10月15~17日の週末に、電動ツーリングカー選手権PURE ETCR(ピュアETCR)との併催を予定するWTCR世界ツーリングカー・カップ第6戦フランス・ポー-アルノーでの1戦を前に、TCRカテゴリーを統括するWSCグループが最新のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)改訂版を発表した。
10月9~10日のチェコ共和国アウトドローモ・モストでの第5戦で予選ポールポジションを獲得していたミケル・アズコナ(クプラ・レオン・コンペティションTCR/ゼングー・モータースポーツ・サービスKFT)の活躍を受け、クプラにはより多くのコンペンセーション・ウエイトが課される一方、同レース1でネストール・ジロラミとエステバン・グエリエリがワン・ツー・フィニッシュを決めたFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRは、重量軽減措置を受けることとなった。
宿敵ジロラミは予選トラブルに沈む。曲芸“1Day”参戦のアズコナが2度目の王者に/TCRヨーロッパ最終戦
今回の補正で主な調整対象となったのは、基本のBoP重量ではなく前戦週末の予選と決勝レース平均ラップタイムに基づいて計算されるコンペンセーション・ウエイトの方で、ゼングー・モータースポーツが走らせるクプラ・レオン・コンペティションTCRは、ハンガロリンクからモストにかけて20kg増となったのに続き、今回のポーに向けてはさらに20kgが追加され、合計40kgものコンペンセーション・ウエイトを搭載する。
一方、前戦では補正のなかったFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRは、10kg減の50kgを搭載し、他のすべてのモデルは以前設定された補正ウエイトレベルのまま今週末のレースに挑むこととなる。
前戦のアウトドローモ・モストを前に、このコンペンセーション・ウエイトは「すべてのマシンをより軽く、より速く走らせるために」全車一律で10kg削除の措置を受けていたが、加算組のクプラがドライバーの力量も含めて活躍を演じた一方、依然として60kgを搭載するヒュンダイ・エラントラN TCRなどは「このクルマでは、どうやら今季は3位表彰台に届くかどうかの勝負が続きそうだ」とドライバーからも諦観のコメントが聞こえるなど、TCR規定ツーリングカーのウエイトによる性能調整の難しさも感じさせる。
この結果、FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR、ヒュンダイ・エラントラN TCR、そしてリンク&コー03 TCRの3車種は、最低車両総重量が1325kgと揃うことになり(クプラは1295kg、アウディRS3 LMSは1275kg)、ECUによる出力レベルの調整でパワーを削減されているセダン系車種は、引き続き厳しい状況での勝負が予想される。
■電動TCRシリーズで初代王者を狙うアズコナ
一方、この週末に併催されるピュアETCRは初代チャンピオンの座を賭けた最終戦となり、WTCRモストの週末には2位表彰台獲得でランキング3位浮上に成功し、同じく“弾丸ツアー”で強行出場した同週末のTCRヨーロッパ最終戦では、地元スペインで自身2度目の戴冠を果たしたアズコナが、まずは年間シリーズチャンピオン“3冠”の偉業達成に向け、ふたつ目のクラウン獲得を目指すことになる。
「開幕前は、後輪駆動でリヤアクスルを介して瞬時に沸き上がる圧巻のパワー……それは少し気が遠くなるような感覚で、慣れが必要だと楽観していなかったが、初戦のヴァレルンガで“King of the Weekend”を獲得できたことで『自分が最速ドライバーの一角を占められる』という自信が持てたんだ」とEV初年度を振り返ったアズコナ。
「ハンガリーでも、アラゴンでも好成績を収められたし、家に帰ってリザルトを眺めると『スゴい、ほとんどのバトルで勝っている』と自分でも驚いていたんだ(笑)」
前回の週末はチェコ共和国とスペイン・バルセロナという物理的距離の難しさはありながら、同じTCR規定の同一車種を乗り換える条件だった。しかし、WTCRとピュアETCRでは、同じボディ形状をしていながらパワートレインから駆動方式まで何もかもが異なる。
「この電動マシンはTCRよりも重く、使用するグッドイヤーは全天候型だから、特定のウエットタイヤよりも妥協点を狙って設計されている。雨天のドライブはより慎重になる必要があるし、デフもないからホイールを簡単にロックさせられる。これは間違いなく僕が今までドライブした中でもっとも挑戦的なクルマだ」と認めるアズコナ。
「ダブルヘッダーの週末でクルマを交互に乗り換えるのは、TCR同士よりもさらに困難になる。エンジニアと一緒にデータとビデオを分析するのに時間が必要だし、ブレーキングポイント、パワーマネジメント、ステアリング操作の点でもまるで違う方法が要求される。それでも、5人の王座争いを制するのが僕だったら……とてもうれしいんだけどね!」
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