さとすごさが垣間見えました。
優勝後、パルクフェルメにてチーム皆で「イェーイ!」と喜びを爆発させている理由が分かったような気がします。
ロードレースを数年撮影させてもらっていますが、まだまだ知らないことがたくさんあります。
来シーズンも連載があった場合、続いて「監督業」についても取材してみたいと思いました。
「其の弐」もお楽しみに!
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みんなのコメント
F-1パイロットも運転する事だけじゃ出来ません。メカニック並の知識等が無いと
具合がいい悪いの指定が出来ません。
ドライバーが
、ガレージを持ってプライベートでも機械いじりしてる方凄く多いです。